同級生は殺人鬼っっ!?

たけむら

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3同級生は殺人鬼!?

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「……瀬戸波君ってさ、どうすんの? 進路」
「……え?」

 昼休み。重たい梅雨の気配にボーっと弁当を口に運んでいた瀬戸波千春は、隣から聞こえた声で我に返った。
 『はすっぱ』とか『クール』という形容が似合う冷めた声と、ぶっきらぼうで少し投げやりな感じがする喋り方。

「だからさ、進路。普通に大学、行くの?」

 そんな声の主は、千春の左隣。三年三組の教室の一番窓際の席に両肘をついて紙パックのジュースを弄んでいた彼女――栗山葉菜が、ちらりとピンクの眼鏡端で千春を見た。

「……あ、うん。多分……そう、かも」

 千春は、少し困った顔で頭を掻いた。
 栗山葉菜――真っ直ぐな黒のロングヘアーと長い睫が映える白い肌。周りより大人びた美貌と高身長が相まって、ややとっつきにくい印象のお洒落系眼鏡女子。
 確か一年の時も同じクラスだったけれど、互いに社交的では無いだけに晴れてお隣の席に座るようになった今でもほとんど会話の無い関係だった。

「かも、って……決めて無いの?」

 曖昧な返答がお気に召さなかったらしく、少女は眉間に皺を寄せて隣の男子を睨みつける。

「あ、うん。でも、えっと……なんで?」

 急に? 俺に? 俺なんかに? と言う思いのこもった瞬きと同時、ふいに声に出すつもりの無かった疑問が口をついてしまった。すると彼女は、ちらりと教室の中へと視線を走らせて。

「……別に」 と呟いて窓の外を向いてしまった。
「……あ、ごめん……」

 多分きっと悪く無いけどうまく返事できなくて申し訳ございませんと誤魔化し笑いを浮かべていると、栗山葉菜さんは、すうっと黒板の方を向いて。

「……ううん、別に。ただ、あなたって変わってるから、卒業したらどうすんのかなって思ったんだ」
「え? 俺が?」

 まさにちょっと変わっていると思っていた少女の、意外な言葉。

「そ。なんか変じゃん、瀬戸波君って」

 これが私の感想だから、君のは聞いて無いから。そんな感じに言葉をぽいっと放った彼女が、気だるげに肩を向けてくる。

「何て言うか、暗いってわけじゃないじゃん? 普通に女子とも喋ってるし」
「……多分、妹が、いるから」

 良く出来た妹がいるから、そのおかげ。女子に対してビビったりはしないだけ。

「なのになんか、周りに無関心っていうか」
「……そうかな?」

 自分としては普通にしているつもりだけど。

「うん。友達とか見たことないし」
「……まあ、それは」

 それは君も同じだけど。

「はっきりいって、友達を作ろうとしてないよね」
「……作る……って」

 どうやって? と首を傾げた千春を見て、栗山葉菜は少し笑った。

「そういうとこ。なんかおかしいんだよね、瀬戸波君って。知らないでしょ、実は。色んな事」
「……そうかな?」
「そ。一年の時も、身体測定とか運動能力テストとか。知らなかったでしょ、やり方」

 シュルシュルとシャーペンをいじりながら覗き込んで来た怪しい瞳に、千春は『はは』と濁しながら。

「……まあ、そんなには……知らなかったけど」
「……やっぱりだ……」

 ぽそりと呟いた栗山葉菜は何度か猛烈に頷いた後、周りの様子を窺うようにしながらそぅっと上半身を隣の男子の方へと寄せて来て。

「……もしかして、CIAとか?」
「……え?」

 と千春が瞬きをする間に、眼鏡の奥の彼女の瞳はキラキラと輝き始め。

「某国スパイの潜入ミッション? それともまさかテロリスト? リンチピン理論とか……逆に証人保護プログラムって可能性も? 反ワシントン的な密輸に?」
「……え? あ……え……?」

 突然繰り出された矢継ぎ早の質問に頭の処理が追いつかず、千春はひたすらぱちくりと。

 そして、答えを促すように小首を傾げている女子に向かって、『……ええと』と首を振りながら。

「何て言うか……不登校だったから……ずっと――」
「はは~ん……成程成程……」

 途端に彼女は、椅子と机を肘掛けにして窓の方へとふんぞり返り、クールな目元にニヒルな笑みを滲ませて。

連続殺人鬼シリアルキラー、ね。うん」

 と呟いて、眼鏡のフレームをすちゃりとペンで押し上げた。

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