【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

117 通じ合う何か  朱実

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緋色ひいろは、成人なるひとが体調を崩すと部屋で仕事をするのか?」

 帰りの車の中。運転している力丸りきまるに話しかける。数分で着くが、三人しかいない車の中は少し息が吐ける。これは話して良いことかどうかと考えてから口に乗せることもなく、つらりと言葉は口から出ていた。まあ、大した内容ではない。

「いつもではないですよ」

 いつもではない。では、何か条件があるのかと続きを待ってみたが、そこで声は途切れた。力丸りきまるはお喋りだが、聞いていないことをぺらぺらと話す人間ではないのだと思い知らされる。先ほどの離宮での様子を見ていれば、内容は大して気にせずに言葉を口に乗せているように思えた。それを思えば、いつもではないが今日は、と続きがありそうなものなのだが。

「では今日は特に調子が悪いとか?」
「いや、そうでもないですよ。いつも通りだし、ちゃんと薬を飲んで寝てたからすぐ治ると思いますよ」
「なるほど?」

 なら、緋色ひいろ成人なるひとの側から離れない条件は何なのだ?それを説明する気はないということか?
 お前のあるじは私なのに、と理不尽な思いまで沸いてくる。仕事のことと家のことは別、とはよく聞く言葉だが、そういうことなのか。家のことすら仕事と関わってくる私にはよく分からない。私は、家のことが無いということなのか。

「なら今日は何故?」
「ん?何かあるんじゃないですか?二人だけで通じる何かってやつ。……いいなあ。俺にも教えて欲しいなあ。教えてくれたら俺も、成人なるひとに大好きって言ってもらえるように頑張るのに」

 ああ。つまり、力丸りきまるにも分からない、と。

成人なるひとはあんまり我が儘言わないから、緋色ひいろ殿下が成人なるひとのことをよく見て判断してるんだと思いますよ。夫夫ふうふの間のことですからね。他の人なんて入れない何かがあるんでしょ?俺にはまだ分かんないけど。ああ、いいな。一番好きな人とずっと一緒にいられる誓いって羨ましいです。俺もそのうち結婚したいなあ。皇太子殿下も妃殿下とだけ通じ合う何かがあったりするんですよね?仲良いですもんね」

 通じ合う何か。赤璃あかりと。そういうもの……。あるだろうか。私たちの間にそういった何かがあっただろうか。そんな特別な感情が動くような事件は起こっていないから分からないのか。
 緋色ひいろ成人なるひとの間にはそれがある……。
 浮かんだ思いを深く考える間もなく城に到着し、今日の休憩時間は終了した。
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