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日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-
第625話 『北緯41度53分38秒東経143度15分45秒にて北条海軍と北方探検艦隊の邂逅』(1576/9/26)
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天正五年九月一日(1576/9/26)
3年前の天正二年二月に樺太島を発見した第2回北方探険隊は、北海道北端から沿岸を南下、東進して歯舞群島、色丹・国後・択捉へと北上した。
その後さらに千島列島を北上し、カムチャッカを発見したのだが、当初は島だと考えていた。
それを証明するために西岸を北上し、北端に到着して沿って進んで緯度が下がれば島であったが、西にいったん膨らんだあと東に窪み、その後は東進できなくなったのだ。
島ではなく半島だと解明した。
オホーツク海の北岸から西岸へと南下し、樺太の東岸を南下した後、北海道の北岸を東進しながら南下した。今回は東回りで北海道を一周し、沿岸部を測量しながら松前領の函館へ向かう。
実際にはオホーツク海は冬の間流氷に覆われるので、上記のようにそのままの航路を順序よく進めるものではない。冬の間は閉ざされるのだ。
4月に入ってから夏にかけて北上し、夏が終わり秋になって南下する、という表現が正しいだろう。
2年前は千島列島からオホーツク海東岸を北上した後に南下した。
去年は樺太からオホーツク海西岸を北上後に南下、そして今年は千島列島を経てカムチャッカ半島の東岸を北上、南下した。
航海をするにあたって、現在地を正確に測定することは重要課題のひとつである。
そのためには正確な時計が必要なのだが、小佐々領では5年前の元亀元年(1570)に試作機が製作されていた。
その当時は1日のズレが5分程度あったために、おおよその場所はわかるものの、正確とはいいがたかった。
次に壱型と呼ばれる時計が製作されたのが3年前の天正二年(1573)である。
誤差は一ヶ月に70秒で、その後も弐型、参型と改良がなされた。現在では、1日に1/14秒の誤差にまで抑えられるようになっていた。
これで正確な地図が作れる上に安全な航海ができる。小佐々海軍は順次その時計を導入し、探険と測量に役立てていたのだ。
■襟裳岬
「緯度と経度、間違いないか?」
「は。複数で測定し、誤った測定にならぬよう、気をつけております」
「現在、北緯41度53分38秒……東経143度15分45秒」
「よし」
北は極寒と氷に阻まれるといえ、南方と違ってスペインもなければ明もない。純正いわく、ロシア帝国はまだ成立しておらず、前身のロシア・ツァーリ国である。
そのロシア・ツァーリ国が東進するのが、1581年になってからだ。
商人ストロガノフ家が、毛皮貿易のためにコサックの首領イェルマークを雇って、西シベリアへの遠征を行わせたのがその年である。
つまり、まだこの段階ではロシアの勢力圏ではない。それは前回のアムール川沿いの探険でも明らかであった。
「艦橋-見張り」
「はい艦橋」
「前方水平線、船影あり、三隻」
「なに? 船だと? それも三隻?」
北方探検隊司令の伊能三郎右衛門忠孝は、副将の間宮清右衛門森蔵に尋ねた。
双眼鏡では見えにくいが、確かに3隻の船影が確認できる。
発 隊司令 宛 各艦長
メ 水平線 艦影 三 見ユ 敵味方 不明 戦闘配置 メ
忠孝は直ちに全艦に戦闘配備をとらせた。敵となりうる者はいないであろうが、万が一のために準備をさせたのだ。
海軍所属とはいえ探険隊艦艇である。相手が軍艦であれば分が悪い。
