5 / 46
04 新たなスキル
しおりを挟む
『それでは、検証実験を開始します』
屋敷の庭。俺はスマホを手に持ち、よし、と意気込む。
それを椅子に座って見守る、エンデとセバスさん。俺は二人に頷き、言った。
「ヘイ、マリス。《生成》を発動」
『かしこまりました。《生成》を発動します』
《生成》。そう名付けられたこのスキル。俺がこれを手に入れた経緯は、数分前に遡る――
※
『学習しますか?』
「え?」
あの石――メタモナイトを解析し終わった直後のこと。彼女は俺に尋ねてきた。
俺は返す。「してどうなるんだ」と。
彼女は応えた。『おそらく、武器の生成が可能になります』と。
俺は少し悩んだ。帯刀が当たり前のこの世界でこれから先生きてゆくためには、確かに武器は必要だ。
しかし《学習》モードは、あの時の一度限りとはいえ、見た感じ対象を――《火球》なら火球そのものをデータ化して取り込む必要がある。
人様の所有物にそんなことをしてもいいのか?そんなブレーキが働く。
俺は恐る恐る、尋ねた。
「あの……すいません。図々しいとは承知の上なんですけれど……」
「なんでしょう?」
「よろしければこの石、貰えませんか?」
瞬間、場の空気が静まり返る。
マズった――流石に失礼が過ぎたか……いきなり現れたどこの馬の骨とも知れぬ男に、こんな貴重なものを渡せるはずがない。
急いで謝ろうと口を開いた俺だったが――
「……構いません」
予想外の返答に、開いた口がふさがらなくなってしまった。
「え、今、なんて」
何度か頭の中で彼女の言葉を反芻し、やっと飲み込めた。片言の質問が俺の口から飛び出す。
「構いません。貴方ならきっと、これを正しく使ってくれると信じています」
そう言って、俺に笑いかけるエンデ。
セバスさんも、何も語らないながらに深く頷き、同意を示している。
俺は二人を交互に見渡し、言った。
「本当に、いいんですか」
「ええ。例え私たちが持っていても、使い道もありませんし。それならば、貴方に託すほうがこちらとしても嬉しいです」
彼女の言葉に、決心がついた。俺はメタモナイトを手に取り、スマホをかざす。
「ヘイ、マリス。《学習》してくれ」
『かしこまりました』
そう言うと、今朝と同じようにスマホから光が放たれ、たちまちデータの粒子となってメタモナイトが吸収されてゆく。
そして数秒の沈黙の後。
『ラーニング完了。スキル《生成》を取得しました』
新たな力を、俺は手に入れた――
※
そうして、時は現在へ至る。このスキルが一体どんなものなのか?それを探るため、ひとまず使ってみようという訳だ。
幸い、この庭は広い。少しぐらい派手に立ち回ったとしても問題はなさそうだ。
さぁ、どんとこい!
『何を生成しますか?』
「じゃあまず……剣で」
『かしこまりました』
マリスが言うと、空中に剣のホログラムが投影される。そして間髪入れずに火花が走り、だんだんと実態を形作ってゆき――
「おお……」
俺の手元には、剣が現れた。ずしりとしたその重量感が、本物であることを示している。
俺は何度かそれを振るうと、マリスへ尋ねる。
「これ、必要なくなったらどうするんだ?」
『使用者の手元を離れれば自然に消滅します』
「へぇ……」
俺は言葉通り、剣を地面に置いてみる。すると、
「あ、ホントだ」
数秒と経たないうちに剣は0と1の粒子となって、どこかへ消えてしまった。
「マリス」
『何でしょう』
「これってさ、作るものに制限とかあるの?」
『ありません。ですが推奨もしません』
「何で」
『生成する物質の質量が大きければ大きいほど、バッテリーを著しく消耗するうえ、生成時間もかかります。故に、緊急性を要する戦闘時には推奨できません』
「あーなるほど」
例えば戦車を作ったとすれば、その分バッテリーを食い、相応の生成時間を要する。
だが手元を離れれば消えるという性質から、基本的に使い捨ての運用が主になる。
そうするぐらいなら、次々に武器を生成して手数で勝負したほうがいい、という事だろう。
まぁ、あんまり複雑な物を作っても扱い切れる気はしないから、やることもないとは思うが。
「よし、わかった。なら続きと行こうか」
『かしこまりました』
こうして、俺たちは数時間ほどこのスキルを試すこととなった――
※
「いやぁ、ありがとうございました。こんなにしてもらって……」
「いえ。助けていただいたことへの、ほんの気持ちです」
そして翌日。俺は屋敷の門を背にし、二人に見送られていた。
あの後結局一晩泊めてもらい、手持ちがないと知ると、なんとお金まで渡してくれたのだ。
その総額、日本円にして約3万円。節約すれば当分、生活に困ることはなさそうだ。
正直ここまで手厚くしてもらうとかなり申し訳ないが、ありがたく受け取ることにした。
「じゃあ、俺はこれで。何から何まで、ありがとうございました」
「こちらこそ。またいずれ、遊びにいらっしゃってください」
「ええ、必ず」
「では、お気をつけて」
「はい!」
そう言って、俺は屋敷を後にする。前を見ると、既に馬車が停められていた。
俺は乗り込むと、窓の外から二人を見て強く手を振った――
