【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

98 おかえり?  成人

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 あっという間に、年始のお休み期間に入った。これが明けたら年始の集まりだ。緋色ひいろは、集まりに出席したらまたすぐに、鶴丸つるまるたちの所に戻るつもりらしい。だから、他に人は帰ってきていなくて、帰ってきた六人とお留守番チームだけでのんびりと過ごしていた。皆、向こうで休みを満喫したらいい、って緋色ひいろが言った。ふふっ。優しい。
 年始のお休み期間のはずだけれど、こっちは、やっている事は普段とあまり変わらない。生松いくまつは病院に仕事に行くし、同じく病院にいるさかえも、誘ったらうちにお昼ご飯を食べに来て、また病院に戻る。お休みじゃないの? って聞いたら、まあ交代で休みますよ、って二人とも言う。手伝いの人は交代で休んでいるらしく、病院はいつもより働いている人が少なかった。お城も、年始のお休みだからと人が少ないので患者もあまり来ないけれど、それでも、全く来ないわけじゃない。だから、閉められないんだって。怪我や病気は、いつ起こるか分からないから大変だよね。
 お休み期間になるといつも思うけれど、皆が皆一斉に休む訳にはいかないから、そういう仕事の人たちは大変だ。
 料理人たちも護衛もいつも通り。ご飯は必ず食べなくちゃいけないし、守る人がいない間に、身分の高い人たちに何かあったら大変だもんね。

「帰ったぞー!」

 今日も、お昼ご飯を食べに来た朱実あけみ殿下と赤璃あかりさまが帰った後の食堂で朱音あかね殿下と遊んでいたら、じいじの大きな声がした。

「ええー?」

 同じように朱音あかね殿下と遊んでいた乙羽おとわと顔を見合わせる。朱音あかね殿下の乳母の玉乃井たまのいと、玉乃井たまのいの子どもの栄喜さかきが、じいじの大きな声にびくっと後ろを振り返った。じいじの声が聞こえたのはそっちの方向じゃないんだけど。たぶん、反射的に振り返ったんだろう。そっくりな動きで、親子だなーって思った。親子や兄弟は似てるものだからね。うん。二人は顔はそんなに似ていない。こういう時は、あれだ。栄喜さかきはお父さん似なんだね、って言われるんだよきっと。
 お昼ご飯の後、朱音あかね殿下が俺の土産の木の玩具で楽しく遊んでいたら、置いていくわ、って赤璃あかりさまが言ったんだ。朱実あけみ殿下と赤璃あかりさまは、年始のお休み中にもちょこちょことお仕事をしているらしい。緋色ひいろもだけど。緋色ひいろは、たくさん文句を言っていたけど。
 赤璃あかりさまってば、なると乙羽おとわがいれば大丈夫でしょって軽く言って帰っちゃった。まあ大丈夫だけど。
 でも、泣いた時に俺も乙羽おとわ朱音あかね殿下を抱き上げられないよ? いいの? と、思っていたら、玉乃井たまのい栄喜さかきがさっきお城から来てくれた。年始のお休み中なのに? と思ったけど乳母も休めない仕事の一つか。まあ、そうか。そのうち交代で休むんだよね、きっと。
 朱音あかね殿下も、ん? ん? と声の主を探していた。じいじの声に、あんまりびくってしていなかったのすごいな?

「帰るって聞いてた?」
「聞いてない」

 子どもたちは玉乃井たまのいに任せて乙羽おとわと出入り口へ向かうと、じいじがのしのしと歩いてきた。後ろに三郎さぶろうも見えた。

「おかえり?」
「おかえりなさい?」

 乙羽おとわと二人、語尾が上がってしまったよ。

「おう、成人なるひと乙羽おとわさま、ただいま帰りました! いやあ、腹が減ったな。壱臣いちおみ。おーい、壱臣いちおみ! 飯が余っとらんか!」
成人なるひと殿下、乙羽おとわさま、ただいま戻りました。ああ、もう、お祖父様。こんな急に帰ってきとんのに、ある訳ないでしょう?」
「あれば儲けもの。何でも聞いてみるが得策じゃぞ、三郎さぶろう。覚えておけ」
「はあ」

 三郎が、返事だかため息だか分からない声を漏らした。
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