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トラック2:学校の中の自分と家の中の自分は、性格が全く違うことがある
おっかなびっくりする親友二人
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「えええ! よっしーに最近そんな事件があったなんて知らなかった!」
「ごめん。まだ二人には教えてなかったからさ…」
「まったくもうだよ。そんなに大事なのもっと早く教えてよね」
手に腰を当てて小言を言っている香奈美に、ひたすら俺はごめんと謝った。
「さあ。メンツは揃ったわけだ。話の続き、聞かせてもらおうじゃないか」
「わかった」
そして俺は、玲緒奈と香奈美の二人にも今俺の抱える問題について教えた。
博人と暉信に教えた時と同じように、紗彩は、俺が現場に駆けつけたことで何とか未遂で済むことができたこと。
だが、とりあえず自殺から一時的に逃れられただけの状態であり、このままでいってもいつ彼女が自殺を試みてもおかしくないこと。
現在、俺の家で一時的に暮らしていること。
紗彩は、できれば復学したいという意思があるが、今の紗彩は、助けた俺に依存している状態であること。
これらを二人に教えた後、俺は頭を下げてこうお願いした。
「頼む。紗彩がまた外に出て笑っていられるようになるため、協力してほしい」
違う学校に通っているので、出来る限りは俺からの援助無く自立する方が良い。
そのため、俺以外とも仲良くする機会を増やしていく。
いきなり会うことはハードルが高いかもしれない。だが、徐々に信頼を深めていけば良い。
ざっくりだけど、何となくそんな方向で行けば良いかなと思った。
「一緒に遊んであげるだけでも良い。とにかく紗彩の友達の輪を、心強い仲間を増やしたい。復学という彼女の夢を叶えるには俺一人だけじゃ、あまりにも弱すぎる」
依然として俺は頭を下げ続けた。
暫く沈黙の間が続いたが、それを切ったのは、
「それが、お前の大事な話なのか」
玲緒奈だった。
「ああ、そうだ」
そう言い、俺は傾けていた頭を戻す。
「何だ。思ったより大したことなかったな」
「え…?」
玲緒奈の感想があまりにも予想外だったので、俺は思わず呆気にとられながら、そう聞き返した。
「ね。学校辞めようと思ってるとかね、そんなこと言い出すのかと思ってた」
香奈美の反応も、良い意味で想定外だった。
「でも最初その紗彩ちゃんって子が、自殺しようとしたってところは、流石に驚いたけどな」
「そりゃそうだよ。でも最初だけ。驚いたのは」
「初っ端の衝撃が強すぎたせいか、あとはもう平然と聞けちゃったよ」
「それ、あたしも同感」
玲緒奈と香奈美がお互いに乾いた笑いを見せ、俺に視線を向ける。
俺は、
「ふ、二人とも、き…協力してくれる…のか? こ…こんな俺に」
と、不器用に言葉を詰まらせながら、おずおずと聞いた。
「当然っしょ。こんな大したことないなんて感想言っておいて、ごめん力になれないって、そんな性根腐った人間になった覚えはない」
「流石だな玲緒奈。感謝する」
「あたしも勿論協力する!」
「かなっちもありがとう。紗彩にとっても、同姓の友達が増えるのは心強い」
「協力しない理由なんて、あたしには見つからないよ。だってあたしは……」
「…どうした?」
若干表情に曇りを見せた香奈美に、怪訝そうに俺は聞いたが、
「ううん、何でもない!」
と、すぐさま笑顔を見せながら応えてきたので、「そうか」とひとまず頷き、気にしないことにした。
「にしても昨日とかさ、芳人上の空でさ、こっちは何があったのかなとか勘繰ってたんだよ」
「ああ、黙っててすまなかったよ」そう俺は頭を搔きながら、謝った。
「いいや、謝んないでほしい。誰でもひとつくらい打ち明けられない悩みとかあったって何ら変じゃない」玲緒奈は両手でボールをいじりながら言った。「むしろたった二日後に、こうやって打ち明けてくれたことに、嬉しい以外何も感情が湧かない」
「玲緒奈…」
「そうそう、れお兄の言う通り! よっしーも悩みに悩んで、あたしたちにも打ち明けてくれたんだよね。ごめん、さっき怒ったようなこと言っちゃって」
「かなっち…」
俺は、つくづく頼もしい親友を持ったと心から思った。
「てことだから! 俺もかなっちもお前がやろうとしていることに全力で加担するからな」
覚悟しとけよと最後に付け足しながら、玲緒奈は俺の肩をがしっと掴んだ。
「あたしも全力で紗彩ちゃんを救いたい。あたしからもお願いする。協力させて」
いつになく、真剣な目力で俺を強く睨む香奈美。その鋭い眼光は、並大抵のものではないと第六感がそう訴えてきた。
献身的になってくれる二人にきちんと応えようと、紗彩を救ってあげようと、俺は今まで以上に本気になった。
「わかった。近いうちに、俺の方から携帯で連絡する」
「了解したよ」
