50 / 103
第二部(アレク編)
23
しおりを挟む
※sideアレク
「好きだと思う女と結婚しようと努力できるだけでも幸せだと僕は思うがな」
「それは……そうだ。殿下に対してこんな相談をして申し訳なかった」
「いや、お前の信頼を失った訳じゃないと知れたからいいんだ。お前までオーキッド側につくと言ったらどうしようかと思ったよ」
「それはない。そもそもオーキッド殿下が王位を望んでないことは殿下も分かっているだろう?」
「本人はそうだが、実際国王に相応しい資質を持っているのはオーキッドだ。あいつが持っていなくて俺が持っているものなんて、正妃の息子だということと、数ヶ月早く生まれたということくらいさ。臣下達もそれをよく分かってるから第二王子派なんてものがあるんだろ」
「殿下の民を思う気持ちは誰にも負けていない。そして俺はそれが一番大切なことだと思う」
実際、アズール殿下が戴冠されてからの10年ほどを平民として暮らしていたが、子供が増えたのは暮らしが豊かになった証拠だ。平民だったからこそ殿下の治世は良かったのだと身をもって知っている。
もちろんオーキッド殿下であってもいい世になるだろうが、俺個人がアズール殿下の方が好きなのだ。不器用で正直なアズール殿下が。
「……やっぱり俺のために俺の騎士になれ。お前以外は考えられない」
「俺も専属になるとしたらアズール殿下しか考えられないんだが」
「今は恋にうつつを抜かしていると」
「言い方をどうにかしてくれ」
ハハハ、と殿下が笑って、ハァ、とため息をついた。
「来週にある茶会の護衛にはついてくれるんだろ?」
「あぁ、その任は受けている」
「……憂鬱だ。選択肢がフォーサイス公爵令嬢かスタングロム侯爵令嬢だけだぞ。あぁ、俺も恋にうつつを抜かしてみたいものだ」
「フォーサイス公爵令嬢は気さくで付き合いやすい女性だし、スタングロム侯爵令嬢は可愛らしい女性だぞ」
「フォーサイス公爵令嬢はともかく、スタングロム侯爵令嬢を知っているのか?」
「スタングロム侯爵令息に剣の指南をしているんだ。訓練後に夕食をご一緒するから何度か話したことがある」
「おい、まさか結婚したい令嬢って」
「違うぞ。いやスタングロム侯爵令嬢か。あ、いや違うんだ」
「おいおいまさかお前……妹の方か!? セレストやウィリアムと同い年だろうが!」
「誤解するな! 決して幼女に興奮する性質ではない! 彼女が彼女だから好きなだけで、不釣り合いだからこそ悩んでいるんだ!!」
信じられないというのが顔に書いてあるようだ。心底引かれている。そりゃ確かに10歳下の弟と同い年の女の子だと思えば引いてしまう気持ちも分かる。
だけどアニーはただの6歳の女の子じゃないんだよ。つい最近まで妻だったんだ。言えないけど。
「まぁその話は置いておこう。それにしても、その妹が……」
「アドリアーナ嬢だ」
「……アドリアーナ嬢が、セレストの婚約者にならなくてよかったな。つい最近までは候補者筆頭だったらしいんだが」
殿下の話を聞きながら、まさかアニーの前の人生での婚約者は、セレスト殿下だったのだろうかと考える。
「つい最近、帝国から求婚状が届いてな。第一皇女の婿としてセレストを望んでいると」
「それは……すごいな」
「そうだろう? あの帝国からそんな提案があるなんて、有り難いことだ。『第三王子を差し出すだけで友好関係が続くなら安いものだ』と父王がほざいたほどだ。言い方は気に食わないが、間違いない」
「受けるんだろう?」
「断れる訳がない。兄として出来ることといえば、第一皇女殿下が良い子であることを願うくらいだな」
「そうだな……」
「ま、俺の婚約者も良い子であることを願ってくれ。おそらくはフォーサイス公爵令嬢になる」
「スタングロム侯爵令嬢は?」
「最近侯爵夫人を領地に戻しただろう。その件でチェンバレン公爵とスタングロム侯爵が一度やり合ってる。まぁ関係が悪くなるほどではないと聞いたんだが……敢えてスタングロム侯爵令嬢にする理由もない。フォーサイス公爵令嬢の方が後ろ盾を得るには堅いと判断した」
「そうか。フォーサイス公爵令嬢も美人で賢い女性だ。話してみると分かるさ」
「お前言うならそうなんだろう」
まぁ、そうだな。俺のような見てくれは悪いし、女性の扱いも分からない男と普通に接してくれる時点で、胆力があって優しいということだ。
少しでも母上の要素を受け継いでいれば、ここまで人相が悪くならずに済んだだろうに。母上にそっくりのウィリアムが少し羨ましい。
「好きだと思う女と結婚しようと努力できるだけでも幸せだと僕は思うがな」
「それは……そうだ。殿下に対してこんな相談をして申し訳なかった」
「いや、お前の信頼を失った訳じゃないと知れたからいいんだ。お前までオーキッド側につくと言ったらどうしようかと思ったよ」
「それはない。そもそもオーキッド殿下が王位を望んでないことは殿下も分かっているだろう?」
「本人はそうだが、実際国王に相応しい資質を持っているのはオーキッドだ。あいつが持っていなくて俺が持っているものなんて、正妃の息子だということと、数ヶ月早く生まれたということくらいさ。臣下達もそれをよく分かってるから第二王子派なんてものがあるんだろ」
「殿下の民を思う気持ちは誰にも負けていない。そして俺はそれが一番大切なことだと思う」
