【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

137 厨房を覗く  成人

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壱臣いちおみ、美味しい夜ご飯作ってるから待っててね」
「は……い」
「ありがとうございます。楽しみです」

 壱鷹いちたかは頷いて弐角にかくは、にかって笑った。ふふ。壱臣いちおみのご飯、美味しいから楽しみにしてて。

「荷物、運ぶ人呼ぶ?」

 うちに泊めることができるのは壱臣いちおみの家族だけだから、護衛とか侍女は中に入れない。うちの前に一緒に来たことは知ってるんだけど。車にいるんだよね?ごめんね。うちの誰かが、その人たちが今日、泊まれる場所に案内するから。お城の敷地内には色んな建物があるし、大丈夫。
 才蔵さいぞうは残ってもいいんだけど。仲良しだし。でも、泊まる人の名簿の中に入っていなかったから今日はうちに泊まらないみたいだ。

「自分で持てます。軽いもんです」

 弐角にかくが明るく言ったから大丈夫そうだ。俺は、二階の普段使ってない部屋へお客様を案内した。いつもしている仕事と違う仕事は、少し緊張するな。

「ここは寝るとこ。下に、お風呂とご飯食べるとこあります」
成人なるひとさま。そちらも案内してもろてええですか?」

 もちろんそのつもり。弐角にかくはうちのお風呂と食堂を知ってるけど他の人は知らない。知らないことを教えてあげるのも案内の仕事なので!
 
「ここで、おみは暮らしとんやな……」

 使うところと厨房を案内してから、食堂でひと休みと皆で座ったら、壱鷹いちたかがぼそって呟いた。
 さっき、壱臣いちおみが料理してる様子をこっそり覗いてきた。壱臣いちおみは気配とかそういうの気付かないから、こっそり覗くの簡単。今日は村次むらつぐいないし、いつもよりもっと覗き放題。村次むらつぐはすぐ気付くから、村次むらつぐいたら、こっそり覗くのはできなかった。東那とうなもあんまり気付かないしね。手伝ってた鼓与ことは、気付かないふりしてくれた。
 でも、別にこっそりでなくてもいいと思う。料理人たちが料理してるとこなんて、俺もしょっちゅう見に行くし。すごいよね。色んな食べ物が出来ていく様子は楽しいから、いつまででも見ていられる。
 だから、声をかける?って聞いたんだけど、首を横に振られた。いつもの様子が見たいんだって。そして、静かに見てた。気付かれないうちにって引き上げてきたけど、もっと見たかったら見ててもいいよ?壱臣いちおみ、本当に気付かないから。
 鼓与ことが運んでくれたお茶を皆がすする。

「楽しそうやったな」

 弐藤にふじもぼそって言う。挨拶を交わして、壱鷹いちたかの弟って教えてくれた。それで、橙々だいだいのお父さん。

「ほんまに、かくによう似とってや……」

 はじめましての女の人は橙々だいだいのお母さん、柚子ゆず
 静かにお茶をすする音だけが流れて、俺も横でお茶の温度を確かめる。ん、冷めてる。
 
成人なるひと殿下。ほんまに、ありがとうございます」

 急に壱鷹いちたかに言われてびっくりした。

「え、何?」
おみのこと……。おみを拾ってくれて……」

 んん?
 拾ったって何?

壱臣いちおみはすごい料理人だから、うちに来てもらっただけ。拾ってない」

 ありがとう、は俺が壱臣いちおみに言う言葉だよ。うちに来てくれてありがとうって。

「……そう、でしたか」
「そう」

 壱臣いちおみがどんなにすごいか、壱鷹いちたかは知らないんだな。ちょっと待ってて。食べたらすぐに分かるから。

 
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