【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

35 俺はみんなのじゃないけど  成人

 緋色ひいろが俺の横に立つ。

「そろそろ準備できたか?」
「うん」
「早めに始めるか?」

 ん?

「ちび達が眠くなるだろ」

 ああ、確かに。亀吉かめきちはお昼寝していない。お昼ご飯の後、灯可とうか見可みかも一緒に、朝に紙のお花に貼ったシールを小さな手で剥がして大喜びしていた。亀吉かめきちがお花を持つと潰れちゃうので、灯可とうかがお花を持って亀吉かめきちがシールを剥がして、亀吉かめきちがここって言う場所に灯可とうかが飾るっていうのがとても楽しかったみたい。二人はすっごく仲良しになった。もちろん俺も一緒にいて仲良し。見可みかは自分で剥がして飾りたいから、一人で走り回ってた。だから、亀吉かめきちとまだあんまり仲良くなっていないかも?
 見可みかは今は、たこ焼きを焼く道具を食堂に置いている様子を見るのが楽しくて、そっちにいる。触るなよ、触るなよってずっと広末ひろすえ村次むらつぐに言われてた。分かってるってば、って言ってたけど、心配だな。うん。準備できたらちゃっちゃと始めるか。主役は来たしね。

「ちび。覚えてるか。これは誰だ」

 緋色ひいろ斑鹿乃むらかのに抱えられた末良すえよしの前に立った。

「ひーろでんか」

 おお。末良すえよし、覚えてた。

「正解だ」

 緋色ひいろは俺の肩をぐいっと抱いてから、にやって笑った。

「流石は二歳。じゃあもう分かるな? 成人なるひとは誰のだって?」

 むむむ、と末良すえよしが口を閉じる。緋色ひいろ、さっきいなかったのに、何でその話知ってるの?
 
「……み、なの」
「ん? 聞こえんぞ」
「みんなの!」

 末良すえよしの大きな声の後、ちょっと静かになった。

「ぶはっ。あははは」

 緋色ひいろの大笑い。

「外れ。俺のだ、ばかちび」

 末良すえよしが、ふいって横を向く。あ。本当は知ってる時のやつ。可愛い。

「ま、今のは上手かった。大きくなったな、ちび。今日の主役だし、分かってるみたいだし許してやろう」

 緋色ひいろは俺の肩を離すと、ちびと控え室行ってこいって言った。

緋色ひいろ末良すえよしだよ。ちびじゃなくて末良すえよし
「ん? そうだな。末良すえよし、お前はあっちだ。成人なるひとと行ってこい」
「あいっ!」

 斑鹿乃むらかのに降ろしてもらった末良すえよしは、にこにこで俺と手を繋いだ。末良すえよし斑鹿乃むらかのが一緒にいなくても大丈夫になったんだな。一歳の時は、ずっと斑鹿乃むらかのにくっついてたのに。
 俺は、控え室に末良すえよしと歩きながら考える。
 俺はみんなのじゃないけど、みんなと仲良くできるのは嬉しいな。

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