魔王様と禁断の恋

妄想計のひと

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4章

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2人が魔王城まで戻ると、何やら騒がしい集団が広間に集まり騒いでいた。

その集団は幾度となく魔王城に姿を現してきた、元天帝狂信者集団と反天界軍の2グループだった。

「陛下、お変わりありませんか?」

「レイ、大丈夫?」

リタとグランは魔王様を心配していたようで、グランは直ぐに駆け寄り、リタも表情がいつもより焦っているように見えた。

魔王様は優しく微笑み掛け、グランの頭を右手で撫で付けた。

「はい。何も問題ありませんが……」

それよりもこの集団が気になって仕方がなかった。

魔王様に気づくと、声を上げたのは反天界軍だった。元天帝狂信者集団は、元天帝に気づくと膝をついて頭を垂れた。

「あの雲は以前落ちた天雷と同じだった!天界は私たちとの約束を守る気などなかったんだ!」

「それを、ここに言いに来てどうするんですか?」

魔王様は、何故こんなにも自分が都合の良い存在になってしまったのかと、頭を抱えてしまった。
彼らと関わると碌な事がない。

「それは、魔王様が天界へ攻め入ると聞いて」

「なあ?」と反天界軍の人たちはお互いを見遣っている。

誰だ、彼らにまでこの噂を流したのは。
ジークサイスか?と、魔王様は心の中で舌打ちをした。

だが魔王様が思うよりも、反天界軍と元天帝狂信者集団は睨み合うが仲が良かった。お互いに情報を共有していた。

「たった今、彼らが騒ぎながら入って来まして、丁度説明するところでした」

リタがサイを自分の前に立たせ、術を解いた。

当然、反天界軍は見知った顔である。

「今回、天雷を落とそうとしたのはこの人間です。何か言いたければこちらへどうぞ」

反天界軍はざわざわと騒ぎ始め、信じられないといった表情を浮かべている。

「人間に天雷が起こせるわけがないだろう!」

彼らが信じないのも当然だった。
リタは証拠は無いが、ありのままを話すしかない。

「では、今回の天雷が天界を狙った物だと知っても、同じ事が言えますか?」

それを聞いて、流石の反天界軍は言葉に詰まった様子だった。

「そんな突拍子もない事、信じられるか!」

「適当を言うな!」

リタも次第に面倒になってきていた。だがそこで、サイが口を開いた。

「彼女の言っていることは本当だ。私が神官から借りた力で天界を滅ぼそうとした。だが、シュエイシカ様に止められてしまったようだ」

チラリとサイは元天帝を見た。

元天帝の目には魔王様しか映っていない。その瞳に自分が映る事はない。そう実感させられ、目を伏せてしまった。

反天界軍は、天雷を起こしたのが人間だと信じたくはなかったが、サイがリーダーであった立場を考えると、それ以上は何も言えなかった。

だが、元天帝狂信者集団がそこで口を挟んだ。

「あの天雷は正に天帝のものだ!」

「あれほどの力がこの人間に扱えるとは思えない」

彼らは元天帝がやったと信じて疑わない様子だった。

この場を収める方法が、魔王様も思い付かなかった。頭に手を当てて、深く嘆息を吐いてから、元天帝を見た。

「何とかしてください」

そう嘆くことしかできない。

元天帝は「ふむ」と考えてから、サイをその瞳に映した。
その視線に気付き、サイの橙色が輝いた。

元天帝はゆっくりとサイに近づいて隣に立ち、その尊大な態度を全面に出して宣った。

「サイには、私の力を一時的に貸したに過ぎないが、それを扱える程の能力がある。人間で唯一と言っても良い。彼がいれば天界も手を出さないだろう。サイ、今後は私の代わりに彼らを導いてくれるよね?」

元天帝はそう命令形で言うと、サイの方を向いて微笑み、その頬に優しく触れた。

彼らとは元天帝狂信者集団の事だろうか、そう魔王様が思った直後の元天帝の行動に、開いた口が塞がらなかった。

サイも同様に驚きを隠しきれなかったが、魔王様の顔色が青くなるのとは逆に、サイの顔色は元天帝が触れたところから赤く染まっていった。

「シュエイシカ様……はい、私がシュエイシカ様の素晴らしさを世に広めます」

サイは恍惚とした面持ちで答え、元天帝が触れて来たその手に自分の手を重ねた。

リタは「なんて扱い易いんだ」と、自分がわざわざ術を使う必要があったのか疑ってしまった。

「こんな浮気性よりも、私はレイを大切にします!」

グランが魔王様に駆け寄り、元天帝とサイの行動が見えないように立ちはだかった。

「グラン、ありがとうございます」

これはグランなりの配慮であるという事は、魔王様にも理解できた。
目を閉じて魔王様は感謝を述べた。

サイは元天帝に向けていた視線を、元天帝狂信者集団に向けて言葉を放った。

「同志達よ、今後は私と共に活動しよう。シュエイシカ様の武勲を語り、美しいお姿を残し、知的な考えを広め、後世に残していこう!」

演説でもしているかのような物言いに、なるほど、このようにして反天界軍は出来たのだと、魔王様とリタは感心してしまった。
元天帝狂信者集団は、まんざらでも無いようで、垂れていた頭を上げて感嘆の声を上げている。

「早速、私は取り掛かります!」

などど元天帝に言い、サイは元天帝狂信者集団を引き連れて魔王城を去っていった。

残された反天界軍は、居心地が悪そうにお互いを見遣っている。
今後、この2つの集団が合併し、また天界に反旗を翻すようなことがなければ良いと、巻き込まれ体質な魔王様はため息をついた。

「あなた方は早くここを去ってください」

リタが声をかけると、反天界軍も魔王城から去っていき、やっと4人だけの静かな空間となった。

魔王様は軽く息を吐き、先ほどの元天帝の行動を思い出して眉間に皺がよった。自分が元天帝に声を掛けての行動なのだから、責めるわけにもいかない。

グランで遮られている元天帝を、盗み見るように、首を少し傾けた。

「………」

黄金の目と、しっかり合わさってしまった。

気まずさを感じ、とにかく切り替えようとリタに声をかけた。

「リタ、遅いですが昼食にしましょう。何だかとても疲れました」

そう言って、広間を後にしようとした時、この魔王城にまた招かれざる客達がやって来た。

「さっきの空の爆発は、魔王様の挙式が始まった合図か⁉︎」

天雷の処理を爆発と勘違いした魔族の一団だった。

「今はそのような気分ではありません!」

入って来た魔族を睨みつけ、魔王様は拳の風圧で追い出した。
誰も入ってこないように結界も張った。

「もう破局したのか?」

と、魔族の一団は外で騒いでいた。
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