勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環

文字の大きさ
65 / 103
幕間

とある隣国皇女の推し(後)

しおりを挟む
 まずはヒロイン。
 ユウカ・カワード男爵令嬢という名がもうすでにスミキミのデフォルト名ではない。つまりユウカという名前の日本人が転生していると考えていいだろう。
 まぁ、自分だけが転生者だなんて思っていなかったし、他にも私のように主要キャラ以外にいるかもしれない。とにかく気にすべきは、ヒロインが誰ルートに進むか。セレストならば……徹底的に邪魔をする。それだけ。
 ヒロインは今のところゲームに忠実に過ごしている。というかカワード男爵家には何かを興す財力すら無くて動けないだけかもしれない。でももしかすると、ゲーム通りに動きたいという思惑があるのかもしれない。だって、余計なことをしてルートから外れるのなんて馬鹿らしいものね。
 バッドエンドの無いゲームのヒロインに転生したのだから。

 次に転生者ではないかと疑っているのが、悪役令嬢アドリアーナ・スタングロム侯爵令嬢だ。
 ゲームでは侯爵夫人からの虐待を受け、実の両親や姉兄からも、使用人からですらも愛されなかった不遇な令嬢だった。侯爵夫人に歪められた価値観のせいで、どのルートでもヒロインを虐める悪役令嬢になる。
 しかし、今のアドリアーナは違う。侯爵夫人は領地で蟄居させられており、家族仲も良好。ゲームでの姉の嫁ぎ先は知らないけど、少なくとも第二王子では無かったはずだった。そのことについてセレストに聞いてみると、アドリアーナの働きかけがあったようだと言っていた。
 アドリアーナが第二王子の婚約者に姉を推した。そのことが意味するのは、セレストの婚約者になるのを避けたということ。つまり、破滅回避のために動いている。
 でもセレスト狙いでないのなら、手を組むことを考えてもいいのではないかと思う。
 なぜなら、ゲームではセレストの婚約者はアドリアーナで、悪役令嬢だった。そのストーリーを私が捻じ曲げて、私がセレストの婚約者になった。
 悪役令嬢(皇女だけど)は、私になるのかもしれない。でもヒロインが転生者で、ゲームに忠実なら、アドリアーナを悪役に仕立て上げるくらいはするかもしれない。
 一度、アドリアーナと話してみるべきだろう。

 そして、攻略対象者達。
 メインヒーローのセレストは、私の婚約者になったことがゲームと違う点だ。でもゲームと同じように子供の頃にヒロインと出会って初恋をしたという点は変わらないのだろう。スミレが咲くたび、スミレ色の瞳をしたヒロインを想うのだ。そういう素振りがあったことは確認している。

 ウィリアム・ノヴァック公爵令息は、攻略対象の中で最もゲームから遠いキャラになったようだ。
 ゲームでは、剣術なんて嫌いなのに騎士を目指していて、そして在学中に兄が失踪してしまい次期公爵や次期騎士団長という立場にまでなってしまう。
 剣術は嫌いでも才能が無いわけではなく、だけど飛び抜けた才能のあった兄と比べられることにプレッシャーを感じて失踪した兄を恨んでみたり……といった葛藤を抱える心をヒロインに救われて、立派な騎士になっていくというキャラである。
 しかし、もうすでに剣術を辞めている。しかもどうやら失踪するはずの兄とアドリアーナが婚約する予定だということを、公爵夫人が自ら触れ回るほど良好な関係らしい。
 もしヒロインがウィリアムルートを望んだ場合どうなるの? と不思議なほどである。

 ルーカス・フォスター侯爵令息は、ウェッブ商団の次期商団主である。大筋では特にゲームから外れた動きはしていないが、アドリアーナとウィリアムの幼馴染みという一点においてはもう全く違う。
 アドリアーナもウィリアムもルーカスも、ゲームでは入学してから、というかヒロインとの関係が進んでから対立する形で出会うはずであって、幼馴染みとかいう仲良しこよし三人組を形成してしまってはこれまたルーカスルートどうなる? という感じなのだ。
 貴族でありながら平民の暮らしをよくしていき、お互いに良い生活をしていくのを理想としているルーカスは、平民を搾取しながら暮らす多くの貴族をよく思っていない。逆にそういった貴族からウェッブ商団がよく思われていない。
 平民を大事にしたいという理想と、ウェッブ商団をさらに大きくしたいという野望を叶えるために貴族に阿る現実の狭間で揺れるマーカスを受け入れ支えるのがヒロインだ。
 でもなんだかそういうのはもうアドリアーナやウィリアムがクリアしてしまっていそうな気がする。なぜなら両家門は平民を大事にして且つ栄えている古参貴族だから。フォスター侯爵家のような成り上がり貴族がノヴァック公爵家とスタングロム侯爵家との結び付きを持った時点で、他の貴族からウェッブ商団が軽んじられることはないだろう。
 本当に、ルーカスルートどうなるの?

 ジェイデン・シュナイプ伯爵令息は、学校きってのプレイボーイな先輩で、攻略期間が一年しかないため少し攻略が難しい。ジェイデンの卒業パーティーでパートナーになれなければノーマルエンドだ。ハッピーエンドを迎えるためには一年で好感度を上げなければならない。そのためにはまず学力。そして魅力。このステータスは必須である。現実でのステータス値ってどういう判定なのか分からないけれど、学力に関しては入学までに上げておくことは十分に可能だろうし、ヒロインはやっていると思う。カワード男爵家にどこまで教育に掛けられるお金があるのかと言えばほぼ無いのだろうが。
 ジェイデンに関しては、ゲームから外れている所は見受けられなかったけれど、アドリアーナの家庭教師にシュナイプ伯爵夫人がなっているから何らかの相違点はあるでしょう。
 ゲームであればアドリアーナは威張り散らすだけで頭は悪く、やることなす事爪が甘いのだ。それがシュナイプ伯爵夫人が家庭教師を務めて、ノヴァック公爵夫人が義娘だと茶会へ連れて行き、すでに社交界で才女と知られ始めているとか。


 全体的に見て……アドリアーナ、お前やってんな!? って感じよね。まぁメインヒーローの婚約者ポジを奪い取っている私には言われたくないでしょうけれど。

 さぁ、入学まであと少し。
 準備は怠らないようにしなくっちゃ。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...