【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

129 順番にひと休み  成人

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 ご飯を食べた後は、仕事が忙しいから散歩はここまでって緋色ひいろ常陸丸ひたちまるに言われて、村次むらつぐのお土産のたい焼きだけを持ってお城に帰ってきた。お土産のたい焼き、先に買っておいて良かった。
 他の人たちはもうお城に帰って来ていて、俺たちが一番最後だった。しゃぶしゃぶを楽しみ過ぎたかな? 美味しかったし、大分のんびり食べてしまったかもしれない。ただいまって言う前に弐角にかくがお迎えに出てきて、緋色ひいろと真剣な顔で何かを話し始めていた。
 出入り口には、お城の外に出たいけれど出られない人がまだまだたくさんいて、大変そう。

「手伝おうか?」

 持ち物を調べるくらいなら俺でもできそうな気がして、じいやに聞いてみた。じいやは、少し間をおいてからふっと笑った。じいやが間をおくなんて珍しい。

「ありがとうございます」
「うん」

 いいよ。俺にもできそうな仕事があって嬉しい。では早速、と思ったんだけど。

「まずは、お茶を飲んで来てください」

 え? そう?

「出かけた後はひと休み、だろ? 村次むらつぐに土産を渡さなきゃならないし、まずは厨房へ行ってから手伝いに来よう。な?」

 力丸りきまるにもそう言われて、そうだったと思い出した。

「じいやのお土産なくてごめんね」

 たい焼き、もっとたくさん買えば良かった。あ、でも今日、一ノ瀬が何人来てるのか、俺、よく分かってないんだよなあ。忙しそうにあちこちに散ってて、把握しきれていない。たい焼きを幾つ買えば足りるのか、分からないな。

「そのうち村次むらつぐに作ってもらうからいいんですよ、成人なるひとさま。村次むらつぐに食わしといてください」
「ん、そっか」
「そうです」

 そうだね。村次むらつぐ壱臣いちおみ広末ひろすえの分を買ってきて、美味しかったよって渡しておけば、そのうち離宮おうちで作ってくれる。だから、村次むらつぐの分を買ってきたら大丈夫か。うん。正解だった。

「ふむ。では、成人なるひとがひと休みしておる間は、わしが手伝うとしよう」
「それは、是非とも」

 じいじが言ったら、じいやはすぐに頭を下げた。じいじは、任せろって言って、文句を言っていた人たちの方へ歩いていった。じいじが近付いただけで、その人たちはひっと喉を鳴らして口を閉じた。じいじがここに居るだけで、仕事が早く進むかも?

荘重むらしげ殿、順番に休憩を取れ。できることをするしかないのだから焦るな。こやつらの文句の先は我らではない」
「ええ。その通りですね」

 じいや達も、ちゃんとご飯やおやつを食べてひと休みして。俺、後で絶対、手伝いに来るからね。

 厨房の人たちは、こちらをちらちら見ながら、皿を洗ったり、大急ぎで何か食べてたり、とても忙しそうだった。厨房の人が休む用の部屋は閉じてあって、出入り禁止になっていた。休む時もここで、って厨房にある大きな机の前に椅子が置いてあった。
 全員、村次むらつぐが見渡せる場所にいてもらっているんだな。
 食べ物を扱う所は、刃物も火種もあるから大変だ。おかしな物も混ぜやすいし、危険がいっぱい。緋色を守るためなら、全員追い出した方がいいくらい。でも、食べ物がないとお城で仕事してる人が困るから、こうして見張りながら食事を作ってもらっている。
 こんな場所で、あっという間に自分の見張りやすい形を整えた村次むらつぐは、やっぱりすごい。
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