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第1章
【番外】皇太子side
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何故?
どうして?
コンジュは混乱していた。
18歳の誕生の宴でコンジュは婚約者であったリコリスに婚約破棄を告げ、聖女-ディルバ・アーレンを新たに婚約者にすることを宣言した。
ディルバはとても愛らしい。
可憐な顔に華奢な身体。
初めて出会った日、運命を感じた。
この娘こそが自分の婚約者に相応しいと。
ディルバは聖女として常に国を護るための結界を張り続けている。
その為体力がなく、自己犠牲精神が強く他の令嬢たちとは違い慈愛に満ちていた。
外面だけで言うならコンジュの婚約者であるリコリスには及ばないだろう。
リコリスは絶世の美貌と言う言葉が似合う少女だった。
だが婚約者のコンジュが尋ねても何時もベッドから出ず疲れた顔で出迎える。
手を握ろうとしたらスッ、とその手を隠された。
手も握らせないリコリス。
流石にコンジュも愛想をつかした。
それでもリコリスの美貌は簡単に諦めれるほどの物では無かった。
1度くらいならチャンスはあるかも知れない。
体の関係さえ結べば婚約者の自覚も出るだろう。
そう思いコンジュは1度だけリコリスを押し倒したことがある。
結果は頬に平手を喰らったのだが。
病弱な令嬢と言う割には強い力だった。
もっともリコリスはコンジュの頭を割らない様に手加減に手加減をしての平手だったのだが。
しかしソレでコンジュはリコリスを見放した。
それに比べディルバはどうだ。
柔らかい唇に抱きしめると折れそうな体でありながら女性らしい曲線を描いている。
恥ずかしそうにシーツで体を隠しながらもコンジュを求めて来た。
コンジュは一気にディルバに夢中になった。
今まで身体の関係を持った女には情が湧かなかったがディルバは違った。
体を重ねれば重ねるごとに愛情が湧く。
この時点でコンジュはリコリスを捨てる事を決意した。
そして18歳の誕生の宴でディルバを婚約者にすると宣言したのだ。
その時の空気は異様だった。
リコリスはショックで倒れ、大臣たちからは考え直すよう詰め寄られた。
だが大臣らの言葉はコンジュには響かなかった。
”ブシン”がどうのとのたまっていたが1度口にした言葉は覆らない。
倒れたリコリスを見てコンジュは満足だった。
婚約破棄にショックを受け倒れるくらい自分の事を好いていたのだと。
ならば国外追放も死罪も止めてやろう。
果ての塔にでも幽閉すればリコリスを我が物に出来るかもしれない。
何不自由なく育って来たリコリスが果ての塔に幽閉されて、心身ともに衰弱したところで手を差し伸べればリコリスはコンジュの手を取るだろう。
あの美貌は捨てるには惜しすぎる。
考えただけでコンジュは堪らなく上機嫌になった。
だがすべて事が終わり父王と母が外交から戻って来て、全ての報告をすると父王は腰に帯刀していた剣を引き抜きコンジュに襲い掛かった。
騎士団長が刃を剣でいなせなければ間違いなくコンジュの首は吹っ飛んでいただろう。
「この、愚か者が!リコリスを捨てただと?あの国の宝を!お前の替えは幾らでもきいてもリコリスの替えはきかないのだぞ!お前はこの国を破滅へ追いやった!死を持って償え!その首を刎ねて、リコリスに詫びとして届け第二皇子の婚約者として王家で受け入れる!」
目をギラギラと光らせ殺意をコンジュに向ける父王はコンジュの中の温和な父王とは人が変わった様に違った。
コンジュは今まで父王に愛されてきたと思っていた。
事実甘やかされて育った。
だが先ほどの言葉で、父王が手放したくなかったのは自分ではなく婚約者のリコリスだったのだと思い知らされた。
父王は”リコリスの婚約者”だからコンジュに甘かったのだと。
その後も父王の罵倒は続いた。