屋敷の庭。俺はスマホを手に持ち、よし、と意気込む。
それを椅子に座って見守る、エンデとセバスさん。俺は二人に頷き、言った。
「ヘイ、マリス。《生成》を発動」
『かしこまりました。《生成》を発動します』
《生成》。そう名付けられたこのスキル。俺がこれを手に入れた経緯は、数分前に遡る――
※
『学習しますか?』
「え?」
あの石――メタモナイトを解析し終わった直後のこと。彼女は俺に尋ねてきた。
俺は返す。「してどうなるんだ」と。
彼女は応えた。『おそらく、武器の生成が可能になります』と。
俺は少し悩んだ。帯刀が当たり前のこの世界でこれから先生きてゆくためには、確かに武器は必要だ。
しかし《学習》モードは、あの時の一度限りとはいえ、見た感じ対象を――《火球》なら火球そのものをデータ化して取り込む必要がある。
人様の所有物にそんなことをしてもいいのか?そんなブレーキが働く。
俺は恐る恐る、尋ねた。
「あの……すいません。図々しいとは承知の上なんですけれど……」
「なんでしょう?」
「よろしければこの石、貰えませんか?」
瞬間、場の空気が静まり返る。
マズった――流石に失礼が過ぎたか……いきなり現れたどこの馬の骨とも知れぬ男に、こんな貴重なものを渡せるはずがない。
急いで謝ろうと口を開いた俺だったが――
「……構いません」
予想外の返答に、開いた口がふさがらなくなってしまった。
「え、今、なんて」
何度か頭の中で彼女の言葉を反芻し、やっと飲み込めた。片言の質問が俺の口から飛び出す。
「構いません。貴方ならきっと、これを正しく使ってくれると信じています」
そう言って、俺に笑いかけるエンデ。
セバスさんも、何も語らないながらに深く頷き、同意を示している。
俺は二人を交互に見渡し、言った。
「本当に、いいんですか」
「ええ。例え私たちが持っていても、使い道もありませんし。それならば、貴方に託すほうがこちらとしても嬉しいです」
彼女の言葉に、決心がついた。俺はメタモナイトを手に取り、スマホをかざす。
「ヘイ、マリス。《学習》してくれ」
『かしこまりました』
そう言うと、今朝と同じようにスマホから光が放たれ、たちまちデータの粒子となってメタモナイトが吸収されてゆく。
そして数秒の沈黙の後。
『ラーニング完了。スキル《生成》を取得しました』
新たな力を、俺は手に入れた――
※
そうして、時は現在へ至る。このスキルが一体どんなものなのか?それを探るため、ひとまず使ってみようという訳だ。
幸い、この庭は広い。少しぐらい派手に立ち回ったとしても問題はなさそうだ。
さぁ、どんとこい!
『何を生成しますか?』
「じゃあまず……剣で」
『かしこまりました』
マリスが言うと、空中に剣のホログラムが投影される。そして間髪入れずに火花が走り、だんだんと実態を形作ってゆき――
「おお……」
俺の手元には、剣が現れた。ずしりとしたその重量感が、本物であることを示している。
俺は何度かそれを振るうと、マリスへ尋ねる。
「これ、必要なくなったらどうするんだ?」
『使用者の手元を離れれば自然に消滅します』
「へぇ……」
俺は言葉通り、剣を地面に置いてみる。すると、
「あ、ホントだ」
数秒と経たないうちに剣は0と1の粒子となって、どこかへ消えてしまった。
「マリス」
『何でしょう』
「これってさ、作るものに制限とかあるの?」
『ありません。ですが推奨もしません』
「何で」
『生成する物質の質量が大きければ大きいほど、バッテリーを著しく消耗するうえ、生成時間もかかります。故に、緊急性を要する戦闘時には推奨できません』
「あーなるほど」
例えば戦車を作ったとすれば、その分バッテリーを食い、相応の生成時間を要する。
だが手元を離れれば消えるという性質から、基本的に使い捨ての運用が主になる。
そうするぐらいなら、次々に武器を生成して手数で勝負したほうがいい、という事だろう。
まぁ、あんまり複雑な物を作っても扱い切れる気はしないから、やることもないとは思うが。
「よし、わかった。なら続きと行こうか」
『かしこまりました』
こうして、俺たちは数時間ほどこのスキルを試すこととなった――
※
「いやぁ、ありがとうございました。こんなにしてもらって……」
「いえ。助けていただいたことへの、ほんの気持ちです」
そして翌日。俺は屋敷の門を背にし、二人に見送られていた。
あの後結局一晩泊めてもらい、手持ちがないと知ると、なんとお金まで渡してくれたのだ。
その総額、日本円にして約3万円。節約すれば当分、生活に困ることはなさそうだ。
正直ここまで手厚くしてもらうとかなり申し訳ないが、ありがたく受け取ることにした。
「じゃあ、俺はこれで。何から何まで、ありがとうございました」
「こちらこそ。またいずれ、遊びにいらっしゃってください」
「ええ、必ず」
「では、お気をつけて」
「はい!」
そう言って、俺は屋敷を後にする。前を見ると、既に馬車が停められていた。
俺は乗り込むと、窓の外から二人を見て強く手を振った――
13
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる