『転生したら弱小領主の嫡男でした!!元アラフィフの戦国サバイバル~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁

文字の大きさ
625 / 828
日ノ本未だ一統ならず-北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。-

第624話 『日ノ本大同盟内の経済格差と移住問題』(1576/2/9) 

しおりを挟む
 天正五年一月十日(1576/2/9) 

 永禄四年四月(1561)に、沢森平九郎政忠として転生して15年がたっていた。
  
 その治める版図は北は北海道の北西岸、南は鹿児島県のトカラ列島、東は静岡県の吉原湊(租借地)に、西は五島列島までに及んでいた。

 小佐々の領内は直轄地と服属大名の領地に分かれてはいたが、そのすべてにおいて、純正が行った行政改革や、技術革新の恩恵を受けていたのだ。

 政治形態が違う服属領主の領地でも、他の小佐々に属さない領土に比べればその発展度には雲泥の差があった。




 ■岐阜城

「殿、四面歌で、我らは小佐々に屈するしかないのでございますか?」

 光秀が発言する。

 四面楚歌とは、四方を敵に囲まれているという事を言っているのではない。四方が小佐々領もしくは同盟国の領土のため、領土の拡張ができないという事だ。

 これは、今に始まった事ではない。

 武田との和睦や加賀侵攻の失敗によって、自発的に領土拡張ができなくなってしまったのだ。この状況では経済発展をすすめ、力を蓄えて待つしかないという事である。

 しかし、その経済こそが問題なのであった。

「殿、聞くところによりますと、越後の青苧あおそや上布が畿内にて、以前の半分も売れなくなったようにございます」

「なに?」

 信長は短く答える。

「上杉戦のさなか、荷留津留をした我らは、上杉が青苧の益で潤っている事を知りました。ゆえに長いくさになれば、上杉も苦しむだろうと踏んでいたのです」

 秀吉である。

 純正は上杉戦の前に、領内全域で青苧の栽培を促進していた。さらに各地の職人を集めては、新型の織物機を使った大量生産に成功していたのだ。

 もっとも、現代でいう機械織りではない。人力ではあるが、はるかに進んだ機織り機で、品質を落とすことなく大量生産が可能となった。

 これが何を意味するか?

 朝廷や京都・大阪の上流階級の人々も、同じ値段でも良い物、同じ質で安い物があれば、それを選ぶ。ごく自然の成り行きなのだ。

 青苧を作っても売れない。安くすれば立ちゆかない。

 そうなると生産者は作らなくなり、上杉の経済は疲弊の一途となる。

「さらに、これは以前にも越前と若狭の商人から聞いていたのですが、ここ最近はさらにひどいようで」

「何がひどいのじゃ」

 秀吉は越前の越後屋兵太郎、若狭の組屋源四郎から聞いた話をそのまま信長に伝えた。この二人は純久の商人ネットワークの重要人物ではあるが、当然織田家にも顔が知れていたのだ。

 越前や若狭の商人は、蝦夷地である松前に船を出し、そこで松前商人と取引をして畿内で販売する。

 そこには松前商人のマージンが入るのだが、純正配下の太田和屋は松前・若狭・越前・近江商人を通さずに直接販売しているので、安いに決まっている。

 仮に品質で勝負したとしても、値段と量で敵うはずがないのだ。

 そこでとれる対抗策の一つとしては、小佐々商人の関銭や帆別銭を上げること。もう一つは松前との取引を止めて、仕入れ先を太田和屋にすることである。

 ただし、一つ目の方法は純正にとってあまり面白い事ではない。

 そこで純正は純久からの知らせを聞いた際、太田屋弥次郎へ、畿内においては商人と歩調を合わせるように命じたのであった。ただし、小佐々の領内は別である。

 さすがに肥前の五島と播磨では値段の違いは出てしまうが、それでも平均価格が畿内の半分から三分の二の値段で流通している。
  
 これは領内の事で、畿内の商人にとやかく言われる筋合いはない。

 ところが、である。

 因幡や但馬、播磨の商人が、太田屋から仕入れて畿内で販売をしたものだから、再び価格が崩れ始めていたのだ。

 経済格差は蝦夷地交易や青苧の販売だけではない。
  
 生活に密着した塩・味・醤油・酢などの調味料などを含め酒や焼酎などの嗜好しこう品を含めた全ての品が、小佐々産に押されていたのだ。

 塩などはその良い例である。

 最初は肥前の彼杵そのぎ、わずか二町あまりの塩田で作っていた塩だが、流下式塩田の生産量は、これまでの塩田の製塩量を簡単に凌駕りょうがしたのだ。

 大量生産が可能となれば、簡単に価格の暴落が起きる。
  
 純正はそれが起こらないように調整をしていたが、領土が増え、傘下の大名が増えてくるにつれ、そうもいかなくなってきたのだ。

 各地の大名に収益を得させるために、小佐々の技術の提供を行い、今では一升(1.5kg)九文(@120円で1,080円)だった塩が、六文(720円)まで値が下がっている。

 一事が万事、すべてにおいて小佐々領ではそうなのである。これが織田領にいけば、九文で売れる。需要と供給がそうさせたのだ。

「これは、わが織田領だけではなく、浅井や徳川、それに武田や畠山にも影響があるであろうな」

「然に候。商人は場所を選びませぬ故、高く売れるところ、多く売れるところで商いまする。値を下げてでも十分に利が得られるのであれば、間違いなく値をさげましょう」

 小佐々産の食料品・木材・繊維・鉱業・工業等の大量生産は、蒸気機関の動力によって今後ますます促進されることが予想されるが、それによってもたらされるのは恩恵ばかりではない。

 小佐々以外の国は領土拡張が制限されている。
  
 小佐々以上の品質の物を生産できない他家は、地理的な面も含めて南蛮への輸出は出来ず、国内でも競争に負けて経済が伸び悩んでいくであろう。
 
 その間にも小佐々は北方と南方を開拓していき、領土と海外貿易を拡大していく。
  
 教育・技術開発・軍備拡大・インフラ整備等に投資を行いつつ、じわじわと国力の差が広がっていくのだ。

 
  
  
 あわせて、移住問題があった。

 必要最低限の生活の保障、そのレベルが小佐々領内では上がっているのだ。領内における領民の移動はあまりないのだが、他の同盟国からの移住希望者があとを絶たない。

 西日本の小佐々領内では戦争がなくなり、飢饉ききん対策や生活保護対策がなされているので、流民はほとんどいなくなった。

 そこで外務省の移民管理局は京都に本部を移し、諫早には分局として異国民(国外)管理局を発足させている。京都では、いわゆる流民としてではなく、出稼ぎとして領民を扱った。

 希望者を際限なく受け入れていては、外交問題になるからだ。

 身元を確認し、移住者の目的や理由を詳細に聞く。そのための人員も増員された。生まれ育った土地を離れて暮らそうというのだ。よほどの理由があるのだろう。

 そういった様々な情報をまとめ、外務省として閣僚会議にあげていくのだ。


 

 共存共栄のための日ノ本大同盟であったが、小佐々が先進的すぎるために、くすぶっていた問題が、さらに大きくなろうとしていたのであった。

 次回 第625話 『北条海軍と北方探険艦隊の邂逅かいこう
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

処理中です...