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第五章 それは日々の話
176 人の幸せを喜べる人 三郎
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昼ご飯の準備は手伝おう。そう思って、まずは厨房へと入った。兄上と半助はすでに厨房にいて、食堂との境の戸の近くに立っている。
「兄上。何かお手伝い……」
「しっ」
声を掛けようとすると、口元に人差し指を当てられた。ぐっと口を閉じて、近くへと寄る。半助が嫌そうな顔で、私と兄上の間に入った。
私から、兄上の手が届く範囲に近づいたりはせんのに。
それでも、半助の大切な兄上にとって、敵であった私が同じ屋根の下におることが嫌なんやろうな、ということは分かる。もう敵じゃない、なんて、言葉でならなんぼでも言える。私は、一生、態度で示していかなくてはならない。半助に、死ぬまで許してもらえなくても、こうして生きていくしか思いつかない。
たまに、この半助の分かりやすい態度に、安堵している自分がいる。もう、何も無かったかのようにあっさり許した兄上や、一緒に楽しく暮らそうぜ、と言ってくれる力丸さまなどに囲まれていると、つい、人生を楽しんでしまいそうになるから。半助の美しい顔が私を見て歪むたび、その右腕の欠けた体を見るたび、私は、私の罪を思い出すことができる。
「治るまでの治療やお世話を、他の者に任せる気はこれっぽっちもない」
戸の向こうから、睦峯先生の声がする。返事をしているのは、斎さん?
「文明は、俺と婚姻関係になるのは、迷惑か?」
「いえ……。どうやら、その定義に当てはまってしまうかと……」
これは、求婚?え?
お二人は仲が良いなとは思てたけど、しょっちゅう体調を崩す斎さんを睦峯先生が気遣っているんやとばかり……。
兄上に視線をやると、頬を赤くして嬉しそうに笑っている。
人の幸せを喜べる人……。
そんな言葉が浮かんで、胸が詰まる。あなたこそ、誰よりも幸せになってほしい、私はそう思っています。
そんな兄上を優しく見つめる半助に聞かれたら、お前が居なければ、もっとずっと昔から幸せやった、と言われてしまいそうやけど。
「睦峯と斎は今、嬉しい?そしたら、三郎も嬉しい?」
成人さまの弾んだ声。
不意に、自分の名前が聞こえて驚く。私が、どう関係してくるのか、皆目見当がつかなかった。
「兄上。何かお手伝い……」
「しっ」
声を掛けようとすると、口元に人差し指を当てられた。ぐっと口を閉じて、近くへと寄る。半助が嫌そうな顔で、私と兄上の間に入った。
私から、兄上の手が届く範囲に近づいたりはせんのに。
それでも、半助の大切な兄上にとって、敵であった私が同じ屋根の下におることが嫌なんやろうな、ということは分かる。もう敵じゃない、なんて、言葉でならなんぼでも言える。私は、一生、態度で示していかなくてはならない。半助に、死ぬまで許してもらえなくても、こうして生きていくしか思いつかない。
たまに、この半助の分かりやすい態度に、安堵している自分がいる。もう、何も無かったかのようにあっさり許した兄上や、一緒に楽しく暮らそうぜ、と言ってくれる力丸さまなどに囲まれていると、つい、人生を楽しんでしまいそうになるから。半助の美しい顔が私を見て歪むたび、その右腕の欠けた体を見るたび、私は、私の罪を思い出すことができる。
「治るまでの治療やお世話を、他の者に任せる気はこれっぽっちもない」
戸の向こうから、睦峯先生の声がする。返事をしているのは、斎さん?
「文明は、俺と婚姻関係になるのは、迷惑か?」
「いえ……。どうやら、その定義に当てはまってしまうかと……」
これは、求婚?え?
お二人は仲が良いなとは思てたけど、しょっちゅう体調を崩す斎さんを睦峯先生が気遣っているんやとばかり……。
兄上に視線をやると、頬を赤くして嬉しそうに笑っている。
人の幸せを喜べる人……。
そんな言葉が浮かんで、胸が詰まる。あなたこそ、誰よりも幸せになってほしい、私はそう思っています。
そんな兄上を優しく見つめる半助に聞かれたら、お前が居なければ、もっとずっと昔から幸せやった、と言われてしまいそうやけど。
「睦峯と斎は今、嬉しい?そしたら、三郎も嬉しい?」
成人さまの弾んだ声。
不意に、自分の名前が聞こえて驚く。私が、どう関係してくるのか、皆目見当がつかなかった。
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