天上にこの口づけを 〜高梨姉妹の双子さんにおける事情〜

ズッコ

文字の大きさ
1 / 9

001 青空はドローン日和

しおりを挟む





「フアァ」

清々しい青空がどこまでも続く、ポカポカとした陽気のもとで、俺は思わず大きなあくびを漏らした。



俺は日向透。この春に高校へ入学してから、2ヶ月が過ぎさろうとしていた。

進学は家からもっとも近いといった理由のみで選んだので、通学の時間は徒歩で15分ほどだ。

中学校時代は学区内の最端に自宅があったことから、歩くと30分はかかるので登下校はとても不便であった。俺はこのおかげで無駄なエネルギーは使わないと決めた、エコロジー派の人間になったのだ。



今日は登校をする30分前に家を出てきていた。ナニ? 中学生時代と登校する時間が、大して変わっていないのじゃないかって?

これは日直なのでしかたがない。担任の先生が朝の伝達事項を行う前に、職員室へいって日誌をうけとるのが我が校のきまりなのだ。

早くに出たのでのんびりと歩きながら、時間割表を書き記した生徒手帳のページを今一度再確認してみたら、午後に体育の授業があったことを思い出した。



「うへぇ、、、今日は厄日だろ」

俺はそう呻いてしまった。

その理由というのは、クラスの男子の体力測定はもう終わっていたのに、女子の体力測定はまだ道半ばにあったからだ。

女子の体力測定がある内は、校庭を自由に使用する権利を持たない男子は、マラソン以外はやることがなくなってしまう。

同じことをするだけのはずなのに、どうして女子はこうもチンタラと、余計に時間がかかってしまうのだろうか。

男子が前々回に終わっていたはずの砲丸投げを、今更にしている女子も少数はいたので、予定がはかどっていないことは、火を見るよりも明らかだった。



そしてお天気は無情にも快晴である。

そう考えていると、今日は厄日だと信じてしまうのは仕方のないことだろう。

この青空を今は憎々しげに感じながら、俺は通学路をトボトボと力無く歩いていくのだった。





「、、ーー今日はよく晴れて過ごしやすい一日となるでしょう。但し夕方には一部山側で湿った空気が入りこむところがあって、明日の明け方には雨がパラつく場所もありそうです。それでは今日も、お元気でいってらっしゃーい!」

一部で熱狂的なファンがいると噂される、ヒョウ柄のスカートが短めのギリ猥褻なワンピースを着た、若い女性の説明している天気予報が、広いリビングの空間にある大画面テレビから流れている。

その部屋から続くテラスにいた少女は、タップリとお水の入ったジョウロをもちながら、花が咲く植木鉢へと注いでいた。



「ラー ラララーララー♫」

少女は鼻歌混じりに順序よく水をかけていく。陽と水を浴びて花もうれしそうに見える。



すると、お水をかけたばかりの植木鉢のひとつが、少女の目の前の空中へと急に浮かんで、アリガトウとお辞儀をしたではないか。



少女はとても驚いて、あんぐりと大きく口を開きかけたが、誰の仕業なのかすぐに気がつくと慌てて口をつぐみ、後ろを振り向いてつくり笑顔をみせていた。



「理香おーはーよーう。とてもいいお天気ね」

「ちょっと愛理姉さん、その反応はつまらないわよ。毎日愛理のビックリとする顔を見ているのが楽しみだったのに」

理香が心底で面白くない顔をしたのを見て、愛理はニンマリと満足の笑みを浮かべた。



「フフーンだ。そう何度も驚かされていないんだから。物が浮くくらいなら、もうさんざんに見慣れちゃっていますよーだ。理香のご希望に応えられなくてとてもザンネンでしたー」

何度も同じこの手でこれまでは驚かされてきたので、煮え湯を飲まされ続けていた愛理はしてやったりと、これをこともなげな態度でやり返してみせたのだが、これは却って理香の反抗心を逆撫でするくらいには十分なことだった。

植木鉢はまだふわりふわりと空中を飛び続けている。



「へえぇーそうなんだ。浮、く、くらいならね。だったらこーゆーのはどうかしらね?」



その植木鉢は二人から大きく離れると、急に縦横斜めとジグザグにせわしなく動き始めた。

傍目から見ると、それはポルターガイストがおこすものを見ているようで、理香はその様子をニヤニヤとしながら眺めていた。

それはまるでドローンのように、自由自在に植木鉢を空中で動かして見せたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

処理中です...