【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
959 / 1,325
第八章 郷に入っては郷に従え

83 色付きの花嫁衣装もいい!  成人

しおりを挟む
「わあ、綺麗!橙々だいだい、素敵!」

 着替えてきた橙々だいだいの着物が、すごくすごく綺麗で、俺は大きな声で言ってしまった。皆が、しんとしていたから、声は部屋中に響いた。あ、しまった、と思って緋色ひいろを見たら、笑ってたから大丈夫だったみたいだ。良かった。

「うん、いいな」

 緋色ひいろも言って、周りの人もざわざわと話し始める。上掛けの着物を、綺麗な柄の着物に変えたんだね。似合うよ。本当に綺麗だよ。白い衣装より軽そうで、良かった。衣装部の人、凄い。祈里いのり涼乃絵すずのえみたいな人が、九鬼のお城にもたくさんいるんだな、きっと。よく考えたなあ。綺麗な柄の着物でも、ちゃんと花嫁のままだ。素敵。
 そして弐角にかくは……。何にも変わってなかった。ええー。二人とも着替えて来いって、緋色ひいろ言ってたのにー。
 あ?うん?違う。そのまんまじゃなかった。襟の色だ。襟の色が変わってる。白じゃなく橙色だいだいいろになっている。
 ふふ。凄い。面白い。だいだい色だよ。だいだいの色だ!俺が、緋色ひいろの指輪をつけるみたいに、弐角にかく橙々だいだいの色をつけたんだ。

「ふふ。ふふふふ」
「ん?なんだ?」
弐角にかくのここ」
「ん?」

 俺が自分の襟のとこを指差すと、緋色ひいろ弐角にかくに目を戻してから、にやって笑った。

「はは。やるな」

 うんうん。俺も言っとく。

「やるな」

 元の通りの、皆からよく見える席に座った二人の前に、それぞれの席から立ち上がった女の人たちが一斉にやって来た。松吉まつきちは、にこにこ笑って座ったままだったけど。

橙々だいだいさま。なんて素敵なお着物ですやろ。いつの間にこんな素晴らしいのを準備してはったんです?」
「花嫁は白や言うて、白しか着られへんかったけど、こんなんあったらうちも着たかったわあ」
「ほんまや。折角のハレの日なんやもん。こんな華やかなんも着たかったあ」

 おおお。すごい。さっきから、挨拶は男の人ばっかり来てたから、女の人は立ち上がったら駄目なのかと思ってた。駄目な訳じゃなくて、順番だったのかな?一緒に来てる人同士で一緒に挨拶に来たら、誰と誰が家族か分かりやすいのに。

「うちはお式は今からやから、こんなんしたいです。この織り物、ほんまに素敵」
「ありがとう。うちの領地の伝統工芸の織り物を使用して仕立てた着物でな。作れる人が限られとってかなり手間がかかるから、少々値が張るんや」

 橙々だいだいは、だいぶ元気になったみたいだ。良かった。褒められて、にこにこで答えている。

「けど、一生に一回のことやから、うちは今、着られて嬉しいで。工房を紹介するさかい、おねだり頑張ってな」
「はい」

 なんか凄い、と女の人たちの集団を見ていたら、鼓与ことがすすっと近付いてきた。

緋色ひいろ殿下。祈里いのりさんから伝言です」
「おう」
「自分のこの出張の給料は無くても構わない、と」
「へえ?」
「自分の出張費など微々たるものですが、少しでも着物代を還元したいそうです」
 
 ぶはっと緋色ひいろは笑った。

「そんなに高かったか」
「目の玉が本当に飛び出るかと思ったそうです」
「は、ははははは」

 緋色ひいろは、大笑いしてお酒を飲んだ。それ、そんなに美味しい?もう一回舐めてみようかな?

「こら、成人なるひと。酒は駄目だ。ジュースもらえ、ジュース」

 ちえ、残念。

鼓与こと祈里いのりに伝えろ。特別手当だ、あの織り物一反買ってやるってな」
「畏まりました」

 ん?祈里いのりが気にかけてた織り物、買ってもらえるの?
 わ、良かったね、祈里いのり
 緋色ひいろはやっぱり、とても優しい。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

処理中です...