不安になるから穴をあけて

森 うろ子

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午前中で俺の授業は終わりだ。家で作るのも面倒くさいので昼飯だけ食べて帰ろうと食堂に向かっていると、同じく昼飯を食べに来ていた茉莉に会った。茉莉は友人も多いが本人いわく、実家の影響とアルファだから人が寄ってくるだけらしく、それが煩わしくて1人で行動していることも多い。

今日は1人なのか。茉莉の周りに友人たちがいないことを確認すると、よっと軽く手をあげる。茉莉の友人のなかには俺のことを好ましく思ってない奴も多いから、茉莉が囲まれているときは話しかけないようにしている。

俺の挨拶に気づいたのか、オメガの香りに気づいたのか茉莉も俺に気がついて近寄ってきた。

「玲、発情期ヒート終わったばっかなのに食堂なんかきていいのか?てか、お前、午前授業だけだろ?」

なんで俺の授業スケジュール知ってんだ、茉莉は。

「いや、もう発情期ヒート終わったんだから大丈夫だろ。いつまでも気にしてたらきりないって。授業は終わりだけど、自炊面倒くさいから飯だけ食べて帰るんだよ。」

「ふーん。まぁ、確かにもうそんなにフェロモンの匂いしねぇな。」

茉莉が俺の首筋に鼻を近づけて匂いを嗅いでくる。

「…おい、やめろって。それ、普通に嫌だからな。」

首筋を首輪ごと手で覆い、茉莉から距離をとる。こういう茉莉のデリカシーのない行動はどうかと思う。フェロモン嗅がれるのは別にいいけど、体臭とかも普通にあるし、わかんねぇのかよ。

「なんで?可愛い玲が野蛮なアルファに食われないようにチェックしてやってんだろ~。」

「散々食い散らかしてる奴が何言ってんだよ。」

面白そうに揶揄ってくる茉莉にお前が1番危険だと睨んでやれば、意地の悪い笑みを浮かべて楽しそうにしている。

「で、何食うの?あっちの窓際で食べようぜ。」

流れで茉莉と一緒に昼飯を食べることになったらしい。適当に親子丼を選んで先にカツカレーを食べている茉莉の前に座る。

「玲、今日の講義終わったらお前のアパート行くから大人しく家で待ってろよ。」

親子丼を食べ始めた俺に茉莉が言ってくる。

「え?なんで。別にいいけど今日はもうしんどいからやらねぇよ。」

さすがに発情期ヒート開けにまたセックスするのは怠い。てか、もう充分だ。

「バーカ。ピアスのとこ消毒に行ってやるんだよ。お前、消毒とか自分じゃしねぇだろ。」

「え?消毒とかいるのか?俺、他のピアスの穴のとこ何もしなかったけど。」

「ほら!何も知らねぇな、ほんと。今までがラッキーなんだよ。まぁ、今回はちょっと穴を開けた時の衛生面が気になるってのもあるけど…。いいから、家に居ろよ。」

「…はぁ。じゃ、来る前に連絡しろよ。」

別に教えてもらえれば自分で出来そうだが…。そう思ったが余計なことを言うのはやめて特に予定のない俺は茉莉が来ることを了承した。

後は適当に茉莉とダラダラと話し、午後の講義の時間になると「じゃあな」と去っていく茉莉の後ろ姿を見つめ、俺も大人しくアパートへ帰ることにした。
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