【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ

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小さな幸せを願った勇者の話

58 入寮

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 監視の騎士が二人も付いていたからだろうか。魔法学校へは、あっさりと俺も入れてもらえて、拍子抜けした。
 案内されたのは、護衛や侍従を連れている者が入る特別寮である。
 …………。
 案内されて唖然とした。
 だだっ広いその部屋には、何も置いてない。ベッドも、家具もなく、床に敷物もなかった。洗面、風呂、トイレ、キッチンは付いていたが、空っぽの部屋だった。

「え?」
「家具は皆様、お好みの物を購入して使用されるので。」
「俺たちは、突然呼ばれて来たので、何も持っていません。」
「では購入してこられては?まだ店はやっているでしょう。」
「お金も持っていません。」
「……。」

 寮の管理人は、そこでようやく俺たちをまじまじと見つめた。

「ずいぶん質素な格好をしていらっしゃるのは、旅をしてきたからだと思っておりましたが。」
「これは、王宮に行くからと着替えさせられた服です。こんな上等な服、初めて着ました。」
「これ、が?」

 絶句した後、顎に手を当てて考えこんでいる。

「どうしたものか。宰相からは、監視の騎士が常に側にいられる部屋を与えよと言われたからここしかないと思ったが、このような者を特別寮に入れていると知れたら、殿下が嫌がられるかもしれない。」
「普通の寮ならベッドはあるんですか?」
「もちろん、最低限のものは付いている。」
「そちらにしてください。どうしてもここだと言うなら、ベッドか布団は入れてくれないと。」
「そんなすぐに、三つも四つも部屋は無い。」

 セナが丁寧に対応しているのに、話は進まない。三つも四つも部屋がいるのは宰相の事情であって、俺たちは、ベッド付きの一部屋をくれたらそれでいいのだ。
 俺たちはすぐに諦めた。もともと俺は、中に入れてもらえないことも想定していたのだから、話は早い。

「では、帰ります。」
「は?」
「魔法学校への入学は無かったことにしてください。」

 ぺこり、とセナが頭を下げると、待て待て待て、と監視の騎士が言った。ずっと御者をしてくれていた方である。

「それは、困る。あんたを魔法学校に通わせろ、と言われているんだ。」
「それが仕事?でも、これじゃ無理だってのは分かるよね?」
「……護衛や侍従の部屋には、家具があるか?」

 少し考えた騎士が、寮の管理人に聞いた。

「それは、備え付けてあります。」

 言いながら寮の管理人が横の扉を開けると、ベッドと机とクローゼットが置いてある狭い部屋があった。小さな洗面台も付いている。

「こちらが侍従の部屋です。」

 更に、部屋を横切った反対側の扉を開く。侍従の部屋よりもう少し広い部屋にはベッドが二つ。クローゼットも二つと、簡易シャワー室とトイレがあるようだった。

「とりあえず、寝られそうだな。」

 俺たちは、空っぽの広い部屋を挟んだ小さな部屋をそれぞれ使わせてもらうことになったらしい。

 

 
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