【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

161 予定のない休みの日  成人

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 ごんごんごん、と扉が叩かれる音がしてぱち、と目を開ける。引かれたカーテンの隙間から日が射していた。

「んあ?」

 気持ちいいことをしてから寝た朝の、疲れてて、でも気持ちイイって感じがすっごく好き。緋色ひいろに包まれて、ふかふかの布団の中。ずっとこうしていられる。
 ごんごんごん、とまた扉が叩かれた。んー。もうちょっと……。

「うるせ……」

 緋色ひいろの掠れた声も格好良い。

成人なるひと!起きろ。昼だ」

 力丸りきまるの声だ。俺たちの部屋に鍵なんてかかってないから、入ろうと思えば入ってこれる。でも、休みの日は誰も入ってこない。いつまで寝ててもいいけどほどほどに、と言われるくらいだ。
 休みじゃない時は、常陸丸ひたちまるがお迎えに来て緋色ひいろの身支度を整える手伝いをしたりする。何もしなくても、お迎えには来る。それは当たり前のことみたいだ。起こす手間が無くなったから本当に助かる、って常陸丸ひたちまるは俺に言う。ずっと言ってる。俺が緋色ひいろを起こすようになってからだいぶ経つのに、まだ言ってる。緋色ひいろ、そんなに起きなかったのかなあ。俺が起こしたら、いつもちゃんと起きるけどなあ。
 そう。緋色ひいろは、自分ではなかなか起きないけど、俺が先に起きて起こしたらちゃんと起きるんだ。だから休みで予定がない時は、いつもは誰もお迎えに来ない。
 
「のんびりするのは構わねえけど、飯を二食抜くのは絶対駄目だってよ。飯食ってから寝直せ」

 んん?昼?
 
「返事無いなら入んぞ」
「入れるもんなら入ってみろ」

 緋色ひいろの低い声。
 そんなこと言わないんだよ。寝坊したのは俺たちなんだから。

「あ、殿下起きました?昼っす。まじで昼過ぎました。成人なるひとに飯食わせてください」
「……」
「俺、起きたー」
「おう。おはよーってか、もうこんにちは、だ。早く飯食え。すぐ、おやつの時間になっちまう」

 それは大変。
 緋色ひいろをぽんぽんとして、抱っこの手を緩めてもらった。布団から起き上がると、ぐうとお腹が鳴った。

「おお。お腹が鳴った」
「そりゃ良かった。水分、とったか」
「んー?」

 夜、気持ちいいことしながら、口移しで水はもらったような?
 起き上がって、布団の横の台に置いてあった水を飲んでいた緋色ひいろが、ちょいちょいと手招きしている。近寄ると、頭を大きな手で持たれて口を塞がれた。薄く開けた口の間から、水が送られてくる。喉が渇いてたから、こくこく飲んだ。
 これ、気持ちいいけど、水がぬるいんだよなあ。俺は冷たいのが好き。

「飲んだ」
「あー、はいはい。どーでもいいけど、早く飯食いに来い。殿下も。伝えましたからね、俺」
「飯を持ってきてもいいぞ」
「嫌っす。今、絶対ここに入りたくないっす」

 そう?
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