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第九章 礼儀を知る人知らない人
148 見本の挨拶 成人
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「疲れていないか、三郎」
「は。問題ありません」
「表に立って仕事をしてもらうぞ?」
「ええ、はい。問題ありません」
三郎は、少し声をひそめる。
「西宗国と西中国は、そんなに親しい付き合いやありませんでした。私の事を見て、元の名を口にすることができる者はおらん、と断言できます」
「は?」
「え?」
「はは」
緋色が笑う。いつもの表情で。
少し離れた場所で待たされている人たちが、ざわざわと揺れた。門から入ることをやっと許されて、次は城に入るために待っている大勢の人たち。
昨日、仕事を終えて帰ってまた朝に来た人たちは、名前を書いただけで入れているらしい。待たされているのは、昨日お城にいなかった人たちだ。確認、大事。応じられない者は帰ってええ、解雇とするって門の前で竹光が宣言したから、待っている人が多い。帰った人もいたけど。
俺たちは、うちの人が来たって聞いてお迎えに出てきた。
「お前の心配はそちらか。そんなもの、相手が気付いた所でとぼけたらいい。くく、ははは。そうか。頼もしいことだ。任せる」
「は。精一杯勤めます」
「ほどほどにな」
そうだよ。ほどほどにね。
きりっと顔を引き締めた三郎は格好良い。でも、頑張りすぎたら駄目。ほどほどって大事だよ。
そういえば、狭い書類部屋にいた人たち、元気になったかな? ご飯とかちゃんともらえてなかった罪人? たちも。元気になってるといいな。
「ま。利胤がいるからな。無茶はできまい」
じいじは、三郎が仕事をし過ぎないように見張るのが今の仕事らしい。前に言ってた。孫の三郎だけじゃなく、子どもの生松や斎や睦峯も見張ってるんだって。いい仕事だよね。俺もたまに手伝っている。じいじと一緒に三郎と商店街に散歩に行ったり、生松に差し入れを届けたりする。じいじは、生松と一緒に仕事をしている栄にもよく、ひと休みせい、って言う。栄も仕事をし過ぎるから、栄のことも見張っているんだな、きっと。お手伝いの俺も、気を抜かずに頑張らなければ。あ、もちろん、ほどほどに。
表に迎えに出てきたのは、ここにいる人たちに、今着いた人たちは緋色の身内だよって知らせるためだ。三郎は、礼儀とかに強い。だから、緋色はここで挨拶を受けたんだ、きっと。三郎の上手な挨拶を見たら、ちゃんとしなくちゃいけないって気付く人も多いだろうしね。
三郎は、そういうのには慣れているって言っていた。決められた動きをして決められた言葉を使うのは得意だって。俺も、得意だな。決められたことをなぞるのって一回覚えたらできることだし、楽でいい。逆に、できない人が不思議だ。こうしろって教えてもらってるんだから、したらいいのに。
うちの人たちは流石だ。背筋を伸ばして、全員で包拳礼をしていた。半助は、片手しかないから片手を持ち上げて拳を握るしかないんだけれど、拳を握ることで武器を持たないって示しているから、大丈夫。
本当は、礼なんていらないんだけどね。でも、迎えに出た俺たちの前でこうすることには意味がある。周りの人、ちゃんと真似してくれたらいいな。くだらない罰を下している時間が、もったいないからさ。
「壱臣、大丈夫?」
三郎は大丈夫そう。
壱臣が心配だな。ここ、壱臣が苦手な羽織袴の人だらけなんだけど。
「うちは、すぐ厨房に引っ込むんで大丈夫です。たぶん」
ちょっと笑った顔に元気はなかった。
壱臣は、まずは半助と、たい焼きとしゃぶしゃぶ食べてきたらどうかな? ね? 緋色? 料理人には、それも大事な仕事だよね。
「は。問題ありません」
「表に立って仕事をしてもらうぞ?」
「ええ、はい。問題ありません」
三郎は、少し声をひそめる。
「西宗国と西中国は、そんなに親しい付き合いやありませんでした。私の事を見て、元の名を口にすることができる者はおらん、と断言できます」
「は?」
「え?」
「はは」
緋色が笑う。いつもの表情で。
少し離れた場所で待たされている人たちが、ざわざわと揺れた。門から入ることをやっと許されて、次は城に入るために待っている大勢の人たち。
昨日、仕事を終えて帰ってまた朝に来た人たちは、名前を書いただけで入れているらしい。待たされているのは、昨日お城にいなかった人たちだ。確認、大事。応じられない者は帰ってええ、解雇とするって門の前で竹光が宣言したから、待っている人が多い。帰った人もいたけど。
俺たちは、うちの人が来たって聞いてお迎えに出てきた。
「お前の心配はそちらか。そんなもの、相手が気付いた所でとぼけたらいい。くく、ははは。そうか。頼もしいことだ。任せる」
「は。精一杯勤めます」
「ほどほどにな」
そうだよ。ほどほどにね。
きりっと顔を引き締めた三郎は格好良い。でも、頑張りすぎたら駄目。ほどほどって大事だよ。
そういえば、狭い書類部屋にいた人たち、元気になったかな? ご飯とかちゃんともらえてなかった罪人? たちも。元気になってるといいな。
「ま。利胤がいるからな。無茶はできまい」
じいじは、三郎が仕事をし過ぎないように見張るのが今の仕事らしい。前に言ってた。孫の三郎だけじゃなく、子どもの生松や斎や睦峯も見張ってるんだって。いい仕事だよね。俺もたまに手伝っている。じいじと一緒に三郎と商店街に散歩に行ったり、生松に差し入れを届けたりする。じいじは、生松と一緒に仕事をしている栄にもよく、ひと休みせい、って言う。栄も仕事をし過ぎるから、栄のことも見張っているんだな、きっと。お手伝いの俺も、気を抜かずに頑張らなければ。あ、もちろん、ほどほどに。
表に迎えに出てきたのは、ここにいる人たちに、今着いた人たちは緋色の身内だよって知らせるためだ。三郎は、礼儀とかに強い。だから、緋色はここで挨拶を受けたんだ、きっと。三郎の上手な挨拶を見たら、ちゃんとしなくちゃいけないって気付く人も多いだろうしね。
三郎は、そういうのには慣れているって言っていた。決められた動きをして決められた言葉を使うのは得意だって。俺も、得意だな。決められたことをなぞるのって一回覚えたらできることだし、楽でいい。逆に、できない人が不思議だ。こうしろって教えてもらってるんだから、したらいいのに。
うちの人たちは流石だ。背筋を伸ばして、全員で包拳礼をしていた。半助は、片手しかないから片手を持ち上げて拳を握るしかないんだけれど、拳を握ることで武器を持たないって示しているから、大丈夫。
本当は、礼なんていらないんだけどね。でも、迎えに出た俺たちの前でこうすることには意味がある。周りの人、ちゃんと真似してくれたらいいな。くだらない罰を下している時間が、もったいないからさ。
「壱臣、大丈夫?」
三郎は大丈夫そう。
壱臣が心配だな。ここ、壱臣が苦手な羽織袴の人だらけなんだけど。
「うちは、すぐ厨房に引っ込むんで大丈夫です。たぶん」
ちょっと笑った顔に元気はなかった。
壱臣は、まずは半助と、たい焼きとしゃぶしゃぶ食べてきたらどうかな? ね? 緋色? 料理人には、それも大事な仕事だよね。
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