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おや……妻の様子がおかしい…… 7
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ミラジェの浮かない表情に気が付いたのか、シャルルは心配そうに眉を顰める。
「ミラジェ? ……どうかしたのか?」
ミラジェはシャルルの表情を見てハッとする。もし、やっぱり結婚は取りやめようなんて、ことになったら、ミラジェの計画が壊れる。
少しの不安要素も許してはいけない。急いで、ごまかす。
「こんな大きな式典に出るのも初めてですし、いきなり主役ですから、緊張しているのでしょう」
優しい微笑みを携えると、シャルルは口元に手を当て、何か考え込んでいる。
「……少し待っていてくれ」
そう言って、シャルルはミラジェの控室を出ていく。
(え……? で、出て行っちゃった⁉︎)
まさか、自分のあまりにもそっけない態度を見て気が変わってしまったのではないか。悪い考えばかりが脳裏を埋めていく。冷や汗が、ミラジェの背中をつうっと伝った。
「悪い、待たせた。」
十分ほど後、ミラジェの控室に戻ってきたシャルルの手には庭で積んだであろう、カップ咲きのバラの花が一輪。
シャルルはドレス姿に着飾ったミラジェの前に跪く。
「私に……くださるのですか?」
ミラジェは何がなんだかわからず、目をパチクリと瞬かせることしかできない。
そんな様子のミラジェを優しい瞳で見上げるシャルル。
「国で有名な、騎士の作法だ。これから行われる婚姻の儀式は型式ばったもので、ちっともロマンがない。だから、ここで君に誓いを立てようと思ってね」
「は、はあ……」
まだ動揺しているミラジェに向かって、シャルルは誓いを立て始める。
「この国では全ての脅威から君を守り、幸せにすることを誓うよ」
シャルルにとってこの誓いは、結婚の誓いではなく、この状況に巻き込んでしまったミラジェを保護者として守ることを誓う儀式だったが、周りのものにはそうは見えない。
アレナはやっと腰を据えて、若奥様と向き合うようになったか、とため息をついた。
まるで物語の一部を切り抜いたような展開だ。
シャルルにまっすぐ見つめられたミラジェの心臓はどきりと大きな音を立てて高鳴った。異性に見つめられた経験なんてミラジェにはない。
ときめいたのは数秒だけ。その後は、追い詰められるような焦燥が後を追うように襲ってくる。
(かっこいい誓いだけれど……形式ばった外見を気にした所作。どこか、外面だけはよかったお父様を彷彿とさせるわ……)
自分にとって有益な貴族たちの前では紳士的だと評判だった父。しかし彼は、家族や、自分にとって不必要な人間には非情で、陰湿な手段も厭わなかった。
父のように、貴族の男というものは一様に同じ気質を持ち合わせているのだろうか。
シャルルという人間が、素敵であればあるほど、父の面影を感じて、怖い。完璧な駒であれと言われているようで、息苦しくなる。
この誓いさえ、将来的にミラジェをなじる材料となるのではないか。
急に思考停止をして、固まったミラジェ。そんな彼女を見たシャルルは自分の行動が客観的にみて、キャラに似合わないことをしたように見えたのだろうと解釈し、顔を真っ赤にした。
「やっぱり……こんなことは私には向かないな」
シャルルは耳まで真っ赤に染めながら照れ臭そうに笑う。
(あ、かわいい)
さっきの儀式めいた立ち振る舞いよりも、あくまで素のままのシャルルからこぼれ落ちる、自然な仕草はシャルル自身の魅力を凝縮したように思える。
先程のキメ顔よりもよっぽど大きな音で胸が高鳴った。こんなかわいい人の意外な可愛さをこれからずっと発見し続けられる生活が待っているのだとしたら、それはなんて楽しいことなのだろう。
(やっぱりこの人はお父様とは違うのかもしれない……)
ミラジェがシャルルのかわいらしさにキュンとした時、シャルルは余計な一言を落とす。
「君のことは私が守るよ」
「……え?」
またもや、違和感がある言葉。
(私は……果たしてこの人に守ってほしかったのだろうか)
寝る場所と、食べ物と切るものと。生活に必要な全てを準備してくれたことに関してはもちろん感謝していた。しかし、守られる、ということがどういうことなのか。今まで自分の命は自分で守り続けてきたミラジェには分からなかった。
守って欲しいとは思えない。
ミラジェはわかりやすく表情を曇らせる。
「……え?」
そんなミラジェを見て、シャルルは先程のキリリとした表情から一転、不安そうな表情を顔に浮かべる。
またミラジェはキュン、とする。
