【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

130 温情に気づいた日  坂寄

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 終わってしもうた……。
 素晴らしい衣装を着た高貴な方々を見ながら、頭に浮かぶ言葉。そう、終わってしまったのだ……。私の、仕事が。
 今なら分かる気がする。自分が何をしたのか。何故、こうなっているのか。……その答えがまた、間違えとるかもしれんけれども。
 衣装部の広い作業部屋の壁際で、せめてしっかりと背筋を伸ばして、室内の様子を見る。侍女であった自分を、思い出すかのように。
 広い部屋に置かれている大きな作業台を脇に避けて、ソファなども移動して広い空間を作り、四組八人もの方々をいっぺんに衣装合わせしている。仲の良ろしい四組の方々は、衣装がそれぞれに、何らかの形で対になっていることも相まって、まるでそれ以外の方との組み合わせなど考えられぬかのようにぴったりとお似合いやった。
 皆、男の人やのに……。
 まるで、おかしな事など何も無いかのように、自然に寄り添いあっていらっしゃる。
 高位の方にありがちな、お胤を残さんための同性婚、などとは、この部屋におれば誰も思わんことやろう。そのくらい、自然な……。
 若様……壱臣いちおみさまにも、ご伴侶が……。弐角にかくさまの憂いとならん為の同性婚、ではないのやろな。柔らかく、とても柔らかく微笑んで伴侶を見上げていらっしゃる……。
 伴侶は、成人なるひと殿下の護衛の男。衣装の右腕部分が、ひらりひらりと翻って中身のないことを表している。お家騒動の際、国から逃げる若様を護って失ったという右腕。間違いない。あの男が、西国最強と言われた鬼槌おにつち半助はんすけ。強いだけでなく、とんでもなく整った顔立ちをしとるとの噂は、誇張でも何でも無かったと今、知った。
 半助はんすけ成人なるひと殿下の後ろにおる時は、視線をあまり上げる訳にはいかんかったので、顔をまじまじと見ることができんかったのだ。右腕が無いのに護衛……?とそればかりに意識がいっていたこともあり、顔立ちなど目に入っとらんかった。
 若様と二人で死線をくぐり抜ける間に、情が生まれたんやろか……。
 声をかける権利も持たん私に分かるんは、見間違えるはずも無いほどよく、若様……弐角にかくさまと似とる壱臣いちおみさまと半助はんすけの交わす笑顔が、とても穏やかなことだけ。
 私の横で、ミシンの部屋で手伝っていた城の使用人が三人、満面の笑みで穏やかな衣装合わせを見守っていた。
 これは、温情。手伝いに過ぎん私たちにも、出来上がった衣装を身につけた方々を見せてくれているのや。
 本当なら、手伝いが済んだと追い出してもいい私たちにも……。
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