氷の公爵と呼ばれた旦那様はただのヘタレですし、妻の私は子猫です

菜っぱ

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私はどうやら妻ではなく猫だったらしい7

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 一方、あれだけ怒ったミラジェの一日も、いつも以上にスムーズに始まろうとしていた。

 ミラジェは今日もスケジュール通り家庭教師を呼び、勉強を始めた。アレナは今日くらいは休んだほうがいいのではないかとしきりに進めたが、休んだらこのイラつきが余計に煮詰まってしまいそうだ。

 今朝のことを忘れるために、脳の容量を国を作る主要貴族のデータベースで埋め尽くして、昇華していく。

(ふうん。なるほど、この家は昨年の不作で資金繰りが苦しいみたいね。そういえば……こちらの御令嬢は婚約破棄をされて新しい婚約者ができたんでしたっけ)

 貴族内の情勢は山の天気のようにコロコロ変わる。
 その全てを把握することが、公爵夫人になったミラジェには求められるのだ。

 もともと、内情を詳しく知る__あけすけに言えば、ゴシップを追うことには慣れている。男爵家にいた頃も、小さな社会ではあったが、男爵家内の人間関係を知り、誰であれば自分を助けてくれるのか、誰の弱みを握ればいいのか、自分が生き残るためには誰を排除すればいいのかを考えながら過ごしていたのでその類の事は得意だ。

 男爵家で暮らしていた頃のミラジェの中のルールでは、ミラジェに危害を加える権利を持っている人間は、姉と義母しかいない。彼女たちはミラジェにとって上司に当たる人間だ。下手に逆らうと、男爵家という社会から追い出されてしまう。

 しかしそれ以外の人間__使用人の中にも、ミラジェに害をなそうとするものがいたのだ。
 きっと、彼、彼女たちにも、平常に生活を送る中では決して消すことができない、ストレスがあったのかもしれない。

 しかしそんな人間を、ミラジェはことごとく排除していた。許さなかったのだ。……とは言っても、体の調子が悪くなってからは、なかなかそれも難しくなってしまったのだが……。

 男爵家の使用人たちはそんなミラジェの存在を恐ろしく思っていた。

(貴族の世界だって、あの男爵家の混沌とそこまで変わらないわ。少し規模を大きくしただけだもの)

 薄汚れた性根の自分にはちょうどいい世界だ。ミラジェは今日の朝のイラつきを消し去るように、資料の海へと潜った。
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