【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

12 いつも通り  成人

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 緋色ひいろのお熱は、朝に計ったら微熱だった。そんなことより打撲傷が痛い、と布団にごろごろしている。 

「ええっと、殿下?おはようございます……」

 今日、部屋に来た常陸丸ひたちまるは、そおっと入ってきた。いつもみたいにずかずか来て、布団を引っぺがしたりしない。俺が一緒にお布団に入っていたらやらないけど、緋色ひいろが一人で布団にいて、なかなか起きないときはやるんだよね。でも今日、緋色ひいろがお布団から出ない原因は常陸丸ひたちまるだから、お布団を引っぺがせない。

「あああ、体があちこち痛えなあ」
「すみません。あの、本当に」
常陸丸ひたちまる。書類、こっちに持ってこい。飯も」
「あ、はい……」
「執務室の奴らに、俺に用があるならこっちで仕事しろって言っておけ」
「はい」
「お前は、当然こっちだ」
「はい……!」

 あ、仕事するんだね。微熱あるのに。

「あ、飯は食ってこいよ。俺と成人なるひとはここで食うから」
「はいはい。分かりました」

 振り返って笑った常陸丸ひたちまるは、もういつも通り。

乙羽おとわは?」
「飯をここに運ばせます」
「重たいだろ、お茶だけにしろよ?」
「はは。飯くらい運べますよ」

 乙羽おとわも今日からお仕事か。俺も、頑張らなきゃなあ。

成人なるひとは、俺に飯を食わせる仕事な」
「ええ?」

 俺は今日は、お掃除の手伝いを頑張る予定だったんだけど?勉強もするよ?

「あと、生松いくまつに、痛み止めをもらってきてくれ」

 布団から口だけ動かす緋色ひいろは、本当は傷がすごく痛いんだなって思ったけど、言わないことにした。
 緋色ひいろは、ちゃんと痛いって言ってる。布団におこもりしてる。でも、どうしてもしなくちゃならない仕事があるんだよね。
 なら俺は、緋色ひいろのお手伝いをしよう。

「任せて」

 きっと生松いくまつは、嫌そうな顔で緋色ひいろに痛み止めを渡して、今日は安静にって言うと思う。
 緋色ひいろは、おう、布団から動かないぞって答えて、仕事をするんだと思う。
 いつもと違うけれど、いつも通り。
 皆、いつも通り。
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