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3章
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「そういえば聞きそびれていたけれど、レイリンとあのセナとかいう魔族の関係ってなんなの?」
あれから数日後、魔王城の厨房で昼食を用意している魔王様に元天帝は声をかけた。
リタは街へ用事があるらしく、朝から出かけていた。
鍋で煮ている具材を軽く混ぜてから、魔王様は答えた。
「古い知り合いですよ。彼は街を含めて一層の主をしていますから、仲良くしておいて損はありません」
「またそうやってはぐらかした」
魔王様はそのうちこの話題が挙がることは分かっていたため、予めどう返答するかを考えていた。
元天帝は面白くないようで、魔王様を後ろから抱き締めた。
「今、包丁持っているのが見えませんか?」
「レイリンは刃物の扱いは上手なの?」
「下手かもしれません。うっかり手を滑らせる恐れがあります」
魔王様は微笑みながら、目線をまな板の上の野菜へと落とした。
元天帝は「それは危ない」と呟いて、魔王様から少し距離を取った。
「5000年も昔からの知り合いなんでしょ?レイリンを詳しく知っている人には、嫉妬してしまうよ」
天界にいる時も、勇者として出会っている時も、自分は四六時中そばにいたわけではない。元天帝よりも魔王様を詳しく知る存在は、目の上のたんこぶのようだ。
「これから、よく知っていけば良いでしょう?」
魔王様は、後ろの元天帝を見もせずに答えた。
切った野菜をお皿に盛り付ける。
「そうだね。そのために、まずはセナとの関係を知っておかないと」
魔王様は振り出しに戻ってしまった。言いたくないわけではないが、言ってしまったらもっと厄介になる恐れがある。
それでも彼が望むのならば答えようと、魔王様は思った。
「分かりました。食事の後に話しましょう。もうすぐできますよ」
今日の昼食は、鳥肉のチーズクリーム煮と、付け合わせの葉のものだ。
昼食を終えそうな時に、轟音と共に来客があった。
「レイ!どこにいますか!?」
元天帝は、やはり先に聞くべきだったと後悔した。
魔王様は硬く目を閉じた。その声の主に思い当たる節があるようだった。
「すみません、少し外します」
「待って、私も行く」
「いいえ、待っていてください」
魔王様はどうやら、この来客を元天帝と合わせたくないようだった。だが、そう言われて引き下がるような元天帝ではもちろんない。
「何故?」
わざと機嫌を悪くしたような面持ちで、魔王様に問いかけた。
「話がややこしくなります。まずは落ち着いて」
「ここから匂いがする!」
魔王様が最後まで言い終わる前に、その来客はドアを勢いよく開けて食堂へ侵入してきた。
その姿は、癖毛の長い髪を振り回し、10km走ってきたかのような汗と表情で、端正な顔が台無しになっていた。
元天帝は当然、嫌な物を見る目でその青年を睨み、魔王様は一瞬呆然としたが、すぐにその青年へ笑顔で声をかけた。
「グラン、どうしました?」
「どうしました?ではありません!」
グランと呼ばれた青年が、魔王様へ詰め寄ろうとして元天帝にそれを阻まれた。
「貴方が噂の……セナを問い詰めたら口を割りました。最近、レイがリタ以外の人物を連れていると聞いてから、嫌な予感がしていたんです!」
確かに魔王様は、これまで元天帝と魔界を歩いたことは無かった。それなら、リタが言わずとも元天帝との間柄がバレるのは時間の問題だったかと、開き直った。
「グラン、落ち着いて聞いてください」
「どう落ち着けと言うのですか?」
この取りつく島のないグランに、魔王様は頭を抱えた。
「レイが男を連れて歩いているなんて……」
だがグランの方も同じように頭を抱えて、膝をついて崩れ落ちてしまった。
「何だこいつ」
元天帝の目は冷ややかな物になり、床に倒れ込むグランを見下した。
魔王様は片膝をついて、グランの肩を叩いた。
「良いですか?グランと私の関係が消えたわけではありません。私と別の関係を持った存在が現れただけです。今までと何も変わりませんよ」
諭すように、魔王様はグランの背中を摩り始めた。
グランは捨てられた子犬のような目で魔王様を見つめる。その緋色の目にはくっきりと魔王様が移っている。
元天帝はなんだかデジャヴを感じた。魔王様とリタのような、親子の関係に近いのではないかと思った。
「私は、片思いを……レイを愛し続けても良いのですか?」
その言葉に、元天帝は前言撤回した。
