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第五章 それは日々の話
190 子どもの時間 赤璃
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「わあ!すごい!」
「成人さま、すげえ!」
「見てない?本当に見てない?」
「成人さま、目つぶってる?」
「見たら駄目なんだよ?」
先ほどは笑い転げていた子どもたちから、今度は歓声が上がる。大人たちが一斉に注目したことにも気付かず、子ども特有の甲高い声が部屋に響く。
「目つぶってるよ」
なるの、少し掠れた高めの声が、違和感なく混じる。福笑いが盛り上がっているようだ。
「何だあ?」
「緋色、駄目よ」
緋色が立ち上がりかけるのを制して、膝立ちで様子を伺う。折角楽しく遊んでるのに、水を差しちゃ駄目よ。
「なるの福笑いが、上手だったみたいね」
「へえ?」
少し離れただけで機嫌の悪いこと。あんなに楽しそうに遊んでいるんだから、見守ってあげましょ?
「なんで?なんで、ちゃんと置けるの?」
「さっき覚えたから」
「でも、見えないのに?」
見可の言葉に、何でもないことのようになるが答えると、灯可が驚いた声を上げた。珍しいとこだ。年齢の割に落ち着きすぎている灯可が興奮している。
「何を覚えたら、見えなくても置けるの?」
「対象物が動いていないんだから、距離だけ」
「目をつぶっても、距離が分かる?」
「うん。いつも見えてるとは限らないし」
「え?何が?」
「あー、うーん。敵、とか?」
「敵って?」
「見可が手で押さえてるから、もう一回して!」
灯可となるの会話を遮るように、見可が割って入った。気持ちが昂っているのだろう。自分のことを見可と言ってしまっている。
「え?」
「布があっても見えたのかもしれないから、目を押さえる」
見可が、なるの後ろに回って顔に手を伸ばす。その小さな手で、ちゃんと隠れるかしらね?
「あ、見可。待って」
なるのすぐ横に立っていた鶴来くんが、慌てて見可の手を止めた。
「成人さま、お目目痛くない?」
なるの左目の上を走る傷痕を間近で見てしまったのね。
「え?あ」
見可が慌てて手を引っ込める。見可と鶴来くんは、なるの顔をまじまじと覗いた。
「痛い?」
遊んでいるうちに、なるの目や腕のことはすっかり忘れていたようだ。部屋に入ってしばらくは、なるの顔や左腕があるはずの辺りをじっと見ていた。なるがこんな見た目だということは、よく言い含められてきたのだろう。遊びはじめてからも、小さい二人は特に、ちろちろと気にしてはいたけれど、口には出さなかった。
今、手で触れそうになってつい、口をついたようだ。
賢い子どもたち。
「今は痛くないよ」
「こっちのお目目、もう開かないの?」
「前は痛かった?」
「見可、鶴来くん」
鶴来くんと見可が矢継ぎ早に言うのを、灯可がたしなめている。なるは気にした様子もなく、
「もう開かない。見えない。前は目も手も痛かったー」
と、答えた。
「見えないの?手で開けても?」
それまで黙っていた美鶴ちゃんが、驚いたように言う。
「うん。手で開けても、見えないんだー」
「もう痛くない?」
「痛いのは生松に治してもらった」
「九条の?」
「うん」
「へええ。生松さまって、すごいんだね」
「うん。生松はすごい」
子どもの興味はぽんぽん移る。結局、痛いの治したお医者さまはすごい、九条さんちはすごい、という話で落ち着いたらしい。
そして、福笑いをもう一度やっても、見事に顔を作りあげた成人さまはすごい、と子どもたちには刷り込まれたようだ。
灯可がその後、真剣に福笑いをやっていてお兄様が驚いていた。
「成人さま、すげえ!」
「見てない?本当に見てない?」
「成人さま、目つぶってる?」
「見たら駄目なんだよ?」
先ほどは笑い転げていた子どもたちから、今度は歓声が上がる。大人たちが一斉に注目したことにも気付かず、子ども特有の甲高い声が部屋に響く。
「目つぶってるよ」
なるの、少し掠れた高めの声が、違和感なく混じる。福笑いが盛り上がっているようだ。
「何だあ?」
「緋色、駄目よ」
緋色が立ち上がりかけるのを制して、膝立ちで様子を伺う。折角楽しく遊んでるのに、水を差しちゃ駄目よ。
「なるの福笑いが、上手だったみたいね」
「へえ?」
少し離れただけで機嫌の悪いこと。あんなに楽しそうに遊んでいるんだから、見守ってあげましょ?
「なんで?なんで、ちゃんと置けるの?」
「さっき覚えたから」
「でも、見えないのに?」
見可の言葉に、何でもないことのようになるが答えると、灯可が驚いた声を上げた。珍しいとこだ。年齢の割に落ち着きすぎている灯可が興奮している。
「何を覚えたら、見えなくても置けるの?」
「対象物が動いていないんだから、距離だけ」
「目をつぶっても、距離が分かる?」
「うん。いつも見えてるとは限らないし」
「え?何が?」
「あー、うーん。敵、とか?」
「敵って?」
「見可が手で押さえてるから、もう一回して!」
灯可となるの会話を遮るように、見可が割って入った。気持ちが昂っているのだろう。自分のことを見可と言ってしまっている。
「え?」
「布があっても見えたのかもしれないから、目を押さえる」
見可が、なるの後ろに回って顔に手を伸ばす。その小さな手で、ちゃんと隠れるかしらね?
「あ、見可。待って」
なるのすぐ横に立っていた鶴来くんが、慌てて見可の手を止めた。
「成人さま、お目目痛くない?」
なるの左目の上を走る傷痕を間近で見てしまったのね。
「え?あ」
見可が慌てて手を引っ込める。見可と鶴来くんは、なるの顔をまじまじと覗いた。
「痛い?」
遊んでいるうちに、なるの目や腕のことはすっかり忘れていたようだ。部屋に入ってしばらくは、なるの顔や左腕があるはずの辺りをじっと見ていた。なるがこんな見た目だということは、よく言い含められてきたのだろう。遊びはじめてからも、小さい二人は特に、ちろちろと気にしてはいたけれど、口には出さなかった。
今、手で触れそうになってつい、口をついたようだ。
賢い子どもたち。
「今は痛くないよ」
「こっちのお目目、もう開かないの?」
「前は痛かった?」
「見可、鶴来くん」
鶴来くんと見可が矢継ぎ早に言うのを、灯可がたしなめている。なるは気にした様子もなく、
「もう開かない。見えない。前は目も手も痛かったー」
と、答えた。
「見えないの?手で開けても?」
それまで黙っていた美鶴ちゃんが、驚いたように言う。
「うん。手で開けても、見えないんだー」
「もう痛くない?」
「痛いのは生松に治してもらった」
「九条の?」
「うん」
「へええ。生松さまって、すごいんだね」
「うん。生松はすごい」
子どもの興味はぽんぽん移る。結局、痛いの治したお医者さまはすごい、九条さんちはすごい、という話で落ち着いたらしい。
そして、福笑いをもう一度やっても、見事に顔を作りあげた成人さまはすごい、と子どもたちには刷り込まれたようだ。
灯可がその後、真剣に福笑いをやっていてお兄様が驚いていた。
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