しかし幸いな事に、南方探険隊も練習隊も武装はあった。北方探険隊も同様である。もともと軍艦であったものがほとんどなので、兵装は撤去せずにおいてあった。
天正二年に第一回の帰還報告の後整備中の探検隊艦艇であったが、一貫斎の新型砲が完成した事もあり、天正三年の出航前に半年をかけて換装してあったのだ。
「不明艦さらに近づく。数十」
見張りの報告に緊張が高まる。
「艦橋-見張り」
「はい艦橋」
「不明艦マストに、北条の三鱗認ム」
「なにい! ? 北条だとう? あり得ぬ!」
■北条海軍 旗艦艦上
「申し上げます! 前方に艦影あり、その数三!」
「なんだと?」
北条海軍(水軍)の大将梶原備前守景宗は、副将の清水太郎左衛門尉康英をみる。
旗艦をはじめとした10隻の艦隊である。伊豆長浜より試験航海と探険のため、房総半島を回り、北上して蝦夷地まで行く航海の途中であった。
北条海軍にとっては未知の海域であるため、北上するたびに水先案内人を雇い、港によって補給をしながらの航海である。
小名浜・関上・湊浜・石巻・気仙沼・大船渡・閉伊・久慈・八戸を経て、最終目的地の蝦夷地に向かう途中の出来事なのだ。
予想外も予想外である。
小佐々の艦艇からは望遠鏡で北条軍の艦影がはっきり確認できていた。北条軍から小佐々軍は、まだ見えない。
「まさかとは思うが……全艦戦闘配置!」
景宗は全艦に戦闘配置を命じたが、念のためである。
スペインからは北にロシア・ツァーリ国、デンマーク・ノルウェー・スウェーデンはあれど、この地に来たり、という話は聞いていない。
徐々に、徐々に両艦隊の間隔が狭まっていく。
「全艦停止!」
景宗は全艦に停止を命じ、砲門を小佐々隊に向けたまま、小舟を向かわせる事にした。すでにマストに小佐々の家紋が入っている事は確認がとれている。
「艦橋-見張り」
「はい艦橋」
「前方の船より小舟、こちらに向かってくる。小舟には三鱗と伝令の旗みゆ」
「なんと! よし、全艦に下命! 攻撃はするな、繰り返す、攻撃はするな」
次回 第626話 『北緯42度条約と日ノ本大同盟会議』
3年前の天正二年二月に樺太島を発見した第2回北方探険隊は、北海道北端から沿岸を南下、東進して歯舞群島、色丹・国後・択捉へと北上した。
その後さらに千島列島を北上し、カムチャッカを発見したのだが、当初は島だと考えていた。
それを証明するために西岸を北上し、北端に到着して沿って進んで緯度が下がれば島であったが、西にいったん膨らんだあと東に窪み、その後は東進できなくなったのだ。
島ではなく半島だと解明した。
オホーツク海の北岸から西岸へと南下し、樺太の東岸を南下した後、北海道の北岸を東進しながら南下した。今回は東回りで北海道を一周し、沿岸部を測量しながら松前領の函館へ向かう。
実際にはオホーツク海は冬の間流氷に覆われるので、上記のようにそのままの航路を順序よく進めるものではない。冬の間は閉ざされるのだ。
4月に入ってから夏にかけて北上し、夏が終わり秋になって南下する、という表現が正しいだろう。
2年前は千島列島からオホーツク海東岸を北上した後に南下した。
去年は樺太からオホーツク海西岸を北上後に南下、そして今年は千島列島を経てカムチャッカ半島の東岸を北上、南下した。
航海をするにあたって、現在地を正確に測定することは重要課題のひとつである。
そのためには正確な時計が必要なのだが、小佐々領では5年前の元亀元年(1570)に試作機が製作されていた。
その当時は1日のズレが5分程度あったために、おおよその場所はわかるものの、正確とはいいがたかった。
次に壱型と呼ばれる時計が製作されたのが3年前の天正二年(1573)である。
