短編集 (全年齢・R含む)

めっちゃ抹茶

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同室の彼×転校生の親友にされた僕

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もっさりとした黒髪に顔の半分はある丸メガネをかけた僕は、クラスの影に埋もれる平凡な容姿の陰湿者。
話しかけてくる人は同じ寮の同室であるダンだけだった。

はずだった。



「転校生を紹介する」

担任の声で教室に入ってきたのは、明るいピンク色の髪をした女の子と見紛うほど可愛らしい男子だった。

この学園は男子校で、小柄な可愛らしい男子ほど性欲盛んな男子生徒の餌食になる。
外との世界と隔離された学園では血気盛んな年頃に同性愛に目覚める人も少なくないという。

この転校生は大丈夫かなと心配になった時だった。

「うへぇ、なんだよこのクラス。陰湿オタクばっかじゃん。まあでもいいか。せいぜいボクのために働いてね」

嫌そうに顔を顰めながらべえっと下を突き出してその可愛らしい顔に似合わない言葉が小さな口から発せられた。

転校生が入ったのはCクラス。
平民や成績があまり振るわない生徒が集まるクラスだ。中には頭脳明晰な生徒もチラホラいるが、貴族が集まるBクラスや王族がいるAクラスにはそぐわないとして、本人がどれほど優秀でも平民だからとここに入れられる。

つまりはこの転校生も平民の出で、あまり頭が良くないらしい。
それ以前に性格が最悪そうなので、関わりたくないとクラスの全員が目線を合わせないように下を向いている。
僕も心配したのを後悔していた。

チラリと横のダンを見れば、熊のような大きな身体をさらに縮めて俯いていた。どうやらダンも同じらしい。

「じゃあ席はあそこな」

担任が指差したのはまさかの僕の左隣の席。
誰も話さない静かな教室に、転校生の軽やかな足取りが響く。

隣の席の椅子が引かれた音がした。

「よろしくね、下僕くん」

見ないように、目があわないようにと俯いた僕の左側から転校生の最悪な声がした。

思わず顔を上げると、顔だけは可愛い転校生の笑っていない目と視線が合ってしまった。

バッとその視線から逃れるように反対側を向くと心配そうにこちらを見るダンの顔があった。
僕と同じくもっさりとした焦茶色の前髪の隙間から見える茶色の瞳と眉は力なく垂れ下がっている。

僕は口だけで「大丈夫だよ」と伝えた。

しかしその日から僕は、転校生の下僕兼親友という不名誉でしかないポジションに置かれて、クラスの外では猫を被った転校生に振り回されて、時には可愛い転校生の隣に腰巾着のようにいる僕に嫉妬した人たちから嫌がらせを受ける日々を過ごすことになる。





そんな日々を過ごせば当然ストレスが溜まる。

そんな時の発散方法は実に単純で、僕はアナニーにはまっていた。

「んっ、ふぅ、あっ、あぁ」

浴室にぐちぐちと後ろを弄る音が響く。指を抜き差しするたびにゾクゾクと背筋を快感が這い上がるものの、気持ちの良い場所には自分の指では届かず、疼く腹の奥にもどかしい思いだけが募っていく。

「あぁ、足り、ないっ、おくに、ほしいっ」

いつも奥を弄ってくれるディルドが、今日に限って何故か見当たらなかった。お風呂場でつい見てしまった、ダンの大きなアレと同じ大きさのディルド。

指だけでは満足出来ない身体にもうなっているのに。

空洞に空いた奥が締め付けるモノを求めてきゅうきゅうと訴えてくる。
僕だって欲しい。ひょろ長い細い指とは比べようもない、何倍の太さも長さもあるアレ。力強く脈動するそれはきっと、硬くて熱くて飢えた場所を余す所なく満たしてくれる。

ぽってりと腫れたしこりを大きな先端で何度も突いては擦り上げる。太い幹で押し潰すのも構わずに奥深くまで突き上げられて、沢山の精子が詰まった重たい陰嚢がぺちぺちと僕のお尻に当たった。
仕上げとばかりに感じ過ぎる奥をねっとりとした腰使いでグリグリと刺激される。

「あっ、あっ、それ、いいっ!きもちいっ、ダン、ダンっ、ぼく、もうっ……!」

目を瞑り、ダンに犯される自分を想像した。僕を犯すダンは僕を気遣いながらも容赦なく腰を振って、普段は服で見えない筋骨隆々とした筋肉を汗で濡らしている。
優しいのに、やさしくない。
快楽の底に堕とそうとしてくる彼を想像してゾクリとした。背筋が反って後ろの締め付けがキツくなる。
いよいよ昂った気を放つというその時、バンッと強い力で扉が開かれる音を耳が拾った。

驚いて目を開ければパチリと合う目線。その瞬間、情けなくも僕は達してしまった。

「大丈夫かっ、ロニー!……あ、いや、その、悪い……」

「待って……、行かないで、ダン……!」

真っ赤に染まった頬を背けて僕の部屋から出ようとするダンを衝動的に引き止めた。
服を着ていない裸の姿で、放った精やローションがどろりと伝うのも構わずにダンの丸まってもなお逞しい背中に抱きついた。

だって、普段の気弱な優しい彼からは想像もつかない、乱暴に扉を開ける姿を目にしてしまったら。
それが僕を心配してのことで、真っ赤に染まった彼の顔とチラリと見えた膨らんだズボンを見てしまったから。