これには魔王様も肝が冷えた。立っている元天帝からの冷気のせいだ。
だが、変わらないと言ってしまった以上、グランを否定する事が出来なくなった。
これでは進路も退路も断たれてしまったと、魔王様は嘆いた。
「ええ、もちろんです。ただ、ランシュエと私の関係はセナに聞いたのですか?」
「聞きました!結婚すると!」
やはりそう伝わっているのかと、魔王様は軽くため息をついた。
「でしたら、言いたいことは分かりますね?今後、邪魔立てだけはしないでください」
魔王様はグランのことをよく知っていた。言うなればこの元天帝と性格は近いとすら思っていた。
「分かりました」
グランは目を閉じて首肯した。
これを見て、魔王様はグランが多少は落ち着いたと思って、立ち上がった。
「来客にはお茶が必要ですね。今淹れてきます」
そう言って、魔王様は厨房の方に下がっていった。
当然、残された2人の相性は最悪だった。
「私は、貴様の存在を許してはいません」
グランは立ち上がり、先程と変わらない言葉遣い、全く異なる口調で元天帝に言い放った。
元天帝は、特に驚いた様子もなく、寧ろ自分と同じタイプであると思った。
「許される必要はない」
グランを見もせずに椅子に掛け、昼食の残りを食べ始めた。
「レイを悲しませるようなことをしたら、私が貴様を消しに行きます」
これまで魔王様と元天帝の間にあったことを知ったら卒倒しそうだと、元天帝は鼻で笑ってしまった。
「返り討ちが希望か?」
「出来るものなら、してみてください」
お互い目を光らせて、一瞬だけ目線が交差した。
魔王様は部屋を出たフリをして、隣の部屋で聞き耳を立てていた。
「やっぱり、相性最悪ですね」
そう呟いて、魔王様はお茶を淹れる準備に取りかかった。
魔王様がお茶を淹れて、丸盆にポットとカップを乗せ、戻ってきた時には、その場の空気は凍りついていた。お茶が冷めてしまうと、魔王様はおかしくなって笑ってしまった。
「グラン、掛けてください。貴方の好きなハーブティーにしましたよ」
魔王様がテーブルにお茶を置けば、グランはそこに掛けてカップに口をつけた。
「レイが淹れてくれるなら、お茶でも毒でも大好きだよ」
グランの言葉を無視して、魔王様は元天帝の前にもカップを置こうとした。
その時
「レイ!グランのせいでとんでも無いことになった!」
バンッと大きな音を立ててドアが開かれた。現れたのはまた別の来客、セナがリタを引き連れて飛び込んできた。
「カップを追加しなければなりませんね」
あれから数日後、魔王城の厨房で昼食を用意している魔王様に元天帝は声をかけた。
リタは街へ用事があるらしく、朝から出かけていた。
鍋で煮ている具材を軽く混ぜてから、魔王様は答えた。
「古い知り合いですよ。彼は街を含めて一層の主をしていますから、仲良くしておいて損はありません」
「またそうやってはぐらかした」
魔王様はそのうちこの話題が挙がることは分かっていたため、予めどう返答するかを考えていた。
元天帝は面白くないようで、魔王様を後ろから抱き締めた。
「今、包丁持っているのが見えませんか?」
「レイリンは刃物の扱いは上手なの?」
「下手かもしれません。うっかり手を滑らせる恐れがあります」
魔王様は微笑みながら、目線をまな板の上の野菜へと落とした。
元天帝は「それは危ない」と呟いて、魔王様から少し距離を取った。
「5000年も昔からの知り合いなんでしょ?レイリンを詳しく知っている人には、嫉妬してしまうよ」
天界にいる時も、勇者として出会っている時も、自分は四六時中そばにいたわけではない。元天帝よりも魔王様を詳しく知る存在は、目の上のたんこぶのようだ。
「これから、よく知っていけば良いでしょう?」
魔王様は、後ろの元天帝を見もせずに答えた。
切った野菜をお皿に盛り付ける。
「そうだね。そのために、まずはセナとの関係を知っておかないと」
魔王様は振り出しに戻ってしまった。言いたくないわけではないが、言ってしまったらもっと厄介になる恐れがある。
それでも彼が望むのならば答えようと、魔王様は思った。
「分かりました。食事の後に話しましょう。もうすぐできますよ」
今日の昼食は、鳥肉のチーズクリーム煮と、付け合わせの葉のものだ。
昼食を終えそうな時に、轟音と共に来客があった。
「レイ!どこにいますか!?」
元天帝は、やはり先に聞くべきだったと後悔した。
魔王様は硬く目を閉じた。その声の主に思い当たる節があるようだった。
「すみません、少し外します」
「待って、私も行く」
「いいえ、待っていてください」
