「男の奴隷は必要ない」と捨てられた俺が、伝説の勇者になった件 ~俺たちの名は、エヴォリュート・ソル~

さぼてん

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異形なる魔獣・ブラードG!

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崖の上。月の光を背に腕を組み立つ、一人の男――ルナがいた。

「……」
彼はまるで何かを待つかのように、じっと崖下に広がる荒野を見つめていた。

「情報によると、この辺りのようですが……」
「何にもいませんね……」
そんな場所に現れた、男女二人組。一人は鎧に身を包んだ細身で紫髪の男。もう一人は法衣のような服装をした茶髪の少女だった。

「あの、ユウキさん」
少女が不満げに呟く。
「はい?」
男――ユウキがなんの疑問も持たない様子でそれに答えるも、彼はなんと――
「私の後ろに隠れるの、やめてくれませんか?」
腰が引けた様子で、震えながら彼女の背後をついて来ていたのだ。
「だって、怖いんですよぉ!」
「もう、情けない人っ!」
「そう言わないでくださいよ、ミズキさーん!」
少女――ミズキは歩く速度を速め、彼を突き放す。彼は慌てて追いかけた、その瞬間。

ズズン!

地の底から響く振動が、二人を襲った。彼らは辺りを見渡し、警戒する。
すると――

「ギシャアアア――ッ!」
叫びとともに、巨大な影が現れた。顎をガチガチと鳴らすその顔は、間違いなくブラードのもの――しかし、その容姿は大幅に違う。
ムカデのような上半身はあたかも首のように左右に揺れ動き、交互に二人を見据えている。
その下から生えた巨大な下半身は二つに分けられ、上部は巨大なカマキリ、下部は亀のような姿をしていた。
まさしく『異形』というに相応しいその姿は、二人の恐怖を煽り立てるのに十分だった。
その名を呼ぶのなら、ブラード『Gギガンテス』。
もはやムカデの怪物とは言えないそれは、巨大な鎌の片方を振り下ろし、大地に突き立てる。

「なっ、何あれ!」
「あんなモンスター、見たことも聞いたこともありませんよ!?」
「とにかく、応戦するしか!」

そう言ってミズキは空に手をかざす。すると、光の粒子が手元に集まり、メイス状の武装が現れる。彼女はさっと戦闘態勢を取り、モンスターを睨みつける。
が。

「ひいぃぃぃ……っ」
ユウキは岩陰にうずくまり、がたがたと震えていたのだ。

「ちょっと、ユウキさんっ!……ああもう、仕方ないか!」
そんな彼に呆れながらも、一人向かってゆくミズキ。

「ふん……人間ごときにどうこうできるとは思えんが」
そんな様子を崖の上より見つめながらつぶやくルナ。
「まぁ、奴らがどうなろうと俺には関係ない」
そうして彼は再び、何かを待ち始めた――



「ロックインパクトっ!」
ミズキは振り下ろされる鎌めがけ、詠唱とともに巨大な岩を纏わせたメイスを振るう。
得物同士はぶつかり合い火花を散らすと、彼女の足元の地面がへこむ。
「シャアッ!」
一撃目を防がれたブラードは間髪入れずに口から液体を噴出。
「くっ!」
横へ転がって回避するミズキ。
「嘘……!」
彼女は驚愕する。先ほどまで自分がいた場所は溶解し、大穴を空けていたのだ。
ブラードは次々に溶解毒を吐き出し、執拗に彼女を狙う。

「うわわわわ……」
そんな戦いの様子を岩陰から見つめているユウキ。
行かなくちゃ。行かなくちゃ。彼の思いとは裏腹に、その足は進まない。
そしてついに――

「きゃあっ!」
彼女は、追い詰められてしまっていた。背後には崖。正面には怪物。まさに絶体絶命。

「……」
そんな様子を、ただ静観するルナ。

「うう……っ!」
「ミズキさぁーんっ!」
死神の鎌が、ミズキめがけて振り下ろされた。彼女は目を閉じ、顔を背ける。
もはやこれまでなのか――最悪の想像が、脳裏をよぎった。
その瞬間だった!







「トアァァーッ!」

雄々しき叫びとともに、彼方から迫りくる赤い火が一つ。
それは――

「ふん。来たか……ソル」

希望の輝きだった――!
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