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第十章 されど幸せな日々
80 仲良し 成人
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「なあ、成人くん。ほんまに? ほんまにうちも行くん?」
壱臣が歩きながら、俺の右の袖をちょんと掴んで聞いた。決めた緋色は早い。乙羽の手首を掴んだまま、雫石母さまの部屋がある方向へすたすたと歩き始めてしまった。俺たちもついていくしかなくて、一緒に歩いている。緋色は、さっきと違って、俺や乙羽がついていける速さで歩いていたから、壱臣と話す余裕もあった。
「うん」
緋色がもう決めちゃったし。
「でも。でもな。うちだけ、皇妃殿下をお伺いしてええ理由がなくない? あかんくない?」
「うーん」
「そんなの、私だってないわよ!」
乙羽が振り返って言う。
うーん。うん? そうかも?
「俺が、一緒に行きたいと言ったからいいんだ」
ああ、うん。そうだ。前に俺が、乙羽と力丸に金魚を見せたいって言ったら、成人ちゃんと一緒にいらっしゃいって、母さまは言った。それなら、緋色も、連れて行きたい人を一緒に連れて行っていいんじゃないかな。常陸丸は緋色の護衛だから、緋色が小さな頃からいつも一緒に行っていたし、半助は俺の護衛で一緒に行ったことがある。二人は、俺たちと一緒に行くのが当たり前。それで、乙羽と壱臣は、俺たちが一緒に連れて行きたい人だから連れて行っていい。うん、ばっちり。
「殿下。いい加減、乙羽の手を離せ」
「逃げられたら困るだろ」
「逃げるっておかしくない? 私は、もう陛下方へのご挨拶は済んだんだから、おうちに帰るって言ってるだけでしょ」
「そんなの俺だって済んだ」
「殿下は、陛下から、皇妃殿下にお顔をお見せしてきなさいとのご指示を受けたんでしょ」
皇城の奥の方へどんどん進む。すれ違う人がほとんどいなくなって、近衛だけが立っている辺りへとやってきた。いつの間にか先触れがいっていたのか、緋色がいるからか、近衛は皆、ただ頭を下げて見送ってくれた。
「だーかーら! こうして向かってるだろうが」
「だーかーら! 私が一緒に行かなきゃいけない意味が分かんないって言ってるんでしょ」
「緋色。乙羽の手を離せって」
仲良しだなあ。緋色と常陸丸と乙羽は、本当に仲良し。
何となく顔を上げたら、壱臣と目が合った。ふふ、と二人で笑う。
あ。
壱臣が俺の袖を掴んだままだったから、俺たちも手を繋いで歩いているみたいになってたね。
俺たちも仲良しだ。
「あれ?」
俺たちが近寄る前にその扉は開いた。
母さまの部屋。
常陸丸が口を閉じて背筋を伸ばした。乙羽も、すっと背筋を伸ばす。緋色が足を止めたから、俺たちも止まった。壱臣と半助も背筋を伸ばした。
部屋から出てきたのは母さまだった。俺と緋色は頭を下げて、他の四人は包拳礼をした。
「帰国のご挨拶をしに参りました」
緋色が、頭を下げたまま言う。
「そう……」
母さまはそれだけ言って黙ってしまった。
壱臣が歩きながら、俺の右の袖をちょんと掴んで聞いた。決めた緋色は早い。乙羽の手首を掴んだまま、雫石母さまの部屋がある方向へすたすたと歩き始めてしまった。俺たちもついていくしかなくて、一緒に歩いている。緋色は、さっきと違って、俺や乙羽がついていける速さで歩いていたから、壱臣と話す余裕もあった。
「うん」
緋色がもう決めちゃったし。
「でも。でもな。うちだけ、皇妃殿下をお伺いしてええ理由がなくない? あかんくない?」
「うーん」
「そんなの、私だってないわよ!」
乙羽が振り返って言う。
うーん。うん? そうかも?
「俺が、一緒に行きたいと言ったからいいんだ」
ああ、うん。そうだ。前に俺が、乙羽と力丸に金魚を見せたいって言ったら、成人ちゃんと一緒にいらっしゃいって、母さまは言った。それなら、緋色も、連れて行きたい人を一緒に連れて行っていいんじゃないかな。常陸丸は緋色の護衛だから、緋色が小さな頃からいつも一緒に行っていたし、半助は俺の護衛で一緒に行ったことがある。二人は、俺たちと一緒に行くのが当たり前。それで、乙羽と壱臣は、俺たちが一緒に連れて行きたい人だから連れて行っていい。うん、ばっちり。
「殿下。いい加減、乙羽の手を離せ」
「逃げられたら困るだろ」
「逃げるっておかしくない? 私は、もう陛下方へのご挨拶は済んだんだから、おうちに帰るって言ってるだけでしょ」
「そんなの俺だって済んだ」
「殿下は、陛下から、皇妃殿下にお顔をお見せしてきなさいとのご指示を受けたんでしょ」
皇城の奥の方へどんどん進む。すれ違う人がほとんどいなくなって、近衛だけが立っている辺りへとやってきた。いつの間にか先触れがいっていたのか、緋色がいるからか、近衛は皆、ただ頭を下げて見送ってくれた。
「だーかーら! こうして向かってるだろうが」
「だーかーら! 私が一緒に行かなきゃいけない意味が分かんないって言ってるんでしょ」
「緋色。乙羽の手を離せって」
仲良しだなあ。緋色と常陸丸と乙羽は、本当に仲良し。
何となく顔を上げたら、壱臣と目が合った。ふふ、と二人で笑う。
あ。
壱臣が俺の袖を掴んだままだったから、俺たちも手を繋いで歩いているみたいになってたね。
俺たちも仲良しだ。
「あれ?」
俺たちが近寄る前にその扉は開いた。
母さまの部屋。
常陸丸が口を閉じて背筋を伸ばした。乙羽も、すっと背筋を伸ばす。緋色が足を止めたから、俺たちも止まった。壱臣と半助も背筋を伸ばした。
部屋から出てきたのは母さまだった。俺と緋色は頭を下げて、他の四人は包拳礼をした。
「帰国のご挨拶をしに参りました」
緋色が、頭を下げたまま言う。
「そう……」
母さまはそれだけ言って黙ってしまった。
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