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第六章 家族と暮らす
24 何もかもが楽しい 壱臣
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夕食はこちらと案内された部屋は、宿の中でも特別立派な部屋だった。
「壱臣、浴衣似合う~。半助も格好良い」
「ありがとう。成人くんも可愛いなあ」
出迎えてくれた成人くんも、ほこほこと湯気が上がっていて、女性用かな、と見える薄い桃色に黄色い模様の入った浴衣が何とも可愛いらしい。
「お風呂、気持ちいかった?」
「気持ち良かったよー。温泉は、上がった後もずっと体がぬくいね」
「ね」
窓から見える庭に、露天風呂が広がっている。もうもうと湯気が立って、見ているだけで体がぬくもるようだ。
「うわあ、大きなお風呂」
「お外のお風呂、壱臣もあった?」
「あったよー。もう少し小さいけど、大きかった」
「お外のお風呂、いいよね」
「ええなあ。息が苦しゅうないから、ずっと入れる」
うんうん、とご機嫌な成人くんが頷いている。頬や唇にいつもより赤みがさして、とても美人さんやな。
「早速、のぼせかけてたけどな」
半助の笑い含みの声が合いの手を入れる。
「大丈夫?」
「半助がおるから大丈夫やで。もうな、気持ち良すぎて、ぼおっとしてまうから、入りすぎてまうな」
うんうん、と成人くんが頷く。
「俺も。俺も緋色いないとお風呂に溶けちゃう」
「あはは。えらいこっちゃ」
机の上に小さな鍋が五つ揃えられて、器や飲み物が準備されている。
「上等なご飯や」
「美味しいよ」
「楽しみやな」
ここ、と示されるままに成人くんの横に座った。お品書きは、なかなかの達筆で読みにくい。
「読める?」
「んー。無理やなあ。三郎がおらんとあかんなあ」
「楷書で書き直してもらうか?」
「かいしょ?」
「崩してない文字のことだ」
「あ、是非……」
緋色殿下の言葉に、うんと頷いたのは、旅先の解放感からやろか。笑った殿下が、店の人を呼び止めている。
「お品書きを、読みやすい字で書き直してくれ」
「え。あ、はい。その、ふりがなを?」
「いや、楷書で書け」
「畏まりました。すぐにお持ち致します」
「ね。これは、何て言うの?」
「何?」
「楷書じゃなくて、なに書?」
お盆とお品書きを一枚持って下がっていった後ろ姿を見ていると、成人くんが殿下に尋ねている。
「ああ。これは草書だな。この間まで行書だったからもう少し読みやすかったのに」
「そうしょ。ぎょうしょ」
「ああ、えーと。ふだん書いてる文字が楷書で、少し崩したり繋げたりして書いたものが行書、さらに素早く書こうと繋げて書いてあるのが草書だな」
「繋げて書いてるだけなのに、全然読めなくなるの?」
「まあそういうことだな」
「繋げただけ?」
成人くんの手元にあるお品書きをまじまじと二人で覗きこむ。
繋げただけ?
たぶん、同じことを思たんやろう、成人くんと目が合った。
「うそだあ」
二人で同じことを言って、くふふと笑う。
「いや。ある程度の決まりがあって、あー、いや、線も省略されてるか」
格好良い文字やけど、読めへんかったら困るなあ。あ、でも、出てくる料理を見て、なんて書いてあるか当てるんも面白そう。
「成人くん。お料理見て、なんて書いてあるか当てっこしよ」
成人くんが、ぱっと顔を輝かせた。
「楽しそう」
「な?」
色んなことが何でも楽しい!
「壱臣、浴衣似合う~。半助も格好良い」
「ありがとう。成人くんも可愛いなあ」
出迎えてくれた成人くんも、ほこほこと湯気が上がっていて、女性用かな、と見える薄い桃色に黄色い模様の入った浴衣が何とも可愛いらしい。
「お風呂、気持ちいかった?」
「気持ち良かったよー。温泉は、上がった後もずっと体がぬくいね」
「ね」
窓から見える庭に、露天風呂が広がっている。もうもうと湯気が立って、見ているだけで体がぬくもるようだ。
「うわあ、大きなお風呂」
「お外のお風呂、壱臣もあった?」
「あったよー。もう少し小さいけど、大きかった」
「お外のお風呂、いいよね」
「ええなあ。息が苦しゅうないから、ずっと入れる」
うんうん、とご機嫌な成人くんが頷いている。頬や唇にいつもより赤みがさして、とても美人さんやな。
「早速、のぼせかけてたけどな」
半助の笑い含みの声が合いの手を入れる。
「大丈夫?」
「半助がおるから大丈夫やで。もうな、気持ち良すぎて、ぼおっとしてまうから、入りすぎてまうな」
うんうん、と成人くんが頷く。
「俺も。俺も緋色いないとお風呂に溶けちゃう」
「あはは。えらいこっちゃ」
机の上に小さな鍋が五つ揃えられて、器や飲み物が準備されている。
「上等なご飯や」
「美味しいよ」
「楽しみやな」
ここ、と示されるままに成人くんの横に座った。お品書きは、なかなかの達筆で読みにくい。
「読める?」
「んー。無理やなあ。三郎がおらんとあかんなあ」
「楷書で書き直してもらうか?」
「かいしょ?」
「崩してない文字のことだ」
「あ、是非……」
緋色殿下の言葉に、うんと頷いたのは、旅先の解放感からやろか。笑った殿下が、店の人を呼び止めている。
「お品書きを、読みやすい字で書き直してくれ」
「え。あ、はい。その、ふりがなを?」
「いや、楷書で書け」
「畏まりました。すぐにお持ち致します」
「ね。これは、何て言うの?」
「何?」
「楷書じゃなくて、なに書?」
お盆とお品書きを一枚持って下がっていった後ろ姿を見ていると、成人くんが殿下に尋ねている。
「ああ。これは草書だな。この間まで行書だったからもう少し読みやすかったのに」
「そうしょ。ぎょうしょ」
「ああ、えーと。ふだん書いてる文字が楷書で、少し崩したり繋げたりして書いたものが行書、さらに素早く書こうと繋げて書いてあるのが草書だな」
「繋げて書いてるだけなのに、全然読めなくなるの?」
「まあそういうことだな」
「繋げただけ?」
成人くんの手元にあるお品書きをまじまじと二人で覗きこむ。
繋げただけ?
たぶん、同じことを思たんやろう、成人くんと目が合った。
「うそだあ」
二人で同じことを言って、くふふと笑う。
「いや。ある程度の決まりがあって、あー、いや、線も省略されてるか」
格好良い文字やけど、読めへんかったら困るなあ。あ、でも、出てくる料理を見て、なんて書いてあるか当てるんも面白そう。
「成人くん。お料理見て、なんて書いてあるか当てっこしよ」
成人くんが、ぱっと顔を輝かせた。
「楽しそう」
「な?」
色んなことが何でも楽しい!
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