「……旦那様はキリリとした表情よりもそちらのお顔をしていた方が魅力的ですね」
「…………え?」
シャルルは新しく自分の妻になる少女がなにを言っているのか分からず困惑した。
「ミラジェ? ……どうかしたのか?」
ミラジェはシャルルの表情を見てハッとする。もし、やっぱり結婚は取りやめようなんて、ことになったら、ミラジェの計画が壊れる。
少しの不安要素も許してはいけない。急いで、ごまかす。
「こんな大きな式典に出るのも初めてですし、いきなり主役ですから、緊張しているのでしょう」
優しい微笑みを携えると、シャルルは口元に手を当て、何か考え込んでいる。
「……少し待っていてくれ」
そう言って、シャルルはミラジェの控室を出ていく。
(え……? で、出て行っちゃった⁉︎)
まさか、自分のあまりにもそっけない態度を見て気が変わってしまったのではないか。悪い考えばかりが脳裏を埋めていく。冷や汗が、ミラジェの背中をつうっと伝った。
「悪い、待たせた。」
十分ほど後、ミラジェの控室に戻ってきたシャルルの手には庭で積んだであろう、カップ咲きのバラの花が一輪。
シャルルはドレス姿に着飾ったミラジェの前に跪く。
「私に……くださるのですか?」
ミラジェは何がなんだかわからず、目をパチクリと瞬かせることしかできない。
そんな様子のミラジェを優しい瞳で見上げるシャルル。
「国で有名な、騎士の作法だ。これから行われる婚姻の儀式は型式ばったもので、ちっともロマンがない。だから、ここで君に誓いを立てようと思ってね」
「は、はあ……」
まだ動揺しているミラジェに向かって、シャルルは誓いを立て始める。
「この国では全ての脅威から君を守り、幸せにすることを誓うよ」
シャルルにとってこの誓いは、結婚の誓いではなく、この状況に巻き込んでしまったミラジェを保護者として守ることを誓う儀式だったが、周りのものにはそうは見えない。
アレナはやっと腰を据えて、若奥様と向き合うようになったか、とため息をついた。
まるで物語の一部を切り抜いたような展開だ。
シャルルにまっすぐ見つめられたミラジェの心臓はどきりと大きな音を立てて高鳴った。異性に見つめられた経験なんてミラジェにはない。
ときめいたのは数秒だけ。その後は、追い詰められるような焦燥が後を追うように襲ってくる。
(かっこいい誓いだけれど……形式ばった外見を気にした所作。どこか、外面だけはよかったお父様を彷彿とさせるわ……)
自分にとって有益な貴族たちの前では紳士的だと評判だった父。しかし彼は、家族や、自分にとって不必要な人間には非情で、陰湿な手段も厭わなかった。
父のように、貴族の男というものは一様に同じ気質を持ち合わせているのだろうか。
シャルルという人間が、素敵であればあるほど、父の面影を感じて、怖い。完璧な駒であれと言われているようで、息苦しくなる。
この誓いさえ、将来的にミラジェをなじる材料となるのではないか。
急に思考停止をして、固まったミラジェ。そんな彼女を見たシャルルは自分の行動が客観的にみて、キャラに似合わないことをしたように見えたのだろうと解釈し、顔を真っ赤にした。
「やっぱり……こんなことは私には向かないな」
シャルルは耳まで真っ赤に染めながら照れ臭そうに笑う。
(あ、かわいい)
さっきの儀式めいた立ち振る舞いよりも、あくまで素のままのシャルルからこぼれ落ちる、自然な仕草はシャルル自身の魅力を凝縮したように思える。
先程のキメ顔よりもよっぽど大きな音で胸が高鳴った。こんなかわいい人の意外な可愛さをこれからずっと発見し続けられる生活が待っているのだとしたら、それはなんて楽しいことなのだろう。
(やっぱりこの人はお父様とは違うのかもしれない……)
ミラジェがシャルルのかわいらしさにキュンとした時、シャルルは余計な一言を落とす。
「君のことは私が守るよ」
「……え?」
またもや、違和感がある言葉。
(私は……果たしてこの人に守ってほしかったのだろうか)
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守って欲しいとは思えない。
ミラジェはわかりやすく表情を曇らせる。
「……え?」
そんなミラジェを見て、シャルルは先程のキリリとした表情から一転、不安そうな表情を顔に浮かべる。
またミラジェはキュン、とする。
「……旦那様はキリリとした表情よりもそちらのお顔をしていた方が魅力的ですね」
「…………え?」
シャルルは新しく自分の妻になる少女がなにを言っているのか分からず困惑した。
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