「男の奴隷は必要ない」と捨てられた俺が、伝説の勇者になった件 ~俺たちの名は、エヴォリュート・ソル~

さぼてん

文字の大きさ
20 / 29

共闘、二人の勇者

しおりを挟む
「タァッ!」
掛け声とともに先行したのはソル。駆け出した彼は真正面からブラードへと突っ込んでゆく。
振り下ろされた鎌を両手でしかと受け止めると、渾身の握力でそれを握りしめる。
「ドァ!」
相手の腕がことを確認したのち、ルナがすぐさま跳躍。空中で1度回転し、音もなく上半身と下半身との付け根の上に立つ。
ブラードはまとわりつく羽虫を叩き落とすかの如く上半身を伸ばし、顎をがちんと閉じる。
しかしそこにルナの姿はない。
「ふっ……こっちだ」
ブラードの眼がぎょろりと動く。視線の先には、いつの間にやら空中へと避難していた彼がいた。
魔獣は上半身を伸ばしそれを追う。
「どうしたどうした?」
ルナは誘うように体の周囲を飛び回り続け、ついには――
「ギ……ギギ……」
際限なく伸ばし続けた上半身が、全身に絡みついてしまった。
「お得意の戦法を喰らった感想はどうだ?……そうか、不満か」
威嚇するブラードをよそに、ルナは視線を地上へ向ける。
「ソル!」
(おっしゃ!)
《うむ!》
合図の声で手を鎌から離し、3度バク転。両の拳を打ち合わせ、右手に炎を纏わせる。
そして再び前方へ飛び出し、腰を大きくひねって振りかぶる。
(バアァァ――ニングッ!ナアァァックル!)
叫びとともに放たれたアッパーカットが、腹部へと直撃。その巨体が地を離れ、空高く打ち上がった!

「ドァッ」
空中に待機していたルナが頭頂部の装飾に手をかざす。その手に光が集まり、次第に形を作ってゆく。

フォンッ!
輝く満月を背にした彼の手元に風切り音を鳴らして現れたのは、巨大な半月状の刃。しかしそれは光の剣ではなく、実体を持った鋼鉄の剣だった。

「高熱が効かないのなら、質量で切り裂くのみ!」

「ドアアッ!」
彼は剣を構え、空を舞う。そしてブラードの周囲を飛び回りつつ、その体を切り裂いてゆく。
「タアッ!」
それを見ていたソルは全速力で空へ飛び、直進。すれ違いざまにアイコンタクトをかわした二人は、互いに頷き――

《ゆくぞ、ルナ!》
空中で急停止したソルが両腕を掲げ、待機。
「いつでも来い」
対するルナはそこへ下降。
「タアァ――ッ……」
彼の両足をしっかりと握ったソルは上半身を大きく反らし、力を溜める。
そして力を溜め切ったその瞬間。
「タアァーーッ!」
起き上がりこぼしの如く、しかし確かな勢いを乗せ、上体を戻し手を離す。
投げ出されたルナは縦方向に回転しつつ、前方に向かって直進。
その回転は次第に勢いを増してゆき、ついには――
その体は回転する一つの刃――風車のごとき姿――となり、標的に向かって一直線に突き進む!
「シャ、シャアア……」
怯むブラード。しかしその勢いは止まらない。
そして――

「ドアッ!」
一閃。ブラードの巨体は、真っ二つに切り裂かれた!分かたれた体は大爆発を起こし、闇夜を明るく照らす――

「やったぁ!」
戦いの様子をただ見つめるばかりとなっていたミズキが、歓喜の声をあげる。
満月を背に立つ二人の勇者はそれに応え、小さく頷く。
戦いは終わったのだ。



「はぁ……はぁ……これでよかったんだよね、兄さん?」
「ああ……弟よ。くくっ、やはり俺たちに悪事は働けぬようだ」

同じころ。修道院の床に横たわる二人の男の姿があった。彼らはすっかり息を切らしていたが、その顔に疲れた様子はない。むしろ――清々しささえ感じさせる、そんな表情だった。

がははは。がはははは。
けたたましい笑い声が、いつまでも夜の修道院に響き渡っていた――



(ありがとう。ルナ……だっけ?あんたのおかげで助かったぜ)
《君がいてくれれば心強い。これからも一緒に、奴らと戦おう!》
二人はそう言い、ルナに歩み寄る。

「……」
しかし彼は、沈黙したまま動かない。

(何だよ、照れてんのーー)
そんなことを言いながら、ルナに手を差し出すソル。
しかし次の瞬間、信じられないことが起きる。
なんと――!





ピシュインッ!

「グアッ!?」

その手から伸びた光の刃が、ソルの胸を切り裂いたのだ――!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...