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真鶴の章
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教室では、玻璃皇子と快璃皇子が、同級生たちに囲まれていた。いつもの年より人数が多いと聞いている。高位貴族は、皇子の同級となるようにたくさんの子を作ったし、生まれ月をずらして同級にした子もいると聞く。属国も、とりあえず一人を学校に入れておけばよいだろう、といういつもの姿勢はどこへやら、すでに他学年に若君や姫君を送っていても、また送ってきた国が多い。次期帝と五年間共に過ごせるという素晴らしい機会を逃すわけにはいかないのだろう。
明の国は、わざわざ年齢の合わない二歳も下の姫を送ってきたと思われている。だから、余計に風当たりが強いのだろう。実際は、本当に入学間近に姉姫が病を得てしまい、一人も送らない訳には行かず、と言って血族の十歳など、直ぐに見つかる筈もなく、苦肉の策で妹の透子姫を送ってきたのだ。小さな姫は、その場に居るのが精一杯で、皇子に近付こうなどという気持ちもない。
集団に弾かれて、よろよろしている姿を見つけて啄木鳥が足を早めた。だが、快璃皇子が集団を押しのけて駆け付ける。小さな体を、しっかりと抱き止めて何かを話している様子が微笑ましかった。
そう思ってから、ふと玻璃皇子を確認する。我が主は、これを見たのだろうか。
快璃皇子が集団から出たことで、更に玻璃皇子は取り囲まれてしまっており、顔の向きも分からなかった。
流石にお声をお掛けしようかと近付く。
「玻璃皇子。お疲れさまでした。」
びくり、と集団が揺れた。すかさず隔が側へ進むと、子ども達がほんの少し離れる。ほ、としたような顔の玻璃皇子を見て、微かな違和感を覚えた。年相応の、このような表情を久しぶりに見た気がする。
久しぶり?
また、夢に囚われそうになって慌てて笑顔の仮面をしっかりと被る。
「私は、少し遅れて参ります。お部屋には黄沙がおりますので、ごゆるりとお過ごしください。」
「ああ。」
助かった、とでも言いたげな顔をして玻璃皇子は頷き、隔を伴って部屋へと去った。
一度も、透子姫の方へ視線をやることなく……。
明の国は、わざわざ年齢の合わない二歳も下の姫を送ってきたと思われている。だから、余計に風当たりが強いのだろう。実際は、本当に入学間近に姉姫が病を得てしまい、一人も送らない訳には行かず、と言って血族の十歳など、直ぐに見つかる筈もなく、苦肉の策で妹の透子姫を送ってきたのだ。小さな姫は、その場に居るのが精一杯で、皇子に近付こうなどという気持ちもない。
集団に弾かれて、よろよろしている姿を見つけて啄木鳥が足を早めた。だが、快璃皇子が集団を押しのけて駆け付ける。小さな体を、しっかりと抱き止めて何かを話している様子が微笑ましかった。
そう思ってから、ふと玻璃皇子を確認する。我が主は、これを見たのだろうか。
快璃皇子が集団から出たことで、更に玻璃皇子は取り囲まれてしまっており、顔の向きも分からなかった。
流石にお声をお掛けしようかと近付く。
「玻璃皇子。お疲れさまでした。」
びくり、と集団が揺れた。すかさず隔が側へ進むと、子ども達がほんの少し離れる。ほ、としたような顔の玻璃皇子を見て、微かな違和感を覚えた。年相応の、このような表情を久しぶりに見た気がする。
久しぶり?
また、夢に囚われそうになって慌てて笑顔の仮面をしっかりと被る。
「私は、少し遅れて参ります。お部屋には黄沙がおりますので、ごゆるりとお過ごしください。」
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