【完結】兎のおんがえし‐星間旅行記‐

某棒人間

文字の大きさ
6 / 8

風花の園で 下

しおりを挟む
「おや、そうなんだ」

 少女の方を向いて相槌を打つ。場を繋ぐトーク力がないので、少女の方から話しをしてくれるのは嬉しい。

「お母さん、言ってたの。『たんぽぽは花言葉が素敵だ』って」
「花言葉……へぇ」

 成程。花言葉からたんぽぽを好きになったのね。

「どんな花言葉があるのかな?」

 取り敢えず質問してみると、「うんと……」と少女は暫し逡巡して答えてくれる。

「たんぽぽは『愛の神託』や『誠実』、『幸福』っていう花言葉があるって……」
「へえ……そうなんだ。たんぽぽってそこら中で見かけるけど、そんな綺麗な花ことばがるんだね」

 たんぽぽって確か雑草だったよね? それなのに愛の花言葉があるのか。

「あの、綿毛のたんぽぽに息を吹きかけると、綿毛が飛んでいくから……それで愛の花言葉が多いんだよって。綿毛のたんぽぽで花占いとか昔していたからって……」
「花占い……そうなんだ」

 花占いから『愛の神託』とか『誠実』なんて言葉が生まれたのね。成程。

「うん……でも、花言葉には幸せな花言葉を持っていても、怖い花言葉も持つのもあるって……」
「怖い花言葉?」

 思わず問い返す。少女は少し委縮したようだった。

「四つ葉のクローバー……あれも『幸運』って意味があるけど……他にも『復讐』って意味の花言葉があるって」
「ふ、復讐……」

 怖っ⁉ 四つ葉のクローバーって持っていたら幸せになれるんじゃなかったの⁉ そんな、そんな怖い花言葉が備わっているなんて!

「うん……それで……たんぽぽにも……悲しい花言葉があるんだよって……」
「そうなんだ……」

 ううむ。なかなか幸せな花言葉だけのお花ってないんだろうか。四つ葉のクローバーですら『復讐』って。贈り物で下手な花とか贈ったら、邪推されそう……。

「それで? たんぽぽの悲しい花言葉って……」
「それ、は……」

 少女が口を開きかけた、瞬間。

「あおぃいいいいいいいいいいい!」

 ぎゅむ

「はうわ⁉」

 突然後ろから突進してきた人物に抱きしめられる。衝撃で口から変な声が漏れた。というか、

「っ白兎! いきなり抱き着くな! びっくりしただろうが!」
「えへへへー。だって、蒼依が遅いんだもん! もうそろそろ移動の時間だよ! 早く馬車に戻らないと!」

 振り返ると、白兎がプゥーっと頬を膨らませていた。可愛いだろうけど、そういうのは大人のお姉さま方にやれ! 男の僕にしても意味ないぞ!

「ってそうなの? もう行くのか」

 そういえば何時までに帰って来てねとか御者の人に言われていないし、訊いてもいなかった。いや、まあ夢だもんねぇ。

「そっか……じゃあごめんね、僕等はそろそろ行くね」
「あ……うん。私も戻るから……」

 いきなりの白兎の登場に呆気にとられたのか。少女は驚いた表情のままこくこくと頷く。
 ……うん。まあいきなり男が抱き着いて来るのを見たら、驚くわな。

「それじゃあね」
「バイバ~イ!」

 僕と白兎が少女に手を振れば、

「うん……さよなら……」

 少女もおずおずと手を振り返してくれる。
 は~っと息を吐いて来た道を帰る。なんか白兎の登場で感動が薄れたような……?
 などと考えていたら、白兎が付いて来ていないことに気付く。

「白兎?」

 振り返れば、じっとこちらに背を向けて、少女の方を見つめる白兎の姿が。
 んん? どうかした?

「白兎? どうかした?」
「ん⁉ ん~ん、なんでもなーい」

 声をかければ、こちらへと急ぎ駆け寄る白兎。

「さー、戻ろう戻ろう!」
「う、うん……そうだね」

 さっきまで少女の方を向いて佇んでいたと思えば、今度はぐいぐいと僕の背を押して馬車へと急がせて来る。どうしたんだ?

「……――」
「ん?」

 白兎が何か言ったような気がして、再び振り返る。

「ん?」

 キョトンとした表情の白兎。んん? 気のせいかな?

「さっき何か言った?」
「ん~? 何も言ってないよ~それより!」

 ぷぅっと頬を膨らませる白兎。

「兎は寂しいと死んじゃうんだからね! 俺を放っておかないでよね!」
「兎って……君確かに白兎って名前に兎は言っているけど、兎じゃないでしょうに……」
「いいからいいから! 行くの!」

 グイグイと背中を押して急かしてくる。ううむ、なんだろう? 気のせいだったのかな?
 首を傾げる僕。うーん、確かに聞こえた気がしたんだけどなあ。
 『ごめんね』と、白兎がいった気がしたんだけども……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...