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第八章 郷に入っては郷に従え
84 ちゃんと説明した 成人
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宴会は、あともう少し続くみたいだ。二の膳が片付けられて、三の膳が運ばれてきた。橙々と楽しく話していた女の人たちが、綺麗な仕草で俺たちにも挨拶をして、自分の席へ戻っていった。ご飯食べなくちゃね。せっかくのご馳走だもん。
女の人の挨拶は、名乗りとか無かった。すっと頭を下げて、皆同じことを言った。声が揃っててびっくりしたよ。誰も、合図したようには見えなかったのに。
「殿下方、殿、若様。大変にお邪魔致しました」
全然お邪魔じゃなかった。橙々が楽しそうに見えたから良かった。
「いいよー」
って言ったら、頭を下げていた女の人たちも聞こえた周りの人も皆、びっくりした顔で俺を見た。言っちゃいけなかったのかな?そういう時、俺は緋色を見る。あ、笑って俺の方を向いているから大丈夫。
「お邪魔じゃない。楽しい」
ちゃんと説明しといた。ふふん。もう、成人は話したつもりで話してない、とは言わせない。
ぶはっ、と何故か緋色が笑った。なんだろ?分かんなかったけど、緋色が楽しいならいいや。
それから緋色は、
「何も遠慮はいらぬ。楽しく過ごせ」
と、言った。女の人たちは、もう一度深く頭を下げてゆっくりと席に戻っていった。席に戻った後、にこにこしてた。皆、楽しいならいいね。
よし、三の膳を食べようかな。俺は、二の膳はあんまり食べられていなかったけれど、三の膳に、大好きな炊き込みご飯とお汁が乗っていたから、もういいのにした。絶対に全部は入らない。俺は、そんなこともうとっくに知ってる。本当は、緋色の分をちょっとずつもらうのが一番好き。同じものを食べてるって感じがすごくするし、いっぱい食べた気になる。
あ、デザート!デザートのお菓子の模様が!
「緋色!金魚だ、金魚!」
丸い菓子。昨日の夜にもらった、ふわふわの色んな色の餡が白い餡の周りに綺麗にくっついているお菓子も、甘くて柔らかくてとても好きだったけれど、これは表面に金魚の絵が描いてある。泳いでいる。可愛い。金魚、可愛い!
「へえ?」
お皿を持ち上げて緋色に見せていたら、おや、と壱鷹が言った。
「成人殿下は、金魚がお好きなのですか?」
「好き」
金魚は、ひらひら泳いで、ぱくぱく餌を食べるから可愛い。お尻にあれをくっつけてても知らん顔で、やっぱりひらひら泳ぐのが面白い。
「なるほど。喜んで頂けたと知れば、厨房の連中も喜びましょう」
そう言って笑う壱鷹の膳を見れば、壱鷹のデザートは丸くないし、金魚も描いてなかった。あれ?
緋色のも、金魚じゃない。近くの弐角や橙々のも違う。俺だけ、金魚?
「私たちのは、紅葉の葉を表しとります。季節に合わせた造形にするのが、うちとこの菓子の決まりみたいなもんでしてな。今は秋やから、秋の葉を表したんでしょう」
へええ。葉っぱの形なのか。色も、半分くらい黄緑で半分くらいが赤っぽい。金魚と同じ色だ。皇家が使う赤じゃなくて、ちょっと違う赤だけどね。着るものは、赤は皇族だけって決まってるけど食べ物は仕方ない。赤くて美味しい食べ物がいっぱいあるから、貴色は使っちゃ駄目って言えないよね。
「けど、そんなん些細な決まり事やなあ」
「ん?」
俺は、金魚のお菓子をうっとりと眺める。
「金魚は夏しか使えんって決めとったら、成人殿下にこないに喜んでもらえんかった」
「あ、うん。嬉しい」
本当に嬉しくて笑うと、壱鷹が深く頷く。
「それで、ええんやろなあ」
「ん?」
「決まりは決まりとして尊重するけど、自由な発想で喜んでもらえることをするんも大事やなあ、と思った次第」
「へえ?」
「緋色殿下のお連れさんは皆、そういう事が上手い。きっと、厨房の者も衣装部屋の者も、勉強になった事でしょう」
ふーん?
