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トラック2:学校の中の自分と家の中の自分は、性格が全く違うことがある
アフタースクール
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「何か腹減ったし、飯でも食い行かねえ?」
学校の放課後、博人が俺にそう誘ってきた。
昨日は部活の日で、今日は休み。
毎週月・水・金の頻度で部活があり、祝日の場合はその前日に部活をすることになっている。
今日は火曜日なので休み。俺も放課後は暇だ。
時刻は十七時過ぎたあたりで、俺もちょうど腹が空き始めてきた頃だった。
「良いけど、治郎系はもう勘弁なー」半ば苦笑気味にそう答えた。
「確かにそうだな。学校帰りにあの量は、俺達には不適切だったよな」博人が項垂れたように下を向き、俺はああ、そうだなと頷いた。
去年の十月、五臓六腑まで腹を空かした俺と博人は、その勢いでエクセル内に構える治郎系のラーメン屋に手を出した。
更に大盛を注文してしまったので、見事に撃沈。
治郎系の壁は、文化部男子にとっては、とても越えられないと痛感した瞬間だった。
「あの量は、完全体育会系向きだな」
「そうだな。玲緒奈みたいな運動好きな男でないと完食できない」
「てかさ、水戸であのレベルだったら、東京の方にある本場の治郎系ってもっと半端ないってことだよな?」
「だろうな」
「東京の学生って、恐ろしいな」博人が眉をひそめる。
「怖気づくとこじゃないさ。俺達だって、今後東京の学生になるかもしれないんだから」俺は博人の肩を掴んで、そう応えた。「東大行ってみっか」
「そんな軽い口調で言う場所じゃないって」ははっと乾いた笑いを見せながら、博人が返事する。
「ま、確かにこんなに音楽ばっか追及してては、東大はシビアかもな」
「俺達まだ高一だぜ。まだ進路考える年頃じゃないよ」博人が肩を竦めて答えた。
博人が俺より1m程度前を歩き、それについていく状況。
俺は何とか、その間隔が広まらないようにキープしていた。
絶対に彼は、あの後俺と紗彩の身に起こったことについて聞き出してくるはず。
「暉信も誘うのか?」俺は何とか平静を装い、ナチュラルに聞いてみた。
「あったりまえだっぺな」後ろからぎろっと睨みつけられた。その上博人から漏れ出た突然の訛りが、より怖さに拍車をかける。
「いや、そんな鋭い顔で応えられても……」俺はただただ後ろにおののくばかりだった。
「昨日あったことについて、洗いざらい話してもらうからな」
「あ、はい」
やっぱりな。
今日俺を飯に誘ったのも、そういうことだよな。
俺はこれから、博人と暉信から多くの尋問にあうわけか。
あれだけ献身的になってくれたのだから、きちんと誠意をもって答えることにしようか。
「じゃ、何処行こうか?」
「おい、あんなに時間あったのに、まだ何も決めてなかったのかよ」
言い出しっぺの博人が真っ先に言った台詞がそれだったので、俺は思わず手の甲で払い、そう突っ込む。
俺と博人と暉信は、三人共に校舎を出た後、近くのコンビニで自転車を止めていた。
「僕、そんな多すぎるの食えないよ」暉信がおずおずと挙手しながら念押しで、そう言った。「あと高すぎるのも無理」
「ああ。結構前にそんなこともあったよな」
そう俺は、一昔前を思い出したかのように言った。
丁度雨季の季節。軽音楽部の新入生たちで、偶々寄ったイタリアン家庭料理の店、Groovy。
イタリアンというとパスタ料理が一般的だが、大抵のパスタは女性向けに作られているところがあり、量が圧倒的に少ない。
けどそんな中、ここ茨城を中心に展開するイタリアンのGroovyは、ボリュームのあるラインナップが多い。
俺以外の皆も、海の幸を具材にした海賊パスタを注文した。
小さい頃は行ったことがなく、高校になって初めて行ってみたのだが、それなりに美味しかった。
パスタ麺よりも、具やホワイトソース、チーズのボリュームが凄く、普通盛でも十分満腹になれる量だった。
ただ、どっちかと言えばファミリー層に的を当てている店なので、学生の俺達にとっては少々敷居が高かった。
「ファミレスはきつい、か」博人がそう独りで呟いた。
「あれは俺達には、まだ早すぎたかもな」当時のことを思い出し、俺は後ろ首を搔きながら言った。
「だな。お互い大学に入った後、どっかで会う機会ができたらまた行こっか」
「浪人生がいたら、そいつの分を奢るってことで」
「おい、不安煽るようなこと言うな」
博人がガキっぽく笑いながら言ってきたので、俺は即座に返す。
「僕は浪人なったとしても助けは要らない。バイトして金稼げば良いだけだから」
「お前、いつになく頼もしいこと言うな」
「いつになくって何だ、よっしー」暉信は俺の返しかたに少し不服なようだ。
「いやいや、素直に褒めただけだよ」
「……まあいい。許してやろう」
僕は寛大だから、と余計な一言を付け足して暉信は肩を竦めた。
「で、何処にすんの?」
「博人お前……」
何か考えていたようで、実は何も考えていなかった奴に対し、俺はため息をついた。
「てかさ、もうあそこしかないっしょ」
