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第三部(貴族学校入学編)
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午後の授業のために食堂で別れ、サラとリリーと語学の教室に向かう。選択した言語によって教室は異なるので我々はおそらく3人と教師だけだろうと思う。
その道すがら、サラを護衛している帝国の騎士様からサラに小さな紙切れが渡された。
「……あぁ、やっぱりね」
サラはそう呟いて、紙切れを私に見せてくれた。それはおそらくユウカ嬢に付けているという影からのもので『対象は教養を選択』とだけ書いてあった。
この場には帝国の騎士様の他に、王国の騎士様とリリーのいるため口に出さなかったのだろう。私は何も言わずに紙切れを返した。
「どうするの?」
「昨日言った通りよ。任せてちょうだい」
サラが不敵に笑う。それはワクワクもしているような笑顔だった。
思った通り、マイナーな言語を選んだのは私達3人だけだった。教師は20代半ばくらいの若い男性で、家名はなく平民なのだという。名前はカンニャというらしい。背は高く、痩せていて、綺麗な顔立ちをしている。こんな少数しか受講しない授業の担当でなければ、女生徒からとても人気が出そうなほどの美男だ。
それはさておき、カンニャ先生は他にもあと3つ、私達が知らない言語を教えることができるというので、3年の間にそれらも教えてもらいたいという話をした。
そして特に何も問題なく同じような日々を過ごし、最初の休息日を迎えた。サラが王宮に招待してくれていたので約束の時間に向かい、サラのためにセレスト第三王子殿下が作ったらしい庭に用意された席で茶会となった。騎士様達は少し離れた場所で護衛、リリーや王宮の侍女も呼ばれない限りは会話の聞こえない距離で待機している。
「さて。何から話そうかしら」
「ユウカ嬢に動きはあったの?」
「そうね、まずそこからよね。ウィリアムとルーカスはヒロインのことを少し避けている様子ね。初日のこともあるし、警戒しているみたい。あとはジェイデンにも話しかけにに行っているわ。ジェイデンに高確率で会えるスポットがあってね、そこに昼休みは足繁く通ってるそうよ。まぁジェイデンは来るもの拒まずだから仲良くなるのは簡単だしね」
「ジェイデン様は三年生だし、伯爵令息だというのに一年生の男爵令嬢が親しくするなんて……」
「それでジェイデンと親しい三年生の令嬢たちの間でヒロインが少し反感を買っている状況よ。セレストとは今のところ特に接触はないわね。反対隣の席に座っているから挨拶はしているけれど」
「そう。あの、私が何かするイベントというのは次にいつ起こるのかしら?」
「月末に新入生のダンスパーティーがあるでしょう? その時ね」
「あ……セレスト第三王子殿下とユウカ嬢が踊るのね。それを私が怒って止めさせてしまったような」
朧げに覚えている。なんせ一周目は30年近く前のことなのだ。覚えていることなんてほとんどない。
「身分差はもちろん、ドレスが貧相だとかダンスが下手だとか、ボロクソに言ってたわよ。ゲームではね」
「うん、おそらく現実にも言っていたと思うわ。恥ずかしいことだけれど」
「でも今回はセレストのパートナーは私よ。もしヒロインとセレストが踊ろうとしたら、私が止めるわ」
「えっ、止めるの? エッセンスになってしまうんでしょ?」
「さすがにアドリアーナみたいには止めないわよ。でも踊らせない。そんなの見たら嫉妬で気が狂ってしまうかも」
私は黙って頷いた。そりゃそうだ。だって同担拒否だもの。他の女と踊るなんて許せない。私だってアレクがアレクに気のある他の女と踊るなんてことになったら荒れ狂う自信がある。
「アニーはダンスパーティーのパートナー誰にするの? ウィリアム?」
「そうね、異性のパートナーが必要な時はウィリアムと私で過ごすようにとノヴァック家の皆さんから言われてるのよ」
「じゃあリリーとルーカスかしら?」
「そうなると思うわ。ゲームではヒロインのパートナーって誰になるの?」
「好感度がまだ低いから攻略対象者とは組めないの。それでも全員パートナーを組まなきゃいけないから、余り者同士でクラスメイトのモブとパートナーになるのよね」