その場で固まったダンにぎゅっと抱きつきながら、忙しなく鼓動する胸を伝わればいい、そう思いながら緊張した空気の中、口を開いた。

「僕、ずっと君のことが好きなんだ……。君に抱かれる妄想をして、もう後ろでしかイけないくらい。転校生に絡まれてから大変だけど、君が標的にならなくて良かったと思ってるんだ。だって、ダンはとっても素敵な人で、転校生は顔だけは可愛いから、君が好かれたら勝ち目なんかないって、思ってたから……」

嫌われていないのは知ってた。僕を心配してくれるのも。けれどそれは僕の勘違いで、同室者のよしみだったかもしれない。
そう思うのも無理はないほど、ダンからの反応はなく、静寂が続いた。

「……」

膨らんだズボンも、元が大きいから見間違えただけかもしれない。
時間が経つにつれて、不安は募り、僕の顔は青褪めていく。
勘違いからはしたない姿で抱きつかれた痴女でも振り払わない彼の優しさに、やっぱり好きだと胸が痛んで涙が滲んだ。

「っ、ごめん、迷惑だったよね。ダンは優しいから、僕、甘えちゃってたみたい。勝ち目、だなんてそもそもなかったのに……。部屋、変えてもらうね。僕がいない方が……っ!?」

抱きついていた背中の温もりから名残惜しくも身体を離した。
気を抜けば嗚咽しそうな込み上げる涙を堪えても、溢れる涙が目の端から流れた。これ以上の情けない姿を晒すのは耐えらず、彼に見られないように背を向けて散乱した服をかき集めていると、先程とは逆に、ダンから抱きしめられた。

驚いた隙に手から離れた服がぱさりと床に落ちた。

「違う、迷惑だなんて思ったことなど一度だってない。甘えてたのは俺の方だ。ロニーが好きで、ロニーが俺に笑いかけてくれるのが嬉しくて、ピンク頭がロニーを馬鹿にする度に殴りたくなるほど腹ただしくて。心の中ではずっと思っていた。俺のロニーなのに、って。不当な扱いをされるロニーを守りたいのに貴族の奴らには勝てない事がずっと辛くて。嫌な思いをしても負けないロニーが強くてかっこいいから、情けない俺を晒すのが怖くて。今もロニーに全て言わせて、俺はずるい男だ。俺も好きなんだ、ロニー。部屋を変えるなんて、そんな悲しい事言わないでくれ」

僕の頭の後ろにダンの厚い胸板がある。そこから聞こえる激しく鳴り響く鼓動の音。
彼の表情は見えないけれど、きっと、僕も彼も真っ赤になっている。素っ裸で後ろから抱きつかれて好きだと言われ、嬉しさと恥ずかしさと何かが混ざり合って爆発しそうだ。

嬉しいのに、言葉にできない。

何を言えばいいのか分からず、突っ立っていると、僕を抱きしめる腕に力が入った。その腕は僅かに震えていた。

それが彼の不安を表しているように感じられて、不穏な言葉や大きな身体とは逆に繊細な心を持つ彼が愛おしく、宥める様に逞しい腕を抱き返した。

すると突然くるりと身体を反転させられた。
ダンと向かい合う形になり、真っ赤になった顔が見られずに視線が落ちる。

「あっ……」

落ちた視線の先で、ダンの大きなそこが見間違いではないほどに大きく膨らんでいた。
ダンもそれに気が付いたようで、恥ずかしそうに視線を彷徨わせている。

「あ、いや、これは、すまない……。ロニーの扇状的な姿を見ていると我慢が出来なくて……」

ズボン越しでも分かる硬い脈打つそれが、苦しそうに思えて、僕は思わずそれに手を伸ばしていた。

「我慢、しなくていいよ……?僕もずっと、ダンの、ほしかったから、あっ」

言い終わるや否や、剥き出しのお尻を大きな両手で掴まれて、グッと腰を押し付けられる。
布越しに硬く熱いそれが僕のお腹に擦り付けられて、忘れていた熱がじわじわと身体を蝕んでいく。

「ロニー、ロニーっ、抱きたい、抱いてもいいか?」

ダンの瞳に燻る熱が灯る。
きっと僕も、同じような愛に飢えた顔をしているのだろう。
けれど恥ずかしくはない。だって、ダンも同じだから。僕だけじゃなかったから。
それが、たまらなく嬉しい。

「抱いてっ、離れられなくなるくらい、ダンのだって、僕に教えて……!」

ふわりと身体が浮かび、次の瞬間には柔らかなベッドと剣呑な光を瞳に宿した、熱い息を吐くダンに挟まれていた。

僕は、今から妄想よりもきっと、すごい、忘れられない愛を刻まれるのだ、これから。

熊に狙われた獲物に、僕は今、なる。








———あとがき。

途中まで書いてあった物に加筆をして何とか完成させようとしたのですが、方向性が予想だにしない方向へぶっ飛んでいきまして。(書いてあったのが数年前という衝撃の事実。書いたことすら覚えていなかった)収拾がつかなくなりましたのでこれで完結とさせて下さい。申し訳ない。終わり方も無理やりすぎて何とも言えない。


獣人でも何でもないですが、ロニーくん以外には手に負えない重たい執着や愛情と嗜虐性を無意識のうちに抱えているダン、を想像してくだされば幸いです。
そして被捕食動物の如く全てを彼に擲てられるロニーくんもまた、愛が深い。
普段は穏やかな彼らとのギャップを書きたかったはずなのですが、ソフトなsmに走っていきそうな気配がしたあたりで断念しました。無念。

拙すぎて伝わり切っていないと思いますが…。やっぱり書くのは難しいですね。
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