勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環

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第三部(貴族学校入学編)

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 翌日。朝のホームルームで選択科目の希望用紙を回収された。早速午後から授業が始まる。
 私は昨日サラと打ち合わせた通り語学を選択した。お互いにまだ知らない言語を一緒に学ぶ予定だ。リリーには申し訳ないが、リリーまでそのマイナーな言語を学ぶことになる。
 リリーは共通科目を学べるだけで有り難いことだし、そもそも私のそばにいることでシュナイプ伯爵夫人の授業を横で聞くことができたし、ウィリアムとマーカスと他言語で話す様子も見ていられたから帝国語は日常会話くらいなら分かると言う。なんて優秀な侍女だろう。

 午前中の共通科目は特に何事もなく過ごした。二人掛けの机にリリーと並んで座り、前の席にサラとセレスト第三王子殿下、後ろの席にウィリアムとルーカスという並びだった。
 そしてヒロインであるユウカ・カワード男爵令嬢は、セレスト第三王子殿下と通路を挟んだ隣の席に座っていた。それを見た朝のサラの笑顔は怖かった。

 そして、昼休み。サラとセレスト第三王子殿下、ウィリアム、ルーカス、リリー、私の6人で食堂に行って食事をすることになった。リリーは身分差があるのでとかなり引き気味だったが、セレスト第三王子殿下が同じ学生なのだから身分差など関係ないと言ってくれたのだった。
 私はそれを有り難いと思ったし、セレスト第三王子殿下ってこういうことを言える方なのだなと感じ入ったものだが、サラはなぜか渋い顔をしていた。

「アドリアーナ嬢、昨日は申し訳なかった。状況から勝手に君が何かをしたのだと勘違いしてしまった」

 昨日、謝罪などいらないとはっきり言ったのに、改めて謝罪された。王族なのに。本当に以前の自分はセレスト第三王子殿下という人のことを知らなかったのだなと思った。好意を持たれなくて当然だ。

「いいえ、私の方が高位貴族ですし、もっと態度に気を付けるべきでした。少し、驚いてしまって……」

「まぁいきなりぶつかってこられて、あんな状況になったら戸惑うよな」

「そもそもなんでぶつかるんだろうな? 昨日ウィリアムもぶつかられてたよな」

「えっ?」

 私の言葉にウィリアムが同調してくれたと思ったら、ルーカス曰く実体験からくる発言だったようだ。そしてセレスト第三王子殿下がそれに驚く。

「まぁ俺の場合は少しよろめいてたくらいだったけど。自分の幅が分かってねぇのか?」

「いやー、あれはわざとだろ。ウィリアムと俺が並んで歩いてるのなんて大抵の生徒は端に避けるのに、ぶつかるなんて普通に考えればあり得ない」

 それは尤もだ。セレスト第三王子殿下が言うように、同じ学生だから身分差なんて関係ないというのは上の者が言うからいいのであって、下の者がそんな考えを持つことはあり得ない。それが普通の感覚だ。

「ぶつかられた後、何か話したの?」

 サラの問いにウィリアムが答える。

「名前を名乗って、クラスメイトだからこれからよろしくというようなことですかね。馴れ馴れしくて驚きました」

「どう思った?」

「正直に言って不愉快です。話しかけるためにわざとぶつかってきたっていうなら余計に」

「わざとだとは限らないだろう!」

 セレスト第三王子殿下の少し大きな声に食堂がシンとなる。気まずげに辺りを見渡し『すまない』と言う。
 うわぁ。である。初恋の女の子が公爵令息に話しかけたいがためにわざとぶつかってきっかけを作るような子だと言われたら庇いたくもなるんだろうが、あまりに浅はかである。サラも塩っぱい顔をしている。

「まぁ、ユウカ嬢がどういう子なのかはそのうち分かるわよ。ところで二人は午後からの専門科目を何にしたの?」

「俺もルーカスも経営です」

「あら、将来領地を継ぐのに備えて?」

「はい。もう俺は剣術を辞めてますし、将来は兄上の助けになれるよう領地経営を学んでいます」

「俺も商団だけでなくフォスター領も継ぎますから。特に特筆すべき点のない領地ですが、なにか誇れるものを作りたいと思ってます」

「素晴らしいわね」

 サラが微笑む。その笑みに『ヒロインざまぁ』という気持ちが含まれていることを私だけが知っている。
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