「モブ」
「その他大勢、みたいな感じ?」
「なるほど」
私もモブになりたい。切実に。
その道すがら、サラを護衛している帝国の騎士様からサラに小さな紙切れが渡された。
「……あぁ、やっぱりね」
サラはそう呟いて、紙切れを私に見せてくれた。それはおそらくユウカ嬢に付けているという影からのもので『対象は教養を選択』とだけ書いてあった。
この場には帝国の騎士様の他に、王国の騎士様とリリーのいるため口に出さなかったのだろう。私は何も言わずに紙切れを返した。
「どうするの?」
「昨日言った通りよ。任せてちょうだい」
サラが不敵に笑う。それはワクワクもしているような笑顔だった。
思った通り、マイナーな言語を選んだのは私達3人だけだった。教師は20代半ばくらいの若い男性で、家名はなく平民なのだという。名前はカンニャというらしい。背は高く、痩せていて、綺麗な顔立ちをしている。こんな少数しか受講しない授業の担当でなければ、女生徒からとても人気が出そうなほどの美男だ。
それはさておき、カンニャ先生は他にもあと3つ、私達が知らない言語を教えることができるというので、3年の間にそれらも教えてもらいたいという話をした。
そして特に何も問題なく同じような日々を過ごし、最初の休息日を迎えた。サラが王宮に招待してくれていたので約束の時間に向かい、サラのためにセレスト第三王子殿下が作ったらしい庭に用意された席で茶会となった。騎士様達は少し離れた場所で護衛、リリーや王宮の侍女も呼ばれない限りは会話の聞こえない距離で待機している。
「さて。何から話そうかしら」
「ユウカ嬢に動きはあったの?」
「そうね、まずそこからよね。ウィリアムとルーカスはヒロインのことを少し避けている様子ね。初日のこともあるし、警戒しているみたい。あとはジェイデンにも話しかけにに行っているわ。ジェイデンに高確率で会えるスポットがあってね、そこに昼休みは足繁く通ってるそうよ。まぁジェイデンは来るもの拒まずだから仲良くなるのは簡単だしね」
「ジェイデン様は三年生だし、伯爵令息だというのに一年生の男爵令嬢が親しくするなんて……」
「それでジェイデンと親しい三年生の令嬢たちの間でヒロインが少し反感を買っている状況よ。セレストとは今のところ特に接触はないわね。反対隣の席に座っているから挨拶はしているけれど」
「そう。あの、私が何かするイベントというのは次にいつ起こるのかしら?」
「月末に新入生のダンスパーティーがあるでしょう? その時ね」
「あ……セレスト第三王子殿下とユウカ嬢が踊るのね。それを私が怒って止めさせてしまったような」
朧げに覚えている。なんせ一周目は30年近く前のことなのだ。覚えていることなんてほとんどない。
「身分差はもちろん、ドレスが貧相だとかダンスが下手だとか、ボロクソに言ってたわよ。ゲームではね」
「うん、おそらく現実にも言っていたと思うわ。恥ずかしいことだけれど」
「でも今回はセレストのパートナーは私よ。もしヒロインとセレストが踊ろうとしたら、私が止めるわ」
「えっ、止めるの? エッセンスになってしまうんでしょ?」
「さすがにアドリアーナみたいには止めないわよ。でも踊らせない。そんなの見たら嫉妬で気が狂ってしまうかも」
私は黙って頷いた。そりゃそうだ。だって同担拒否だもの。他の女と踊るなんて許せない。私だってアレクがアレクに気のある他の女と踊るなんてことになったら荒れ狂う自信がある。
「アニーはダンスパーティーのパートナー誰にするの? ウィリアム?」
「そうね、異性のパートナーが必要な時はウィリアムと私で過ごすようにとノヴァック家の皆さんから言われてるのよ」
「じゃあリリーとルーカスかしら?」
「そうなると思うわ。ゲームではヒロインのパートナーって誰になるの?」
「好感度がまだ低いから攻略対象者とは組めないの。それでも全員パートナーを組まなきゃいけないから、余り者同士でクラスメイトのモブとパートナーになるのよね」
「モブ」
「その他大勢、みたいな感じ?」
「なるほど」
私もモブになりたい。切実に。
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