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第九章 礼儀を知る人知らない人
21 良かったな 源之進
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「源さあん」
「情けない声出すな、馬鹿」
思っとったより早い時間に、大きな荷物を持った臣が来た。
「お前、仕事は……」
「ん?源さんが目ぇ覚ましたから、はよご飯持って行きって追い出された」
仕事場を追い出されるってお前、普段ちゃんと役に立っとんやろな?心配やわ。仕事中はきりっとしとったと思ったんやけど、親の欲目か。いや、親やないけど。あ、いや、親でええんやったか……。まあ、ええわ。そうやな。そうやない、違うって自分に言い聞かせなあかんような事は、もう何も無いんやったな。
ところで、目ぇ覚ましたこと伝わってるんは、何でなん?
起きてからずっとそこの無愛想な男しかこの部屋におらん上に、そいつはずっとここにおるけど?
「朝ご飯持ってきた。うちの作った雑炊やで」
「そうか」
「うん。半助、源さんのこと看とってくれてありがとう」
「ああ、うん。何もできとらんのやけど」
「ううん。ありがとう」
臣の前でだけ、でれでれしやがってこの男は。
「ほな、行くな」
「うん。今日も仕事、頑張って」
「ああ。今日からまた、成人さまの担当に戻るから、離宮におるし」
「うん」
「臣も、その、ほどほどにな」
「あはは。分かっとるって」
別に部屋の外に見送りに行くことはないんちゃう?どうせまたすぐ会えるやろに。
腹が減ったので、臣の持ってきた土鍋を勝手に開ける。ほわほわと湯気が出た。作ってすぐに持ってきたんか。これを、俺が起きたと聞いてすぐに作れるって、他の人の朝ご飯作りはどうなっとる?ほんまに、ちゃんと仕事しとんやろな。
ほんで、俺が起きたってのはほんまに、何をどうして伝わった?
「あ、源さん、うちが食べさせてあげるから、勝手に食べんといてー」
「食べさせてあげるって何や。そんなもん、飯くらい自分で食うわ」
「ええ?病人は大人しく口を開けとくもんやで」
「なんやそら。何なら今、絶好調やぞ」
臣は、はっと細い目を見開いてからふわりと笑った。
「源さんの絶好調、初めて見たわ」
「そうか?」
食べさせたがる手をはたき落として、雑炊を口に運ぶ。
こりゃまた……。
「旨いな」
「せやろ?」
「こんだけええ材料ばっかり使っとったら、誰が作っても美味しなるわ。贅沢な」
「皇族の厨房にしては、ほどほどの値段のものしか置いてないって聞いたけど」
「……」
そや。臣は今、皇族の厨房におるんやった。なんかもう、色々と理解が追いつかんな。
「あーうん。まあ、あそこの材料使えば、誰が何作っても美味しいよね」
「……」
しゅん、とされると弱い。
「あー、その。上手になったな、臣」
ふにゃ、と笑うな。そんな、気の抜けたような、嬉しそうな顔して……。
まあ、ええのか。
ここでは、したいようにしてええんやったな。
そうか。そうか……。
良かったな、臣。
「情けない声出すな、馬鹿」
思っとったより早い時間に、大きな荷物を持った臣が来た。
「お前、仕事は……」
「ん?源さんが目ぇ覚ましたから、はよご飯持って行きって追い出された」
仕事場を追い出されるってお前、普段ちゃんと役に立っとんやろな?心配やわ。仕事中はきりっとしとったと思ったんやけど、親の欲目か。いや、親やないけど。あ、いや、親でええんやったか……。まあ、ええわ。そうやな。そうやない、違うって自分に言い聞かせなあかんような事は、もう何も無いんやったな。
ところで、目ぇ覚ましたこと伝わってるんは、何でなん?
起きてからずっとそこの無愛想な男しかこの部屋におらん上に、そいつはずっとここにおるけど?
「朝ご飯持ってきた。うちの作った雑炊やで」
「そうか」
「うん。半助、源さんのこと看とってくれてありがとう」
「ああ、うん。何もできとらんのやけど」
「ううん。ありがとう」
臣の前でだけ、でれでれしやがってこの男は。
「ほな、行くな」
「うん。今日も仕事、頑張って」
「ああ。今日からまた、成人さまの担当に戻るから、離宮におるし」
「うん」
「臣も、その、ほどほどにな」
「あはは。分かっとるって」
別に部屋の外に見送りに行くことはないんちゃう?どうせまたすぐ会えるやろに。
腹が減ったので、臣の持ってきた土鍋を勝手に開ける。ほわほわと湯気が出た。作ってすぐに持ってきたんか。これを、俺が起きたと聞いてすぐに作れるって、他の人の朝ご飯作りはどうなっとる?ほんまに、ちゃんと仕事しとんやろな。
ほんで、俺が起きたってのはほんまに、何をどうして伝わった?
「あ、源さん、うちが食べさせてあげるから、勝手に食べんといてー」
「食べさせてあげるって何や。そんなもん、飯くらい自分で食うわ」
「ええ?病人は大人しく口を開けとくもんやで」
「なんやそら。何なら今、絶好調やぞ」
臣は、はっと細い目を見開いてからふわりと笑った。
「源さんの絶好調、初めて見たわ」
「そうか?」
食べさせたがる手をはたき落として、雑炊を口に運ぶ。
こりゃまた……。
「旨いな」
「せやろ?」
「こんだけええ材料ばっかり使っとったら、誰が作っても美味しなるわ。贅沢な」
「皇族の厨房にしては、ほどほどの値段のものしか置いてないって聞いたけど」
「……」
そや。臣は今、皇族の厨房におるんやった。なんかもう、色々と理解が追いつかんな。
「あーうん。まあ、あそこの材料使えば、誰が何作っても美味しいよね」
「……」
しゅん、とされると弱い。
「あー、その。上手になったな、臣」
ふにゃ、と笑うな。そんな、気の抜けたような、嬉しそうな顔して……。
まあ、ええのか。
ここでは、したいようにしてええんやったな。
そうか。そうか……。
良かったな、臣。
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