父王の言葉にコンジュは立ってもいられなくなった。
自分の存在意義はリコリスの婚約者である、その1つだけだったのだと。
崩れ落ちて茫然とへたり込んでいるコンジュの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
股間が濡れ、高級な絨毯に水たまりが出来ていた。
父王の殺気に失禁したのだ。
姿だけは美しかったコンジュのあまりの情けない姿に視線を逸らすものも居た。
コンジュにアプローチをかけてくる令嬢たちも、身を重ねたディルバでもこのコンジュの姿を見たら100年の恋も冷めただろう。
コンジュにとって幸いはこの場に父王と母と重鎮しか居なかったことだ。
「陛下!お止め下さい!コンジュ様の首を刎ねるなど!!」
「余に歯向かうか?貴様も首を落とされたいか騎士団長よ!!」
血走った眼をした父王をみてコンジュの体はガタガタと震える。
重鎮たちは動かない。
皆、父王の意見に同意なのだと思い知らされた。
「は、はは、ははははははは……」
虚ろな目で笑いだしたコンジュを見て誰もが正気を失ったのだと理解した。
「その目障りなのを部屋に閉じ込めておけ!同じ空気を吸うのも反吐が出る!!」
汚物を見るかのような眼差しで父王に見られ、コンジュはもう引き返せないのだと思い知らされた。
何故?
どうして?
何処で間違った?
自分がリコリスと婚約破棄したから?
リコリスを果ての塔に幽閉したから?
ならばリコリスが戻ってくれば良い。
既成事実さえ作ってしまえばリコリスも逃げないだろう。
リコリスは婚約破棄を言い渡されて失神するほどコンジュの事を愛しているのだから。
「手に入れる…リコリスを手に入れる。そうすれば父上はまたお優しい方に戻ってくれるはずだ……もう他の令嬢たちは要らない。ディルバも要らない…リコリスを手に入れれば、全てが元に戻るんだ……」
虚ろな瞳でブツブツと呟くコンジュを見て、騎士団長は心が壊れるくらいなら父王に首を刎ねられて何も知らぬまま死んだ方が幸せだったのかもしれないと思った。
どうして?
コンジュは混乱していた。
18歳の誕生の宴でコンジュは婚約者であったリコリスに婚約破棄を告げ、聖女-ディルバ・アーレンを新たに婚約者にすることを宣言した。
ディルバはとても愛らしい。
可憐な顔に華奢な身体。
初めて出会った日、運命を感じた。
この娘こそが自分の婚約者に相応しいと。
ディルバは聖女として常に国を護るための結界を張り続けている。
その為体力がなく、自己犠牲精神が強く他の令嬢たちとは違い慈愛に満ちていた。
外面だけで言うならコンジュの婚約者であるリコリスには及ばないだろう。
リコリスは絶世の美貌と言う言葉が似合う少女だった。
だが婚約者のコンジュが尋ねても何時もベッドから出ず疲れた顔で出迎える。
手を握ろうとしたらスッ、とその手を隠された。
手も握らせないリコリス。
流石にコンジュも愛想をつかした。
それでもリコリスの美貌は簡単に諦めれるほどの物では無かった。
1度くらいならチャンスはあるかも知れない。
体の関係さえ結べば婚約者の自覚も出るだろう。
そう思いコンジュは1度だけリコリスを押し倒したことがある。
結果は頬に平手を喰らったのだが。
病弱な令嬢と言う割には強い力だった。
もっともリコリスはコンジュの頭を割らない様に手加減に手加減をしての平手だったのだが。
しかしソレでコンジュはリコリスを見放した。
それに比べディルバはどうだ。
柔らかい唇に抱きしめると折れそうな体でありながら女性らしい曲線を描いている。
恥ずかしそうにシーツで体を隠しながらもコンジュを求めて来た。
コンジュは一気にディルバに夢中になった。
今まで身体の関係を持った女には情が湧かなかったがディルバは違った。
体を重ねれば重ねるごとに愛情が湧く。
この時点でコンジュはリコリスを捨てる事を決意した。
そして18歳の誕生の宴でディルバを婚約者にすると宣言したのだ。
