愛が重い!がデフォルトの世界で、僕は愛を知る

めっちゃ抹茶

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本編

学園生活、始まります! 05

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馬車に揺られること数時間後、僕は空を仰ぎ見る様に頭を倒して豪華な門の前に呆然としていた。視線を正面に戻し奥を見れば大きな屋敷が見える。アスカード家は伯爵位の下流貴族だと事前に聞かされていたが、目の前に広がる大きな屋敷や手入れされた庭はとても下流には見えなかった。

今までとは全く違う環境で過ごす不安は尽きなかったが、ここで足を止めていても仕方がないと思い歩を進める。
屋敷に辿り着くまでに数分ほどの距離がありその間、出迎えてくれた執事であるという姿勢が良く柔和な雰囲気を纏うラモンにアスカード家の詳細を聞いた。

母方の叔父が当主であるというアスカード家。その歴史は特別深くもなく、数代前の平民生まれだが優秀だった人物が功績を残しそれを讃え伯爵位を贈与されたところから始まったという。
この家も例に漏れず子宝に恵まれ、養子入りする僕を含め子供は10人もいるという。
領地は王都から遠く離れた自然豊かな場所にあり作物は穀物類、柑橘類が主でそれらから作られるワインの生産も領民の主な仕事になっている。特産品のワインは上流貴族の間でも美味しいと評判は上々だという。
屋敷に向かう道中、両親と別れる際に見た街は活気付いていて、裕福には見えなかったが貧しいわけでもないようで、誰もが楽しそうに笑っていた。貧困格差も見当たらない辺り伯爵様の領地経営の手腕は相当なものだと窺えた。

聞けば穏やかに何でも答えてくれる執事からそんな情報を聞いていると玄関口に着いた。示し合わせでもしたかの様に着いた瞬間重厚な扉が内側から開かれ、十数人の使用人らしき人と綺麗な服に身を包んだ青少年がにこやかな笑顔で出迎えてくれた。

「ようこそアスカード家へ。君のことは父上から聞いているよ。遠路はるばるよく来てくれたね。僕はアスカード家嫡男、ディートリヒだ。気軽にディーとでも呼んで欲しい」

何故か僕の両手をやわやわと握りしめられた。挨拶ならば片手同士を握り合うのにこれは何だという疑問が浮かぶ。

「い、いきなり愛称呼びは流石に…」

「家族になるんだからいいじゃないか。ほら、呼んで。ディーって」

爽やかな笑顔なのに断れない何かを感じて大人しく頷く。

「は、はい。ディー様」

戸惑いながらも愛称で呼べば途端に蕩けるような笑顔を向けられた。茶色の瞳は甘くてまるで蜂蜜のようだと感じた。
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