【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
865 / 1,325
第七章 冠婚葬祭

154 挨拶  成人

しおりを挟む
「よし。食うか」
「うん!」
「まて、緋色ひいろ。しかと挨拶をいたせ」

 あ、父さま。家族写真を撮るために並んでいる時に少しだけ話をしたけれど、写真を撮り終わった緋色ひいろがすぐに離れてしまってそれきりだった。控え室も、皇族は別に作っていたので会わなかった。あれ?俺たちも皇族だけど皆といたな。ま、いっか。楽しかったし。
 料理が並んでいく様子を見ていた人たちが、前を向いて合図を待っている。

「父上が挨拶をしたらいい」
「お前の主催だろうが」
「無礼講ってのは目上の者から伝えるものなんだから、父上が言えばいいんだ」
「……分かった。挨拶をしてやろう。その代わり逃げるなよ」

 ん?
 父さまがゆったりと歩いて、儀式を終えた主役たちの前へ出た。

「しまった。自分でやれば良かった」

 緋色ひいろががっくりとうなだれて呟く。
 何だろ?

「みな、今日はよく集まってくれた」

 父さまの声は、大きくもなく小さくもなく、高くもなく低すぎることもない。こうしてたくさんの人へ向けて話す時は、少しゆっくり話す。大声でもなんでもないのに何故か皆、すぐにそちらへ注目してしまう。
 上に立つ人。前に立つ人。声を聞くと自然と背筋が伸びるような、そんな人。
 俺や緋色ひいろと話す時は、全然そんなものは出ていないんだけど。
 あれ?じゃあ出したり引っ込めたりできるのか、あれ。あの、背筋伸びるような感じのやつ。朱実あけみ殿下はいつも出てる。にこにこ笑ってても出てる。引っ込めれないのかな?じゃあ引っ込められる父さまの方が強い?父さまは威圧を怖がらせないように上手に出せる、のかな?

「将来有望な若人わこうどたちが、共に歩む伴侶を見つけたことを神に皆に報告できたこと、大変に喜ばしく思う。おめでとう!」

 わああ、と拍手が起こった。
 おめでとう、と言われた主役たちが綺麗に頭を下げる。俺も抱っこから下ろしてもらって、緋色ひいろと二人で頭を下げた。

「私も、息子の結婚衣装を見ることができ、大変に満足している。何せこやつらは、放っておくと何もかもを勝手に終わらせてしまい、晴れ姿を見せにも来やしない故な」
 
 少し笑い声が聞こえた。
 父さま、お話上手だね。

「そんな訳で、私はとても楽しんでおる故、みなも大いに楽しんでほしい。既に無礼講との通達は出ていると思うが、改めてこの場は無礼講であることを伝えよう。とはいえ、子どももおる場じゃ。節度を持った酒との付き合いを頼むぞ。のう、九条利胤としたね
「やや。陛下よりのご指名とは恐悦至極。このじじい、しかと心に留め置きましょうぞ」

 じいじがすぐに答えて敬礼をして、今度はたくさんの笑い声が起こった。
 大丈夫。じいじのお酒は、ちょうどいい量を超えるとすぐにたくさんの手に取り上げられちゃうから。最初は乙羽おとわだけだった手に俺の手が加わって、生松いくまつが加わった。睦峯むつみねは一番遠慮がなくて、義父上ちちうえもう終わりだ、と取り上げてしまう。さいは、そっとお酒のコップをお水のコップと入れ替える。三郎さぶろうは、もう一杯だけ、と言われるとあげちゃうから、じいじと一緒に皆に怒られてしまう。
 だからね、じいじはもうお酒をたくさん飲めない。もう少し飲みたいのう、って文句を言う。嬉しそうに笑いながら、文句を言う。

「では、離宮の料理人の心尽くしの料理を頂こう」
「はい!」

 見可みかのいい返事が聞こえて、またみんな楽しく笑った。
 何を食べようか。
 迷ってしまうくらいたくさんあるなあ!
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...