実際、アズール殿下が戴冠されてからの10年ほどを平民として暮らしていたが、子供が増えたのは暮らしが豊かになった証拠だ。平民だったからこそ殿下の治世は良かったのだと身をもって知っている。
もちろんオーキッド殿下であってもいい世になるだろうが、俺個人がアズール殿下の方が好きなのだ。不器用で正直なアズール殿下が。
「……やっぱり俺のために俺の騎士になれ。お前以外は考えられない」
「俺も専属になるとしたらアズール殿下しか考えられないんだが」
「今は恋にうつつを抜かしていると」
「言い方をどうにかしてくれ」
ハハハ、と殿下が笑って、ハァ、とため息をついた。
「来週にある茶会の護衛にはついてくれるんだろ?」
「あぁ、その任は受けている」
「……憂鬱だ。選択肢がフォーサイス公爵令嬢かスタングロム侯爵令嬢だけだぞ。あぁ、俺も恋にうつつを抜かしてみたいものだ」
「フォーサイス公爵令嬢は気さくで付き合いやすい女性だし、スタングロム侯爵令嬢は可愛らしい女性だぞ」
「フォーサイス公爵令嬢はともかく、スタングロム侯爵令嬢を知っているのか?」
「スタングロム侯爵令息に剣の指南をしているんだ。訓練後に夕食をご一緒するから何度か話したことがある」
「おい、まさか結婚したい令嬢って」
「違うぞ。いやスタングロム侯爵令嬢か。あ、いや違うんだ」
「おいおいまさかお前……妹の方か!? セレストやウィリアムと同い年だろうが!」
「誤解するな! 決して幼女に興奮する性質ではない! 彼女が彼女だから好きなだけで、不釣り合いだからこそ悩んでいるんだ!!」
信じられないというのが顔に書いてあるようだ。心底引かれている。そりゃ確かに10歳下の弟と同い年の女の子だと思えば引いてしまう気持ちも分かる。
だけどアニーはただの6歳の女の子じゃないんだよ。つい最近まで妻だったんだ。言えないけど。
「まぁその話は置いておこう。それにしても、その妹が……」
「アドリアーナ嬢だ」
「……アドリアーナ嬢が、セレストの婚約者にならなくてよかったな。つい最近までは候補者筆頭だったらしいんだが」
殿下の話を聞きながら、まさかアニーの前の人生での婚約者は、セレスト殿下だったのだろうかと考える。
「つい最近、帝国から求婚状が届いてな。第一皇女の婿としてセレストを望んでいると」
「それは……すごいな」
「そうだろう? あの帝国からそんな提案があるなんて、有り難いことだ。『第三王子を差し出すだけで友好関係が続くなら安いものだ』と父王がほざいたほどだ。言い方は気に食わないが、間違いない」
「受けるんだろう?」
「断れる訳がない。兄として出来ることといえば、第一皇女殿下が良い子であることを願うくらいだな」
「そうだな……」
「ま、俺の婚約者も良い子であることを願ってくれ。おそらくはフォーサイス公爵令嬢になる」
「スタングロム侯爵令嬢は?」
「最近侯爵夫人を領地に戻しただろう。その件でチェンバレン公爵とスタングロム侯爵が一度やり合ってる。まぁ関係が悪くなるほどではないと聞いたんだが……敢えてスタングロム侯爵令嬢にする理由もない。フォーサイス公爵令嬢の方が後ろ盾を得るには堅いと判断した」
「そうか。フォーサイス公爵令嬢も美人で賢い女性だ。話してみると分かるさ」
「お前言うならそうなんだろう」
まぁ、そうだな。俺のような見てくれは悪いし、女性の扱いも分からない男と普通に接してくれる時点で、胆力があって優しいということだ。
少しでも母上の要素を受け継いでいれば、ここまで人相が悪くならずに済んだだろうに。母上にそっくりのウィリアムが少し羨ましい。
721
あなたにおすすめの小説
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!
藤野ひま
ファンタジー
わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。
初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!
夫や、かの女性は王城でお元気かしら?
わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!
〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕
わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが
水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。
王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。
数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。
記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。
リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが……
◆表紙はGirly Drop様からお借りしました
◇小説家になろうにも掲載しています
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる