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断罪
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「なるほど、つまりそなたは今回の件に関してあくまでもしらを切るというわけだな」
フェリクスが小さくため息をつく。
「しらを切るもなにもそれが真実……」
言いかけた義母上につかつかと近寄るとフェリクスが突然腕を振り上げた。次の瞬間、小さな注射器が義母上の腕に刺さった。
「……っ?!」
注射針を抜こうとする義母上の手をフェリクスが遮り、中の薬剤を注入する。
「こ、これは一体……?!」
「王家に伝わる特別調合の自白剤だ」
「な……っ自白ざ……ですって……?! っがあ……ぅぐぅっ」
みるみる義母上の顔が青ざめていく。そのうち青さを通り越して真っ白になり、うつろな表情となった。
「スベテ……スベテ……ワタクシガシクンダコトニゴザイマス」
「続けろ」
フェリクスが氷のように冷たい声で言う。義母上は辛うじて椅子には腰掛けているけれどその顔にはまったく生気がない。まるで音を発するだけの人形のようになっている。
「マリアベルガ、オウタイシヒナンテ、ミブンフソウオウモ、ハナハダシイデスモノ。デスカラ、アルバートト、イザベラヲソソノカシテ、マリアベルヲオソワセタノデス」
自白が終わると義母上の顔色が戻ってきた。
「……っはあっ……はあっ……。なんて恐ろしい真似をするのですか、王族ともあろう方がこのような卑劣なしゅだ……!」
「王族であるからこそだ」
フェリクスが毅然とした態度で言い放つ。
「王国を治める者として、時には非道な手段を使ってでも真実を明らかにする義務が私にはある。……そなたたちのような王国に巣食う癌をあぶり出すためにな」
怒りと不快感を宿したフェリクスの言葉に義母上と父上が青ざめる。
「はなから正直に自白することを期待していたわけではないが……。よもや私がここまでするとは思ってはいなかったという顔だな?」
義母上は黙っている。
「グレース・メイソン! あなたは自身が行った一連の行為、および此度の王太子自らによる詰問への虚偽の答弁、それらすべてがメイソン家の王国への忠義を疑われる所業であることはもちろん理解しているであろうな?」
「……っ」
「も、申し訳ございません、殿下! すべては私の不行き届きでございます。どうかなにとぞご寛大な処分を……!」
何も言わない義母上の代わりに父上がそう言って土下座する。
「メイソン侯爵、私は言ったはずだ。今後一切エマに近づかない、手出しをしないようにと。もし再度エマの身が危険にさらされた場合には二度目はないと」
「そこをなにとぞ……」
「ここにメイソン家の侯爵としての位をはく奪することを宣言する」
「なっ……?!」
父上が大きく目を見開く。まさかここまでの厳しい処分を受けるとは夢にも思っていなかった様子だ。
「い、いくら王太子様といえどそのような勝手は……!」
義母上が叫ぶがフェリクスは動じない。
「すでに国王の許可は得てある」
フェリクスの言葉に父上が慌てて私を見る。
「マ、マリアベル! お前からも殿下へなんとか言ってくれ!」
……父上の必死の顔を見ても私の感情は動かない。
「……侯爵であれば侯爵らしく、ご自身のふるまいに見合った処分を相応の態度でお受けになるべきかと思います」
私は冷ややかに言った。
「な、何を言うのだマリアベル! お前は肉親である私を見捨てると言うのか?! ここまで育ててやった恩を忘れたのか!」
「私がお父様を見捨てるよりも先に私を見捨てたのはお父様のほうですわ」
私は父に向ってそう言い放った。金のために私をアルバートのような男の元へ平気で嫁がせようとした父。
「……メイソン、話は以上だ。今日を持ってこれまで侯爵家として与えられてきたすべての特権をはく奪する。また今回の不祥事によりこれまで執行猶予としていた重罪人ユリア・メイソンもすぐに引き渡すように」
フェリクスの冷たい声だけが広間に響いた。
父上も母上も真っ青な顔をしてうなだれている。
フェリクスが小さくため息をつく。
「しらを切るもなにもそれが真実……」
言いかけた義母上につかつかと近寄るとフェリクスが突然腕を振り上げた。次の瞬間、小さな注射器が義母上の腕に刺さった。
「……っ?!」
注射針を抜こうとする義母上の手をフェリクスが遮り、中の薬剤を注入する。
「こ、これは一体……?!」
「王家に伝わる特別調合の自白剤だ」
「な……っ自白ざ……ですって……?! っがあ……ぅぐぅっ」
みるみる義母上の顔が青ざめていく。そのうち青さを通り越して真っ白になり、うつろな表情となった。
「スベテ……スベテ……ワタクシガシクンダコトニゴザイマス」
「続けろ」
フェリクスが氷のように冷たい声で言う。義母上は辛うじて椅子には腰掛けているけれどその顔にはまったく生気がない。まるで音を発するだけの人形のようになっている。
「マリアベルガ、オウタイシヒナンテ、ミブンフソウオウモ、ハナハダシイデスモノ。デスカラ、アルバートト、イザベラヲソソノカシテ、マリアベルヲオソワセタノデス」
自白が終わると義母上の顔色が戻ってきた。
「……っはあっ……はあっ……。なんて恐ろしい真似をするのですか、王族ともあろう方がこのような卑劣なしゅだ……!」
「王族であるからこそだ」
フェリクスが毅然とした態度で言い放つ。
「王国を治める者として、時には非道な手段を使ってでも真実を明らかにする義務が私にはある。……そなたたちのような王国に巣食う癌をあぶり出すためにな」
怒りと不快感を宿したフェリクスの言葉に義母上と父上が青ざめる。
「はなから正直に自白することを期待していたわけではないが……。よもや私がここまでするとは思ってはいなかったという顔だな?」
義母上は黙っている。
「グレース・メイソン! あなたは自身が行った一連の行為、および此度の王太子自らによる詰問への虚偽の答弁、それらすべてがメイソン家の王国への忠義を疑われる所業であることはもちろん理解しているであろうな?」
「……っ」
「も、申し訳ございません、殿下! すべては私の不行き届きでございます。どうかなにとぞご寛大な処分を……!」
何も言わない義母上の代わりに父上がそう言って土下座する。
「メイソン侯爵、私は言ったはずだ。今後一切エマに近づかない、手出しをしないようにと。もし再度エマの身が危険にさらされた場合には二度目はないと」
「そこをなにとぞ……」
「ここにメイソン家の侯爵としての位をはく奪することを宣言する」
「なっ……?!」
父上が大きく目を見開く。まさかここまでの厳しい処分を受けるとは夢にも思っていなかった様子だ。
「い、いくら王太子様といえどそのような勝手は……!」
義母上が叫ぶがフェリクスは動じない。
「すでに国王の許可は得てある」
フェリクスの言葉に父上が慌てて私を見る。
「マ、マリアベル! お前からも殿下へなんとか言ってくれ!」
……父上の必死の顔を見ても私の感情は動かない。
「……侯爵であれば侯爵らしく、ご自身のふるまいに見合った処分を相応の態度でお受けになるべきかと思います」
私は冷ややかに言った。
「な、何を言うのだマリアベル! お前は肉親である私を見捨てると言うのか?! ここまで育ててやった恩を忘れたのか!」
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「……メイソン、話は以上だ。今日を持ってこれまで侯爵家として与えられてきたすべての特権をはく奪する。また今回の不祥事によりこれまで執行猶予としていた重罪人ユリア・メイソンもすぐに引き渡すように」
フェリクスの冷たい声だけが広間に響いた。
父上も母上も真っ青な顔をしてうなだれている。
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