「あいあいさー」
二人とも反応としては好調だ。
そんな風に今日の放課後は、これでお開きになり、お互い別々の方向へと帰っていった。
「ごめん。まだ二人には教えてなかったからさ…」
「まったくもうだよ。そんなに大事なのもっと早く教えてよね」
手に腰を当てて小言を言っている香奈美に、ひたすら俺はごめんと謝った。
「さあ。メンツは揃ったわけだ。話の続き、聞かせてもらおうじゃないか」
「わかった」
そして俺は、玲緒奈と香奈美の二人にも今俺の抱える問題について教えた。
博人と暉信に教えた時と同じように、紗彩は、俺が現場に駆けつけたことで何とか未遂で済むことができたこと。
だが、とりあえず自殺から一時的に逃れられただけの状態であり、このままでいってもいつ彼女が自殺を試みてもおかしくないこと。
現在、俺の家で一時的に暮らしていること。
紗彩は、できれば復学したいという意思があるが、今の紗彩は、助けた俺に依存している状態であること。
これらを二人に教えた後、俺は頭を下げてこうお願いした。
「頼む。紗彩がまた外に出て笑っていられるようになるため、協力してほしい」
違う学校に通っているので、出来る限りは俺からの援助無く自立する方が良い。
そのため、俺以外とも仲良くする機会を増やしていく。
いきなり会うことはハードルが高いかもしれない。だが、徐々に信頼を深めていけば良い。
ざっくりだけど、何となくそんな方向で行けば良いかなと思った。
「一緒に遊んであげるだけでも良い。とにかく紗彩の友達の輪を、心強い仲間を増やしたい。復学という彼女の夢を叶えるには俺一人だけじゃ、あまりにも弱すぎる」
依然として俺は頭を下げ続けた。
暫く沈黙の間が続いたが、それを切ったのは、
「それが、お前の大事な話なのか」
玲緒奈だった。
「ああ、そうだ」
そう言い、俺は傾けていた頭を戻す。
「何だ。思ったより大したことなかったな」
「え…?」
玲緒奈の感想があまりにも予想外だったので、俺は思わず呆気にとられながら、そう聞き返した。
「ね。学校辞めようと思ってるとかね、そんなこと言い出すのかと思ってた」
香奈美の反応も、良い意味で想定外だった。
「でも最初その紗彩ちゃんって子が、自殺しようとしたってところは、流石に驚いたけどな」
「そりゃそうだよ。でも最初だけ。驚いたのは」
「初っ端の衝撃が強すぎたせいか、あとはもう平然と聞けちゃったよ」
「それ、あたしも同感」
玲緒奈と香奈美がお互いに乾いた笑いを見せ、俺に視線を向ける。
俺は、
「ふ、二人とも、き…協力してくれる…のか? こ…こんな俺に」
と、不器用に言葉を詰まらせながら、おずおずと聞いた。
「当然っしょ。こんな大したことないなんて感想言っておいて、ごめん力になれないって、そんな性根腐った人間になった覚えはない」
「流石だな玲緒奈。感謝する」
「あたしも勿論協力する!」
「かなっちもありがとう。紗彩にとっても、同姓の友達が増えるのは心強い」
「協力しない理由なんて、あたしには見つからないよ。だってあたしは……」
「…どうした?」
若干表情に曇りを見せた香奈美に、怪訝そうに俺は聞いたが、
「ううん、何でもない!」
と、すぐさま笑顔を見せながら応えてきたので、「そうか」とひとまず頷き、気にしないことにした。
「にしても昨日とかさ、芳人上の空でさ、こっちは何があったのかなとか勘繰ってたんだよ」
「ああ、黙っててすまなかったよ」そう俺は頭を搔きながら、謝った。
「いいや、謝んないでほしい。誰でもひとつくらい打ち明けられない悩みとかあったって何ら変じゃない」玲緒奈は両手でボールをいじりながら言った。「むしろたった二日後に、こうやって打ち明けてくれたことに、嬉しい以外何も感情が湧かない」
「玲緒奈…」
「そうそう、れお兄の言う通り! よっしーも悩みに悩んで、あたしたちにも打ち明けてくれたんだよね。ごめん、さっき怒ったようなこと言っちゃって」
「かなっち…」
俺は、つくづく頼もしい親友を持ったと心から思った。
「てことだから! 俺もかなっちもお前がやろうとしていることに全力で加担するからな」
覚悟しとけよと最後に付け足しながら、玲緒奈は俺の肩をがしっと掴んだ。
「あたしも全力で紗彩ちゃんを救いたい。あたしからもお願いする。協力させて」
いつになく、真剣な目力で俺を強く睨む香奈美。その鋭い眼光は、並大抵のものではないと第六感がそう訴えてきた。
献身的になってくれる二人にきちんと応えようと、紗彩を救ってあげようと、俺は今まで以上に本気になった。
「わかった。近いうちに、俺の方から携帯で連絡する」
「了解したよ」
「あいあいさー」
二人とも反応としては好調だ。
そんな風に今日の放課後は、これでお開きになり、お互い別々の方向へと帰っていった。
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