勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環

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幕間

とある隣国皇女の推し(前)

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 気が付くと、幼女になっていた。
 何の知識もない目で見ても分かる上質なドレスに、煌びやかな室内。そして、驚くほど可愛すぎる幼女になった自分。

 異世界転生してるやん!!
 と、思わず関西弁で鏡に映った自分を見ながら心の中でツッコんだ。別に関西人ではないけれど。

 幸いにも元の人格と統合するパターンの異世界転生だったから周りにバレることなく馴染むことができた。とりあえずは現状を把握しなければと、メイドに聞いたり、書物を読み漁ってみたりと数日かけて分かったこと。
 どうやら、大好きだった乙女ゲーム『スミレが咲くたび君を想う』略して『スミキミ』の世界ではあるものの、モブキャラですらない隣国の皇女に転生しているということ。

 ゲームに全く関係ない人間に転生するってどういうこと? 神仕事しろ? クソほども役に立たねぇな! ヒロインとまではいかなくても、せめてモブくらいにして欲しかったわ!! と、憤慨してしばらく自暴自棄に過ごしてみて気付いた。

 私が転生したルンザリオ帝国はとても大国で、周囲一帯の支配者と言ってもいいほどの強国である。つまり、スミキミの推しであるセレストが欲しいと私が言えば、簡単に得られるということ。
 最高か? 6歳から推しの育っていく姿を見て愛でられるとか……神GJすぎる!

 私はそもそも乙女ゲームが大好きで色んなソフトに手を出していたのだけれど、スミキミに関してはセレストが好きすぎてセレストルートは何度も繰り返しプレイしたし、ファンディスクは勿論のことグッズだって財布の許す限り入手していた。とにかくセレストを一番に愛している。どんな人間に転生しようがセレストと結ばれてみせるし、こんなにおいしいポジション他に無い。絶対にハッピーエンドのその先、セレストとの人生までも手に入れてやるわ!

 というわけで、セレストのいるヒュリゴ王国を含む、周辺国全てに訪れることにした。
 ルンザリオ帝国では皇子だけでなく皇女にも皇位継承権がある。第一皇女の私は現在継承権第二位。現皇帝である父の弟が第一位だ。積極的に女皇になりたいわけではないけれど、まぁ放棄する気もない。皇婿とするに相応しい方を探しに行くという名目で周遊するのだ。
 そして帰国後、ヒュリゴ王国にセレストへの求婚状を送り、将来セレストを婿に迎えるという形で無事に婚約を結んだ。



 その後は3ヶ月に一度お互いの国に訪れて逢瀬を重ね、とても友好的な関係を築くことができた。しかし、思春期と言える年齢になっても将来のパートナーとしての自覚はしっかり持ってくれているが、恋愛感情はこちらに向いていないと分かる。
 やはり、ヒロインとの関係をきっちりと終わらせないといけないのだろう。となればと私はスミキミの舞台であるヒュリゴ王立貴族学校に留学生として通う手筈を整えるために動き出した。

 入学までの3年という期間、ヒロインと攻略対象達、そして悪役令嬢の状況を報告させるため、私が使える人間をヒュリゴ王国に送っていた。
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