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幕間
とある王子様の願望
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リディアと初めて話した日。そのとても美しい外見に、貴族令嬢らしからぬ話し方はとても意外で新鮮で、王子妃という立場にも何の興味もなさそうな彼女とはパートナーとして上手くやっていけそうだなと感じた。
そんな打算的な考えで婚約者はリディアにしようと決めて、茶会の席から離れようと、弟のオーキッドに声を掛けた。オーキッドが話していたスタングロム侯爵令嬢との別れを惜しんでいるのを待ちながら、僕もリディアに表向きだけでもそういう表現をするべきかなと思いリディアを見ると、とても切なそうな表情をしていることに気が付いた。
オーキッドとスタングロム侯爵令嬢が良い雰囲気になっているのを見ているアレキサンダーを見ているリディアを見ている僕。『パートナーとして上手くやっていけそうだな』? 自分の洞察力がまだまだであることを実感した。
アレキサンダーを騎士にする僕が、アレキサンダーを想っている女性を妃にする。
それは、なんていう地獄?
アレキサンダーはリディアの想いに絶対気付かないし、いつか別の女性と結ばれる。そんなアレキサンダーをリディアは見続けなければならない。その状況に突き落とすのが、僕。
えー、嫌だな。と率直に思う。
女性に可哀想な思いをさせることは紳士として避けたい。だけど、王太子になる身としてはフォーサイス家の後ろ盾は欲しい。オーキッドはもうスタングロム侯爵令嬢に決めてしまっただろうし。他に良い候補がいない。
どうしたもんかなと思いながらも、どうしようもないと分かっている。どうか、できるだけ早くその想いに見切りをつけてくれますようにと願うばかりである。
「それじゃあね」
そう言って立ち去るオーキッドの背中から浮き足立っている様子が漏れ出ている。
「僕も恋にうつつを抜かしたいものだ」
僕の口からつい漏れ出た言葉は、羨ましさ全開である。オーキッドもアレキサンダーも、好きになれる子がいていいよなぁ。と心の底から、本当に、唸るほど羨ましい。
リディアのウェディングドレス姿を見ながら、そんなことを思った日のことを思い出していた。
「アズール……何か言ってくれないとさすがの私でも不安になる。変か?」
「まさか! あまりの美しさに呆気に取られてしまったんだ。ごめんよ。世界中のどの花嫁より君が綺麗だ。僕は君のように美しくて優しくて面白い女性と結婚できて幸せ者だよ」
「面白いは余計だ。それで面白いというのはどのへんが?」
「うん、そういうところかな」
「そういうところ……」
出会って4年。
今日、僕らは結婚する。
「これまで、王子妃教育も頑張ってくれて、面倒ばかりしかない僕の婚約者として立派に務めてくれて、ありがとう。これからも大変な思いをさせると思うけど、僕は君を大切にすると誓うよ」
4年という月日を積み重ねて、僕が恋にうつつを抜かすということは終ぞ無かったけれど、リディアを愛おしく思うようになった。結婚すると決めた人をちゃんと愛せたことはとても嬉しく思っている。
「これから、王太子としてより大変で責任ある立場になる君のそばで、私は常に君の一番の味方でいることを誓うよ」
これ以上ない言葉だと思った。
「ありがとう。とりあえず、今日一日頑張ろう」
「そうだな。間違いない」
苦笑するリディアに手を差し出して、立たせる。まだまだ友人のような距離感の僕ら。
いつか、アレキサンダーのことを吹っ切って欲しいという願いは、いつの日か僕のことを想ってくれないかなという願望に変わっていた。
アレキサンダーへ向ける目が僕に向いたら、どんなに気持ちが良いだろう。その日が来るのが楽しみでたまらない。
そんな打算的な考えで婚約者はリディアにしようと決めて、茶会の席から離れようと、弟のオーキッドに声を掛けた。オーキッドが話していたスタングロム侯爵令嬢との別れを惜しんでいるのを待ちながら、僕もリディアに表向きだけでもそういう表現をするべきかなと思いリディアを見ると、とても切なそうな表情をしていることに気が付いた。
オーキッドとスタングロム侯爵令嬢が良い雰囲気になっているのを見ているアレキサンダーを見ているリディアを見ている僕。『パートナーとして上手くやっていけそうだな』? 自分の洞察力がまだまだであることを実感した。
アレキサンダーを騎士にする僕が、アレキサンダーを想っている女性を妃にする。
それは、なんていう地獄?
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えー、嫌だな。と率直に思う。
女性に可哀想な思いをさせることは紳士として避けたい。だけど、王太子になる身としてはフォーサイス家の後ろ盾は欲しい。オーキッドはもうスタングロム侯爵令嬢に決めてしまっただろうし。他に良い候補がいない。
どうしたもんかなと思いながらも、どうしようもないと分かっている。どうか、できるだけ早くその想いに見切りをつけてくれますようにと願うばかりである。
「それじゃあね」
そう言って立ち去るオーキッドの背中から浮き足立っている様子が漏れ出ている。
「僕も恋にうつつを抜かしたいものだ」
僕の口からつい漏れ出た言葉は、羨ましさ全開である。オーキッドもアレキサンダーも、好きになれる子がいていいよなぁ。と心の底から、本当に、唸るほど羨ましい。
リディアのウェディングドレス姿を見ながら、そんなことを思った日のことを思い出していた。
「アズール……何か言ってくれないとさすがの私でも不安になる。変か?」
「まさか! あまりの美しさに呆気に取られてしまったんだ。ごめんよ。世界中のどの花嫁より君が綺麗だ。僕は君のように美しくて優しくて面白い女性と結婚できて幸せ者だよ」
「面白いは余計だ。それで面白いというのはどのへんが?」
「うん、そういうところかな」
「そういうところ……」
出会って4年。
今日、僕らは結婚する。
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4年という月日を積み重ねて、僕が恋にうつつを抜かすということは終ぞ無かったけれど、リディアを愛おしく思うようになった。結婚すると決めた人をちゃんと愛せたことはとても嬉しく思っている。
「これから、王太子としてより大変で責任ある立場になる君のそばで、私は常に君の一番の味方でいることを誓うよ」
これ以上ない言葉だと思った。
「ありがとう。とりあえず、今日一日頑張ろう」
「そうだな。間違いない」
苦笑するリディアに手を差し出して、立たせる。まだまだ友人のような距離感の僕ら。
いつか、アレキサンダーのことを吹っ切って欲しいという願いは、いつの日か僕のことを想ってくれないかなという願望に変わっていた。
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