その時の空気は異様だった。
リコリスはショックで倒れ、大臣たちからは考え直すよう詰め寄られた。
だが大臣らの言葉はコンジュには響かなかった。
”ブシン”がどうのとのたまっていたが1度口にした言葉は覆らない。
倒れたリコリスを見てコンジュは満足だった。
婚約破棄にショックを受け倒れるくらい自分の事を好いていたのだと。
ならば国外追放も死罪も止めてやろう。
果ての塔にでも幽閉すればリコリスを我が物に出来るかもしれない。
何不自由なく育って来たリコリスが果ての塔に幽閉されて、心身ともに衰弱したところで手を差し伸べればリコリスはコンジュの手を取るだろう。
あの美貌は捨てるには惜しすぎる。
考えただけでコンジュは堪らなく上機嫌になった。
だがすべて事が終わり父王と母が外交から戻って来て、全ての報告をすると父王は腰に帯刀していた剣を引き抜きコンジュに襲い掛かった。
騎士団長が刃を剣でいなせなければ間違いなくコンジュの首は吹っ飛んでいただろう。
「この、愚か者が!リコリスを捨てただと?あの国の宝を!お前の替えは幾らでもきいてもリコリスの替えはきかないのだぞ!お前はこの国を破滅へ追いやった!死を持って償え!その首を刎ねて、リコリスに詫びとして届け第二皇子の婚約者として王家で受け入れる!」
目をギラギラと光らせ殺意をコンジュに向ける父王はコンジュの中の温和な父王とは人が変わった様に違った。
コンジュは今まで父王に愛されてきたと思っていた。
事実甘やかされて育った。
だが先ほどの言葉で、父王が手放したくなかったのは自分ではなく婚約者のリコリスだったのだと思い知らされた。
父王は”リコリスの婚約者”だからコンジュに甘かったのだと。
その後も父王の罵倒は続いた。
父王の言葉にコンジュは立ってもいられなくなった。
自分の存在意義はリコリスの婚約者である、その1つだけだったのだと。
崩れ落ちて茫然とへたり込んでいるコンジュの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。
股間が濡れ、高級な絨毯に水たまりが出来ていた。
父王の殺気に失禁したのだ。
姿だけは美しかったコンジュのあまりの情けない姿に視線を逸らすものも居た。
コンジュにアプローチをかけてくる令嬢たちも、身を重ねたディルバでもこのコンジュの姿を見たら100年の恋も冷めただろう。
コンジュにとって幸いはこの場に父王と母と重鎮しか居なかったことだ。
「陛下!お止め下さい!コンジュ様の首を刎ねるなど!!」
「余に歯向かうか?貴様も首を落とされたいか騎士団長よ!!」
血走った眼をした父王をみてコンジュの体はガタガタと震える。
重鎮たちは動かない。
皆、父王の意見に同意なのだと思い知らされた。
「は、はは、ははははははは……」
虚ろな目で笑いだしたコンジュを見て誰もが正気を失ったのだと理解した。
「その目障りなのを部屋に閉じ込めておけ!同じ空気を吸うのも反吐が出る!!」
汚物を見るかのような眼差しで父王に見られ、コンジュはもう引き返せないのだと思い知らされた。
何故?
どうして?
何処で間違った?
自分がリコリスと婚約破棄したから?
リコリスを果ての塔に幽閉したから?
ならばリコリスが戻ってくれば良い。
既成事実さえ作ってしまえばリコリスも逃げないだろう。
リコリスは婚約破棄を言い渡されて失神するほどコンジュの事を愛しているのだから。
「手に入れる…リコリスを手に入れる。そうすれば父上はまたお優しい方に戻ってくれるはずだ……もう他の令嬢たちは要らない。ディルバも要らない…リコリスを手に入れれば、全てが元に戻るんだ……」
虚ろな瞳でブツブツと呟くコンジュを見て、騎士団長は心が壊れるくらいなら父王に首を刎ねられて何も知らぬまま死んだ方が幸せだったのかもしれないと思った。
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