誤差は一ヶ月に70秒で、その後も弐型、参型と改良がなされた。現在では、1日に1/14秒の誤差にまで抑えられるようになっていた。
これで正確な地図が作れる上に安全な航海ができる。小佐々海軍は順次その時計を導入し、探険と測量に役立てていたのだ。
■襟裳岬
「緯度と経度、間違いないか?」
「は。複数で測定し、誤った測定にならぬよう、気をつけております」
「現在、北緯41度53分38秒……東経143度15分45秒」
「よし」
北は極寒と氷に阻まれるといえ、南方と違ってスペインもなければ明もない。純正いわく、ロシア帝国はまだ成立しておらず、前身のロシア・ツァーリ国である。
そのロシア・ツァーリ国が東進するのが、1581年になってからだ。
商人ストロガノフ家が、毛皮貿易のためにコサックの首領イェルマークを雇って、西シベリアへの遠征を行わせたのがその年である。
つまり、まだこの段階ではロシアの勢力圏ではない。それは前回のアムール川沿いの探険でも明らかであった。
「艦橋-見張り」
「はい艦橋」
「前方水平線、船影あり、三隻」
「なに? 船だと? それも三隻?」
北方探検隊司令の伊能三郎右衛門忠孝は、副将の間宮清右衛門森蔵に尋ねた。
双眼鏡では見えにくいが、確かに3隻の船影が確認できる。
発 隊司令 宛 各艦長
メ 水平線 艦影 三 見ユ 敵味方 不明 戦闘配置 メ
忠孝は直ちに全艦に戦闘配備をとらせた。敵となりうる者はいないであろうが、万が一のために準備をさせたのだ。
海軍所属とはいえ探険隊艦艇である。相手が軍艦であれば分が悪い。
しかし幸いな事に、南方探険隊も練習隊も武装はあった。北方探険隊も同様である。もともと軍艦であったものがほとんどなので、兵装は撤去せずにおいてあった。
天正二年に第一回の帰還報告の後整備中の探検隊艦艇であったが、一貫斎の新型砲が完成した事もあり、天正三年の出航前に半年をかけて換装してあったのだ。
「不明艦さらに近づく。数十」
見張りの報告に緊張が高まる。
「艦橋-見張り」
「はい艦橋」
「不明艦マストに、北条の三鱗認ム」
「なにい! ? 北条だとう? あり得ぬ!」
■北条海軍 旗艦艦上
「申し上げます! 前方に艦影あり、その数三!」
「なんだと?」
北条海軍(水軍)の大将梶原備前守景宗は、副将の清水太郎左衛門尉康英をみる。
旗艦をはじめとした10隻の艦隊である。伊豆長浜より試験航海と探険のため、房総半島を回り、北上して蝦夷地まで行く航海の途中であった。
北条海軍にとっては未知の海域であるため、北上するたびに水先案内人を雇い、港によって補給をしながらの航海である。
小名浜・関上・湊浜・石巻・気仙沼・大船渡・閉伊・久慈・八戸を経て、最終目的地の蝦夷地に向かう途中の出来事なのだ。
予想外も予想外である。
小佐々の艦艇からは望遠鏡で北条軍の艦影がはっきり確認できていた。北条軍から小佐々軍は、まだ見えない。
「まさかとは思うが……全艦戦闘配置!」
景宗は全艦に戦闘配置を命じたが、念のためである。
スペインからは北にロシア・ツァーリ国、デンマーク・ノルウェー・スウェーデンはあれど、この地に来たり、という話は聞いていない。
徐々に、徐々に両艦隊の間隔が狭まっていく。
「全艦停止!」
景宗は全艦に停止を命じ、砲門を小佐々隊に向けたまま、小舟を向かわせる事にした。すでにマストに小佐々の家紋が入っている事は確認がとれている。
「艦橋-見張り」
「はい艦橋」
「前方の船より小舟、こちらに向かってくる。小舟には三鱗と伝令の旗みゆ」
「なんと! よし、全艦に下命! 攻撃はするな、繰り返す、攻撃はするな」
次回 第626話 『北緯42度条約と日ノ本大同盟会議』
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