【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ

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そして勇者は選んだ

34 考えても分からない

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 商人たちは、何事も無かったかのように取り引きに戻った。時間をかけていられない。食べ物は、時間が経つと傷むのだから。
 冒険者たちも、それぞれ食堂へと向かう。門の外で朝から晩まで魔物と戦い、塩を振って焼いた魔物の肉だけを食べて野宿した体は疲れている。これ以上の金にならない揉め事は御免だろう。俺とセナは一晩ぐっすりと寝かせてもらったが、大人たちは交代で見張りをしてくれたのだから。
 
『右の腕の傷を塞げ』

 痛みに呻く騎士に、セナが治癒魔法を使った。右腕に手を添えて詠唱する。これなら、名前を聞かなくても治す腕がどれかは明白だろう。俺が燃やした手の傷が一番酷いようだ。今度から、火の魔法を人に使うのはやめよう……。

「う、ぐ……。お前、治癒魔法を?」

 傷を癒せではなく、傷を塞げ、だったから完全に治るわけではない。傷跡は見えていて、痛みも残っているようだ。騎士は顔をしかめて右腕を左手で抱え込みながら口を開いた。

「使えるよ。聖者なんだから」
「何故、こんなところに?聖者や聖女は王家か教会に仕えるものだろう?」
「え?嫌だけど。治癒魔法って自分の魔力が足りなければ生命力を使って発動するんだよ?治癒魔法を使えって言われて断れない場所に身を置くとか、死ににいくようなものだよ」
「え……?」
「と、いうわけで、今回はこちらがやりすぎたから、動きに支障なく治るところまでは傷を塞いだけど、これ以上は自分で薬とか塗って治してね」

 さて、とセナは立ち上がりお腹に手を当てる。

「お腹空いた」
「俺も」

 俺もお腹が鳴っている。
 ギルドマスターも疲れはてていた。

「詳しい話は後だな。眠いし。悪いが牢に入っていてくれ」

 冒険者ギルドにある牢は、生きたまま捕まえた動物用だけれど。仕方ないよな。人間同士のトラブルは騎士団の管轄だけど、騎士団に渡したら事情が聞けない。
 疲れていた俺たちは、今回の魔物退治の報酬が、売れた肉や素材で出そうなことにほっとして倉庫を出た。

「後は引き受けた。よく休んでくれ」

 商人たちの言葉が頼もしい。
 この町は、町としての機能が本当に上手く回っていて、それぞれの職業の人がしっかりと責任を持って働いている。冒険者は、恐ろしい魔物の群れであっても協力しあって倒したし、依頼者がいなくても商人たちのお陰で、きちんと報酬が出そうだ。
 よく回っているからこそ……。
 金を払わずに肉を持っていこうとした王家のおかしさにぞっとする。
 何でだ?
 金を払わなければ、冒険者の生活も商人の生活も成り立たない。町の人の食べるものもない。
 何を考えているんだろう。
 ご飯を食べながら考えたが、さっぱり分からなかった。
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