【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
1,079 / 1,325
第九章 礼儀を知る人知らない人

36 うちのちび  緋色

しおりを挟む
 成人なるひとと手を繋いで、誕生日会会場である食堂に入場してきた末良すえよしは、大勢の拍手にもひるむことなく堂々と歩いている。おめでとう、の声に、あいっ、と返事をして頭を下げる末良すえよしの様子に、可愛いだの凄いだの賢いだのと様々な賞賛の声が上がった。調子に乗らすな、と思ったり、うちのちびはやはり偉いもんだと思ったりする。末良すえよしと同じく十月生まれの三郎さぶろう政巳まさみが、成人なるひと末良すえよしの歩く様子をにこにこと見守りながら、後ろに続いていた。

「全くお前というやつは」

 せっかく機嫌良く成人なるひととうちのちびの勇姿を見守っているというのに、隣からの小言がうるさい。

「開催時間が早くなるなら早くなるとすぐに連絡を寄越しなさい。私たちが常に早めの行動をするたちだから間に合ったものの、すでに始まると聞いてどれだけ驚いたことか」
「あー、はいはい。悪かった悪かった」

 朱実あけみ赤璃あかり朱音あかねも誕生日会に来ると言っていたことをすっかり忘れていたのだと言うわけにもいかず、小言は黙って聞き流すしかなかった。間に合ったのだから、良かったではないか。
 朱音あかねは、到着してしばらくは赤璃あかりの腕の中で大人しくしていたが、知らぬ場所で大勢の人間に囲まれて泣き出してしまった。
 赤璃あかりが慌てて朱音あかねを抱いたまま部屋を出ていったが、朱実あけみは、泣く子の側に自分がいても役には立たないと部屋に残ってしまった。で、延々と小言を聞かされる羽目になっている。
 
「しかし、堂々としたものだな」
「ふふん」

 うちのちびはなかなかやるだろう?

「何故お前がそんなに嬉しそうなんだ?」

 そりゃ、うちのちびが褒められたら嬉しいだろう? 何を当たり前のことを言ってんだ、この人は。
 それより、そちらが問題だ。

朱音あかねは、もう少し外に出した方がいいのではないか?」
「ああ、それについては今、実感しているところだ。西賀さいかの次期領主夫妻とご子息も、随分と堂々としたものだった」

 いや、流石に少し焦っていたぞ。聞いてない、と言いたげな視線を俺に向けていた。確かに言っていない。何せ、俺も忘れていたからな。朱実あけみに聞かれたら小言が増えそうだから、後で謝ろう。
 まあ、俺に視線を寄越した後で、しっかり笑顔で皇太子殿下に挨拶する辺りは確かに素晴らしかった。

「いや。やはり、末良すえよし西賀さいかのご子息が特別なのではないか。こんな大勢の中でにこにこと楽しんでいられる赤子などそうそうおるまい」
「ふ。はは。知らんけど」

 俺の知っている小さい生き物たちは皆、成人なるひとを筆頭に堂々としてやがるからなあ。

 
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。 種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。 ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! トェルとリィフェルの動画つくりました!  インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 応援ありがとうございます! 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

処理中です...