【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
507 / 1,325
第五章 それは日々の話

157 お年玉  成人

しおりを挟む
 お正月、というのは、皆がお休みする日だ。三日間、お休みする決まり。
 いつもこの離宮に住んでいる人でも、実家というところに帰っている。仕事は皆休みだから、通ってくる人もいなくて人が少ない。常陸丸ひたちまる乙羽おとわ力丸りきまるは、おんなじ所に帰っていった。何か、家族って感じがしていいな、と思った。家族、が分かってきた気がする。
 じいじと生松いくまつ睦峯むつみねは、この離宮がお家だからいつも通りここにいる。じいじは、朝からお酒を飲んで、生松いくまつにおかわりを止められていた。

「正月なんだからええじゃないか。なあ、睦峯むつみね?」
「すべての行事ごとに、そう言ってますよね」
「酒飲みの歌、そのままですね」

 生松いくまつだけでなく、助けを求めた睦峯むつみねにも冷たくコップを取り上げられて、じいじは何故か嬉しそうに笑う。

「あけましておめでとうございます」

 教えてもらったお正月の挨拶をすると、三人が口々に、同じ挨拶を返してくれた。

「かしこい成人なるひとにお年玉をやろう」
「かしこい?」
「きちんと挨拶ができたからな」

 じいじは、ポチ袋に入ったお金をくれたけれど、俺はもう、自分で仕事をしてる大人なので、これは貰えない。力丸りきまるが、俺は家に挨拶に帰ってももう、お年玉を貰えないんだよなあ、とぼやいてて知ったんだ。貰えないどころか、親戚の子どもにお年玉を渡さなくてはいけないそうだ。働いてお金を稼いでる人は大人だから、仕方ねえよなあって言ってた。
 それで言えば、俺は大人ってことになる。貰えない。
 じいじに返そうとしたら、受け取ってくれると嬉しいんだがなあ、と言いながらぽんぽんと俺の頭を優しく撫でた。
 ひゃ、と首をすくめてしまう。撫でられるのは気持ちいいのに、上から手が伸びてくるのが怖い。早く治らないかな、と思っている。頭撫でられるの、好きなのに、怖がってると思われちゃう。いや、怖がってるのか。何でだろ。いつからだろ?

「おお、すまん」

 緋色ひいろが後ろから抱えてくれて、じいじが慌てて手を引いた。撫でてもらうのは好きなんだけど、上から手が来るのが怖い。撫でるのはやめなくてもいいんだ。ああ、上手く伝えられない。

「可愛い子や孫には、その子が大人になっても、何か渡したくなるのが年寄りってもんだ。だから、ほら。生松いくまつ睦峯むつみねのもあるぞ」

 俺のと同じポチ袋が、生松いくまつ睦峯むつみねの手にも乗せられた。

義父上ちちうえ……」
「…………」

 二人は、手の上のポチ袋をしみじみと見る。

「ありがとう、ございます……」

 生松いくまつが返さずに受け取って、睦峯むつみねも小さな声で、ありがとうごさいます、と言った。
 うーん、そっか。俺より大人の二人が受け取るなら俺も……。
 
「ありがと」
「うむ。めでたいな」

 じいじが、にかりと笑う顔の前に、俺の後ろから手が伸びてきた。

「もらっとらんぞ」

 そうだ、じいじ。緋色ひいろの分は?
 
「わっはっはっはっは」

 じいじは、可笑しくて堪らないというように大笑いしながら、ポケットから取り出したポチ袋をその手に乗せた。
 やっぱり。緋色ひいろのもあったね!
 振り向いたら、何故かびっくりしている緋色ひいろの顔が目に入った。
 じいじはますます大笑いして、

「今年も楽しい一年になりそうじゃ」

 と、言った。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...