魔王様と禁断の恋

妄想計のひと

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3章

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魔王様の長い1日が終わり、そこから深い眠りについてまた1日。

最初リタは、帰ってきてから姿を見せない魔王様を心配していたが、来訪者から説明を受け、寝室から距離を取った。

「リタ、レイとあいつの関係を詳しく知っているか?」

茶室に通され、セナは勢いよくソファに掛けた。
リタは当然、3000年魔王様と元天帝の関係を見守ってきた。そして最近まで彼らにその話はしていなかった。

「それは3000年前から喧嘩仲間という話ですか?」

「いや、それよりも前だ」

それよりも前?と、リタは眉を上げた。まさか、自分と出会ってから元天帝と関わったことはない。ということは、それよりも前ということだろう。

「それなら、私よりもセナ様の方が詳しいのではありせんか?」

「……」

やはり、自分と出会う前に元天帝と会っている。それならば導き出される答えは1つだった。

「レイは神官時代にあいつと付き合っていたのか」

セナは眉を寄せて忌々しそうに吐いた。

「?」

リタの無い表情がピクリと動いた。

「当然だろ。俺の知らない所で出会っているのなら、それは神官時代しか有り得ない」

リタは、魔王様が元神官だと、当然のように言うセナに驚きを隠しきれなかった。

だが有り得ない話ではないはずだった。
自分も魔王様についてそこまで詳しくない事に、僅かに衝撃を受けた。

「それより、この事をグランに言ったか?」

「いいえ、セナ様にしか言っていません」

セナは「そうか」と呟いて項垂れた。

「まぁ、レイが直接言うか……誰も言わないかだな……」

2人で話を続け、少し経った時に茶室の扉が開かれた。

眉間に皺を寄せた魔王様と、少し笑みを浮かべている元天帝だった。

「すみません、色々話していたら、その……時間が経ちました」

なんと言って良いか分からず、魔王様ははぐらかす他なかった。

セナの向かいに魔王様が座り、元天帝はその後ろで立った。
元天帝はセナに冷たい目線を投げ、すぐに興味を失ったかのように魔王様へ視線を戻した。

「セナは知っていたとは思いますが、リタには話していませんでしたので、この機会に少し話しておきますね」

魔王様はそう前置きをしてから、自分が元神官であり、その時代に既に元天帝と知り合っており、訳あって魔界へ追放された話を簡単にした。

リタは特に驚きもせず「そうでしたか」とだけ反応した。

「それなら、昔からお互い心内では好きだったということ?」

「そう、なりますかね?」

と気恥ずかしそうに、魔王様は後ろの存在に確認しようと振り返って上を見上げた。

「そうだね」

元天帝は同意を求められたので、笑顔でそれに応えた。

「まぁ、そういう事なら俺はもう何も言わないけれど。レイ、グランにはちゃんと説明してくれよ。最近ただでさえ妙な噂が流れているんだ」

セナは不機嫌そうに魔王様を見据えた。
魔王様は考えるように首を傾げて訊いた。

「どのような噂ですか?」

「魔王様が天帝に喧嘩を売って、そのうち殴り込みに行くってさ」

「何ですかそれ……」

全く身に覚えがない、そう言いたかったが天界で確かにナンタラードに向かって、また戦いに来ると言った覚えがある。
捉えようによらず、これは宣戦布告だった。

だが、あの場にいたのは神官とサイと自分達だけだ。誰がそのような噂を流すと言うのだろうか。

「それを聞いて前回のこともあってか、グランもレイに付き添うつもりで落ち着かないみたいだし、街ではお祭り騒ぎだと思って暴れようとしている連中もいるんだ」

これはどうした事かと、魔王様は頭を抱えた。

前回のこととは、3000年前に魔王様が敗れた時のことを言っているのだろうか。
ナンタラードとサイの事も解決していない所に、こんな話が降ってくるなんて。

「いっそ、ナンタラードを倒してレイリンが天帝をやったら?」

「どの口が言っていますか?」

魔王様は右手を振り上げて後ろの元天帝へと殴りかかった。「おっと」と声を上げて、当然笑顔で避けた。

そんなやりとりを無視してセナは続けた。

「レイ、気をつけてくれ。多分その噂を流しているのは天界を襲って欲しい誰かだ。理由はいろいろあるだろうが、レイを利用しようとしているように感じる」

黒幕がいると言うのか?魔王様は避けた元天帝を睨みつけた。

「私ではないよ。今回は誓える」

両手を軽く挙げて、元天帝は首を左右に振った。
魔王様は軽くため息をついて、ソファに座り直した。

現状、魔王様にナンタラードを襲わせたいと思っている人で、1番に思い浮かぶのはサイだった。彼なら魔王様がナンタラードに啖呵を切った事を知っている。様子もおかしかった事を踏まえると辻褄が合う。

そしてサイが魔界に入ったのならば、魔王様と元天帝が一緒にいる所を見られる可能性もある。

だが、本当にそうだろうか?

魔王様は1番怪しい人物に向かって訊くことにした。

「ランシュエはどう思いますか?」

「そうだね……。逆に考えても良いかもしれない。ナンタラードが戦いたくてレイリンの噂を流しているとか」

ナンタラードが?確かに自分に恨みを持っている様子だったと魔王様は思い出した。これは何れどこかで精算する必要があると感じた。

「とにかく、レイに天界を襲う意思があったとしても1人で行くだろ?街のごろつき達は出来るだけ抑えようとするが、長く保つかは分からない。何か良い対処法が出来たら言ってくれ」

セナは手をひらひらと振って立ち上がると、魔王様とリタに順番に視線をやり、茶室から出て行った。

「また嫌な予感がしますね。リタはどう思いましたか?」

リタは、魔王様が元神官であった衝撃が頭から離れず、あまり考えずに話を聞いていた。
何よりその話を自分は知らなかった。
魔術の話といい、リタは魔王様について知らないことが多すぎた。

「リタ?」

そんなリタを不思議そうに魔王様は覗き込んだ。

「私は……。魔王様に恨みのある犯行なら、もっと良い機会がたくさんあったように感じます。今回は、どちらかというと天界をターゲットにしている気がします」

リタは顔には出さずに焦りながら、早口で言葉を出した。魔王様のことを知らない自分が、何の意見を出せるというのか。

だが、そのリタの疎外感を魔王様は敏感に感じ取った。魔王様は立ち上がり、リタの頭に右手を乗せた。

「リタ、心配をかけましたね。食事にしましょう。私も一緒に厨房に立ちます」

魔王様は微笑んでから、元天帝に「貴方は待っていてください」と声をかけてリタと一緒に茶室を後にした。

残された元天帝は面白くなさそうにソファに掛け、それでも2人に時間をあげようと、ゆっくり瞼を閉じた。
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