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第九章 礼儀を知る人知らない人
128 これはすごい食べ物 成人
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たくさん食べて、最後には鍋の中にご飯と溶いた卵を入れて雑炊にして、汁まで全部食べ尽くした。
「いやあ、旨かった」
一番大食いの力丸がお腹をぽんぽんとさするくらいに食べて、みんな大満足だ。俺も今日は、最後の雑炊まで食べれた。一口だけど、入った。みんなより早くにお腹いっぱいになったのはいつも通りだったけど、その後、緋色のためのお肉や魚をしゃぶしゃぶするしゃぶしゃぶ係をしていたので、その間に少しお腹にすきまができたみたいだ。お肉と魚は、力丸の分も常陸丸の分もじいじの分もしゃぶしゃぶしてあげたかったんだけど、緋色の食べるのが早すぎて、緋色の分だけしゃぶしゃぶするので精一杯だった。残念。
雑炊は、たくさん煮たお肉や魚や野菜の味が出汁と混じっていて、すっごく美味しかった。入っているのはご飯と卵だけなのに、さっきまで食べていたしゃぶしゃぶ鍋の中に入れた色んな食べ物の味がした。びっくりだ。そこに野菜も肉も魚もないのに色んな味がすることも、色んな味がすることが分かった俺の口の中にも、びっくり。
戦場から離れてから食べたものは、全部美味しかった。飴はもちろん、雑炊もおかゆも氷も美味しかった。でも全部、それはそういう味なんだなって思っただけだった。そういう味。飴は飴の、おかゆはおかゆの、氷は氷の味。雑炊も雑炊の味。そんな俺の口が、入っていない野菜や肉や魚の味を感じて美味しいって思うなんて、びっくり。何だか広末たち料理人みたいだ。これは、すごい食べ物かもしれない。
おうちでも作ってもらいたいから料理人の村次をお城から呼びたかったけれど、一人だけ付いてきてくれていた一ノ瀬をお城への連絡に使った後だったので、すぐには呼べず諦めた。残念。すごく残念。
「店主。個室でなくて構わないのだが、明日の予約は満席か?」
「はい、満席にございます」
「だろうなあ」
緋色の言葉に平伏した店主に、力丸が言う。
「旨いもん」
俺も、うんうん頷いた。一回来たら、また食べたくて次の予約をしてしまう。ずっと席が空いてないの、分かる。
「大変ありがたいお言葉です。ほんまに、ありがたい……。こう言うたら何ですけど、その、うちはほんまは、お城の方やらのご来店は想定しとらんかったんです。ほんで、どうにもうちらの対応に不備があったようで、なんやかんやとまあ、ちょっとした騒動もありまして。ほんで、個室を作って、お城の方はこちらと分けてから何とか……。一見さんお断りなんて偉そうなこと言うとるのは、よう知らん方のお相手に難儀した苦肉の策で。うちは元々、庶民には少々値が張るんやけど、ハレの日の食事として、たまの贅沢で食べられるのがええやろ、という考えでやっとった店のはずやのに……。いや、これは、余計なことを。そんな訳で、その、個室は一つなもので」
「いや、気にするな。無理を言った。うちの料理人に食べさせたくてな」
今日、一緒に来ておけば良かった。困らせてごめん。
「あ、そうだ!」
力丸が、大きい声を出した。良いこと思いついた時の顔。
「今夜は? 今日の夜の客は、城から出るのが間に合わないかもしれないからさ。夜の客が来なければ、代わりに来てもいいか?」
「そ、それは、願ってもないことでございますが……」
「よし、決まり。殿下、俺が村次連れてきます。客が来てたら、諦めて城に帰りますんで」
力丸、夜も食べようとしてる? いいな。俺も一緒に来て、村次にしゃぶしゃぶしてあげたいかも。
「いやあ、旨かった」
一番大食いの力丸がお腹をぽんぽんとさするくらいに食べて、みんな大満足だ。俺も今日は、最後の雑炊まで食べれた。一口だけど、入った。みんなより早くにお腹いっぱいになったのはいつも通りだったけど、その後、緋色のためのお肉や魚をしゃぶしゃぶするしゃぶしゃぶ係をしていたので、その間に少しお腹にすきまができたみたいだ。お肉と魚は、力丸の分も常陸丸の分もじいじの分もしゃぶしゃぶしてあげたかったんだけど、緋色の食べるのが早すぎて、緋色の分だけしゃぶしゃぶするので精一杯だった。残念。
雑炊は、たくさん煮たお肉や魚や野菜の味が出汁と混じっていて、すっごく美味しかった。入っているのはご飯と卵だけなのに、さっきまで食べていたしゃぶしゃぶ鍋の中に入れた色んな食べ物の味がした。びっくりだ。そこに野菜も肉も魚もないのに色んな味がすることも、色んな味がすることが分かった俺の口の中にも、びっくり。
戦場から離れてから食べたものは、全部美味しかった。飴はもちろん、雑炊もおかゆも氷も美味しかった。でも全部、それはそういう味なんだなって思っただけだった。そういう味。飴は飴の、おかゆはおかゆの、氷は氷の味。雑炊も雑炊の味。そんな俺の口が、入っていない野菜や肉や魚の味を感じて美味しいって思うなんて、びっくり。何だか広末たち料理人みたいだ。これは、すごい食べ物かもしれない。
おうちでも作ってもらいたいから料理人の村次をお城から呼びたかったけれど、一人だけ付いてきてくれていた一ノ瀬をお城への連絡に使った後だったので、すぐには呼べず諦めた。残念。すごく残念。
「店主。個室でなくて構わないのだが、明日の予約は満席か?」
「はい、満席にございます」
「だろうなあ」
緋色の言葉に平伏した店主に、力丸が言う。
「旨いもん」
俺も、うんうん頷いた。一回来たら、また食べたくて次の予約をしてしまう。ずっと席が空いてないの、分かる。
「大変ありがたいお言葉です。ほんまに、ありがたい……。こう言うたら何ですけど、その、うちはほんまは、お城の方やらのご来店は想定しとらんかったんです。ほんで、どうにもうちらの対応に不備があったようで、なんやかんやとまあ、ちょっとした騒動もありまして。ほんで、個室を作って、お城の方はこちらと分けてから何とか……。一見さんお断りなんて偉そうなこと言うとるのは、よう知らん方のお相手に難儀した苦肉の策で。うちは元々、庶民には少々値が張るんやけど、ハレの日の食事として、たまの贅沢で食べられるのがええやろ、という考えでやっとった店のはずやのに……。いや、これは、余計なことを。そんな訳で、その、個室は一つなもので」
「いや、気にするな。無理を言った。うちの料理人に食べさせたくてな」
今日、一緒に来ておけば良かった。困らせてごめん。
「あ、そうだ!」
力丸が、大きい声を出した。良いこと思いついた時の顔。
「今夜は? 今日の夜の客は、城から出るのが間に合わないかもしれないからさ。夜の客が来なければ、代わりに来てもいいか?」
「そ、それは、願ってもないことでございますが……」
「よし、決まり。殿下、俺が村次連れてきます。客が来てたら、諦めて城に帰りますんで」
力丸、夜も食べようとしてる? いいな。俺も一緒に来て、村次にしゃぶしゃぶしてあげたいかも。
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