「ああ、あそこか。結局はそうなるよな」
「あそこなら僕も、多くても食える!」
"あそこ"だけで成り立つ会話。
三人一致で合ったので、俺達は早速"あそこ"まで自転車でひとっ走りすることにした。
学校の放課後、博人が俺にそう誘ってきた。
昨日は部活の日で、今日は休み。
毎週月・水・金の頻度で部活があり、祝日の場合はその前日に部活をすることになっている。
今日は火曜日なので休み。俺も放課後は暇だ。
時刻は十七時過ぎたあたりで、俺もちょうど腹が空き始めてきた頃だった。
「良いけど、治郎系はもう勘弁なー」半ば苦笑気味にそう答えた。
「確かにそうだな。学校帰りにあの量は、俺達には不適切だったよな」博人が項垂れたように下を向き、俺はああ、そうだなと頷いた。
去年の十月、五臓六腑まで腹を空かした俺と博人は、その勢いでエクセル内に構える治郎系のラーメン屋に手を出した。
更に大盛を注文してしまったので、見事に撃沈。
治郎系の壁は、文化部男子にとっては、とても越えられないと痛感した瞬間だった。
「あの量は、完全体育会系向きだな」
「そうだな。玲緒奈みたいな運動好きな男でないと完食できない」
「てかさ、水戸であのレベルだったら、東京の方にある本場の治郎系ってもっと半端ないってことだよな?」
「だろうな」
「東京の学生って、恐ろしいな」博人が眉をひそめる。
「怖気づくとこじゃないさ。俺達だって、今後東京の学生になるかもしれないんだから」俺は博人の肩を掴んで、そう応えた。「東大行ってみっか」
「そんな軽い口調で言う場所じゃないって」ははっと乾いた笑いを見せながら、博人が返事する。
「ま、確かにこんなに音楽ばっか追及してては、東大はシビアかもな」
「俺達まだ高一だぜ。まだ進路考える年頃じゃないよ」博人が肩を竦めて答えた。
博人が俺より1m程度前を歩き、それについていく状況。
俺は何とか、その間隔が広まらないようにキープしていた。
絶対に彼は、あの後俺と紗彩の身に起こったことについて聞き出してくるはず。
「暉信も誘うのか?」俺は何とか平静を装い、ナチュラルに聞いてみた。
「あったりまえだっぺな」後ろからぎろっと睨みつけられた。その上博人から漏れ出た突然の訛りが、より怖さに拍車をかける。
「いや、そんな鋭い顔で応えられても……」俺はただただ後ろにおののくばかりだった。
「昨日あったことについて、洗いざらい話してもらうからな」
「あ、はい」
やっぱりな。
今日俺を飯に誘ったのも、そういうことだよな。
俺はこれから、博人と暉信から多くの尋問にあうわけか。
あれだけ献身的になってくれたのだから、きちんと誠意をもって答えることにしようか。
「じゃ、何処行こうか?」
「おい、あんなに時間あったのに、まだ何も決めてなかったのかよ」
言い出しっぺの博人が真っ先に言った台詞がそれだったので、俺は思わず手の甲で払い、そう突っ込む。
俺と博人と暉信は、三人共に校舎を出た後、近くのコンビニで自転車を止めていた。
「僕、そんな多すぎるの食えないよ」暉信がおずおずと挙手しながら念押しで、そう言った。「あと高すぎるのも無理」
「ああ。結構前にそんなこともあったよな」
そう俺は、一昔前を思い出したかのように言った。
丁度雨季の季節。軽音楽部の新入生たちで、偶々寄ったイタリアン家庭料理の店、Groovy。
イタリアンというとパスタ料理が一般的だが、大抵のパスタは女性向けに作られているところがあり、量が圧倒的に少ない。
けどそんな中、ここ茨城を中心に展開するイタリアンのGroovyは、ボリュームのあるラインナップが多い。
俺以外の皆も、海の幸を具材にした海賊パスタを注文した。
小さい頃は行ったことがなく、高校になって初めて行ってみたのだが、それなりに美味しかった。
パスタ麺よりも、具やホワイトソース、チーズのボリュームが凄く、普通盛でも十分満腹になれる量だった。
ただ、どっちかと言えばファミリー層に的を当てている店なので、学生の俺達にとっては少々敷居が高かった。
「ファミレスはきつい、か」博人がそう独りで呟いた。
「あれは俺達には、まだ早すぎたかもな」当時のことを思い出し、俺は後ろ首を搔きながら言った。
「だな。お互い大学に入った後、どっかで会う機会ができたらまた行こっか」
「浪人生がいたら、そいつの分を奢るってことで」
「おい、不安煽るようなこと言うな」
博人がガキっぽく笑いながら言ってきたので、俺は即座に返す。
「僕は浪人なったとしても助けは要らない。バイトして金稼げば良いだけだから」
「お前、いつになく頼もしいこと言うな」
「いつになくって何だ、よっしー」暉信は俺の返しかたに少し不服なようだ。
「いやいや、素直に褒めただけだよ」
「……まあいい。許してやろう」
僕は寛大だから、と余計な一言を付け足して暉信は肩を竦めた。
「で、何処にすんの?」
「博人お前……」
何か考えていたようで、実は何も考えていなかった奴に対し、俺はため息をついた。
「てかさ、もうあそこしかないっしょ」
「ああ、あそこか。結局はそうなるよな」
「あそこなら僕も、多くても食える!」
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