何かよく分からないけど、ここに居ない皆も楽しんでいるのかな。それなら、良かったな。
女の人の挨拶は、名乗りとか無かった。すっと頭を下げて、皆同じことを言った。声が揃っててびっくりしたよ。誰も、合図したようには見えなかったのに。
「殿下方、殿、若様。大変にお邪魔致しました」
全然お邪魔じゃなかった。橙々が楽しそうに見えたから良かった。
「いいよー」
って言ったら、頭を下げていた女の人たちも聞こえた周りの人も皆、びっくりした顔で俺を見た。言っちゃいけなかったのかな?そういう時、俺は緋色を見る。あ、笑って俺の方を向いているから大丈夫。
「お邪魔じゃない。楽しい」
ちゃんと説明しといた。ふふん。もう、成人は話したつもりで話してない、とは言わせない。
ぶはっ、と何故か緋色が笑った。なんだろ?分かんなかったけど、緋色が楽しいならいいや。
それから緋色は、
「何も遠慮はいらぬ。楽しく過ごせ」
と、言った。女の人たちは、もう一度深く頭を下げてゆっくりと席に戻っていった。席に戻った後、にこにこしてた。皆、楽しいならいいね。
よし、三の膳を食べようかな。俺は、二の膳はあんまり食べられていなかったけれど、三の膳に、大好きな炊き込みご飯とお汁が乗っていたから、もういいのにした。絶対に全部は入らない。俺は、そんなこともうとっくに知ってる。本当は、緋色の分をちょっとずつもらうのが一番好き。同じものを食べてるって感じがすごくするし、いっぱい食べた気になる。
あ、デザート!デザートのお菓子の模様が!
「緋色!金魚だ、金魚!」
丸い菓子。昨日の夜にもらった、ふわふわの色んな色の餡が白い餡の周りに綺麗にくっついているお菓子も、甘くて柔らかくてとても好きだったけれど、これは表面に金魚の絵が描いてある。泳いでいる。可愛い。金魚、可愛い!
「へえ?」
お皿を持ち上げて緋色に見せていたら、おや、と壱鷹が言った。
「成人殿下は、金魚がお好きなのですか?」
「好き」
金魚は、ひらひら泳いで、ぱくぱく餌を食べるから可愛い。お尻にあれをくっつけてても知らん顔で、やっぱりひらひら泳ぐのが面白い。
「なるほど。喜んで頂けたと知れば、厨房の連中も喜びましょう」
そう言って笑う壱鷹の膳を見れば、壱鷹のデザートは丸くないし、金魚も描いてなかった。あれ?
緋色のも、金魚じゃない。近くの弐角や橙々のも違う。俺だけ、金魚?
「私たちのは、紅葉の葉を表しとります。季節に合わせた造形にするのが、うちとこの菓子の決まりみたいなもんでしてな。今は秋やから、秋の葉を表したんでしょう」
へええ。葉っぱの形なのか。色も、半分くらい黄緑で半分くらいが赤っぽい。金魚と同じ色だ。皇家が使う赤じゃなくて、ちょっと違う赤だけどね。着るものは、赤は皇族だけって決まってるけど食べ物は仕方ない。赤くて美味しい食べ物がいっぱいあるから、貴色は使っちゃ駄目って言えないよね。
「けど、そんなん些細な決まり事やなあ」
「ん?」
俺は、金魚のお菓子をうっとりと眺める。
「金魚は夏しか使えんって決めとったら、成人殿下にこないに喜んでもらえんかった」
「あ、うん。嬉しい」
本当に嬉しくて笑うと、壱鷹が深く頷く。
「それで、ええんやろなあ」
「ん?」
「決まりは決まりとして尊重するけど、自由な発想で喜んでもらえることをするんも大事やなあ、と思った次第」
「へえ?」
「緋色殿下のお連れさんは皆、そういう事が上手い。きっと、厨房の者も衣装部屋の者も、勉強になった事でしょう」
ふーん?
何かよく分からないけど、ここに居ない皆も楽しんでいるのかな。それなら、良かったな。
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