魔王様はどうやら、この来客を元天帝と合わせたくないようだった。だが、そう言われて引き下がるような元天帝ではもちろんない。
「何故?」
わざと機嫌を悪くしたような面持ちで、魔王様に問いかけた。
「話がややこしくなります。まずは落ち着いて」
「ここから匂いがする!」
魔王様が最後まで言い終わる前に、その来客はドアを勢いよく開けて食堂へ侵入してきた。
その姿は、癖毛の長い髪を振り回し、10km走ってきたかのような汗と表情で、端正な顔が台無しになっていた。
元天帝は当然、嫌な物を見る目でその青年を睨み、魔王様は一瞬呆然としたが、すぐにその青年へ笑顔で声をかけた。
「グラン、どうしました?」
「どうしました?ではありません!」
グランと呼ばれた青年が、魔王様へ詰め寄ろうとして元天帝にそれを阻まれた。
「貴方が噂の……セナを問い詰めたら口を割りました。最近、レイがリタ以外の人物を連れていると聞いてから、嫌な予感がしていたんです!」
確かに魔王様は、これまで元天帝と魔界を歩いたことは無かった。それなら、リタが言わずとも元天帝との間柄がバレるのは時間の問題だったかと、開き直った。
「グラン、落ち着いて聞いてください」
「どう落ち着けと言うのですか?」
この取りつく島のないグランに、魔王様は頭を抱えた。
「レイが男を連れて歩いているなんて……」
だがグランの方も同じように頭を抱えて、膝をついて崩れ落ちてしまった。
「何だこいつ」
元天帝の目は冷ややかな物になり、床に倒れ込むグランを見下した。
魔王様は片膝をついて、グランの肩を叩いた。
「良いですか?グランと私の関係が消えたわけではありません。私と別の関係を持った存在が現れただけです。今までと何も変わりませんよ」
諭すように、魔王様はグランの背中を摩り始めた。
グランは捨てられた子犬のような目で魔王様を見つめる。その緋色の目にはくっきりと魔王様が移っている。
元天帝はなんだかデジャヴを感じた。魔王様とリタのような、親子の関係に近いのではないかと思った。
「私は、片思いを……レイを愛し続けても良いのですか?」
その言葉に、元天帝は前言撤回した。
これには魔王様も肝が冷えた。立っている元天帝からの冷気のせいだ。
だが、変わらないと言ってしまった以上、グランを否定する事が出来なくなった。
これでは進路も退路も断たれてしまったと、魔王様は嘆いた。
「ええ、もちろんです。ただ、ランシュエと私の関係はセナに聞いたのですか?」
「聞きました!結婚すると!」
やはりそう伝わっているのかと、魔王様は軽くため息をついた。
「でしたら、言いたいことは分かりますね?今後、邪魔立てだけはしないでください」
魔王様はグランのことをよく知っていた。言うなればこの元天帝と性格は近いとすら思っていた。
「分かりました」
グランは目を閉じて首肯した。
これを見て、魔王様はグランが多少は落ち着いたと思って、立ち上がった。
「来客にはお茶が必要ですね。今淹れてきます」
そう言って、魔王様は厨房の方に下がっていった。
当然、残された2人の相性は最悪だった。
「私は、貴様の存在を許してはいません」
グランは立ち上がり、先程と変わらない言葉遣い、全く異なる口調で元天帝に言い放った。
元天帝は、特に驚いた様子もなく、寧ろ自分と同じタイプであると思った。
「許される必要はない」
グランを見もせずに椅子に掛け、昼食の残りを食べ始めた。
「レイを悲しませるようなことをしたら、私が貴様を消しに行きます」
これまで魔王様と元天帝の間にあったことを知ったら卒倒しそうだと、元天帝は鼻で笑ってしまった。
「返り討ちが希望か?」
「出来るものなら、してみてください」
お互い目を光らせて、一瞬だけ目線が交差した。
魔王様は部屋を出たフリをして、隣の部屋で聞き耳を立てていた。
「やっぱり、相性最悪ですね」
そう呟いて、魔王様はお茶を淹れる準備に取りかかった。
魔王様がお茶を淹れて、丸盆にポットとカップを乗せ、戻ってきた時には、その場の空気は凍りついていた。お茶が冷めてしまうと、魔王様はおかしくなって笑ってしまった。
「グラン、掛けてください。貴方の好きなハーブティーにしましたよ」
魔王様がテーブルにお茶を置けば、グランはそこに掛けてカップに口をつけた。
「レイが淹れてくれるなら、お茶でも毒でも大好きだよ」
グランの言葉を無視して、魔王様は元天帝の前にもカップを置こうとした。
その時
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