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第2章
【番外】魔王side2
※格好良い魔王はいません。
魔王のソロプレイがあります。
「魔王様は格好良くてパーフェクトなのよ!」と思われている方は読まないことを推奨します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔王がリコリスを連れて来たその日。
ついに自分への恋心を自覚したリコリスが、自分の事を好きだと言い、唇を重ねて、魔王の気分は最高上昇していた。
ようやく手に入れた。
10年間待ち続けたものがようやく自分の腕の中に飛び込んできたのだ。
気分も上がろうモノだろう。
だが自分は10年間見守っていたが、リコリスにとってはまだ出会って3ヵ月だ。
しかも睡眠欲だけを欲していたリコリスにとって他の欲が芽生えたのもこの3ヵ月でだ。
まだ保育園児でも情緒がもっと発達している。
リコリスは18歳だが中身は幼子と言っても過言ではない。
見た目の美しさに皆忘れているが。
知識の高さからも情緒が幼い事を感づかせない原因かもしれない。
だから魔王が心通じ合ったことで急ぎ過ぎた。
遂に堪えられなくなったと言うか…。
リコリスもその気はあった事は雰囲気で感づいていた。
寝着で緊張の面持ちでベッドで正座をしているリコリスのその可愛さと言ったら!
メイド達によって寝化粧も施されていた。
あぁ何と可愛らしく初々しい!
魔王は自覚が無かった。
自分の色気がどれだけ凄まじいのかを。
しっとりとした黒髪。
蕩けた蜂蜜のような蕩けた目も。
欲情を伴った表情も。
リコリスには刺激が強すぎた。
まさか睦言を囁いてだけで。
キスすら出来ずにリコリスが気を失ってしまうとは思わなかったのだ。
この日魔王は千数百年ぶりに自らで処理することとなった。
:::
「何か元気ないじゃん陛下~?」
オウマが執務室でゲンドウポーズを取っている魔王に尋ねる。
「据え膳を喰らえない場合はどうすれば良いのだろうな?」
「据え膳?あぁ王妃さんの事?」
「あんなに可愛いのに、手を出そうとすると意識を失われる!我の方は準備が万全だと言うのに!自らの手で慰めるなど千何百年ぶりだと思っている!!」
【防音】の魔法がかけられてて良かった。
オウマは心からそう思った。
この発言を流石に”魔王様親衛隊”には聞かせられない。
男女問わず魔王のファンは多いのだ。
臣下にだって沢山いる。
この発言を聞いて寝込むものが増えれば、王宮の仕事は回らなくなるだろう。
(と言うか自分で処理していたのね…)
流石に可哀想になる。
同衾している少女にキスもままならないとか、何処の十代だ?
意識を失っている愛する少女からそっ、と離れトイレで致す。
何とも情けない限りである。
だがオウマから見たらそれも仕方がない。
どう見てもリコリスは恋愛なれしていない。
それがこの”歩く猥褻物”の色気など間近で喰らって意識をショートさせるのは仕方ないだろう。
魔王には哀れだがこの件に関してはオウマはリコリスの味方だった。
過去に何回も試合を挑んで睡眠時間を削っていたのが申し訳ないのだ。
(まぁ適当に助力してあげましょーか…)
これが”パンダでギュッ、事件”の事の顛末である。
勿論この後、誰の入れ知恵か分かった魔王によってオウマは【極寒】の呪いをかけられる事となる。
:::
「今日はえらく元気なのね陛下?」
相変わらずゲンドウポーズなのだがオーラがピンク色である。
何より今朝起きた時からオウマの身の【極寒】の呪いが解けていた。
ご機嫌な事は間違いないのだろう。
「リコリスから王都でデートをしたいと言われた……」
いや、照れるな。
いくら美形でも男が頬を染めてるのを見て喜ぶ趣味はオウマには無かった。
「まずはドレスを送るべきか?いや花束か?夜は夜景が美しいレストランでディナーを予約しなければな!!」
とても嬉しそうだが思考が完全十代だ。
「あ~王妃さんはそう言うデート好きじゃないと思うんだけど?」
「何故お前がリコリスの事が分かる!?」
「いや、怒りなさんなって。王妃さんの情緒は完全子供のそれでしょーが。そんな高級ディナーなんて喜ばないと思うぞ。ソレより王妃さんの好きな物リサーチして楽しませてやりなさいな~」
「リコリスの好きな物…甘いものか?いや、それは我の作った物が1番だと言っているし……」
「最近王妃さん図書室通っているらしーよ」
「そう言えばリコリスは本が好きだったな。王立図書館にでも寄るか!」
「いや、王立図書館で読める本はここと変わらないでしょ!もっと何が好きかしっかり調べなさいな~。後、出来るだけ子供が喜ぶようなところ連れてってあげんさい?楽しい幼少期送ってないんだから」
「我は思っていたよりリコリスの事を知らなかったのだな…」
ピンクのオーラが暗くなる。
(面倒臭い……)
「王妃さんと気が合う人に相談すれば良いでしょ~。身近にいるでしょ、子供みたいな面白い事が好きな方が」
「……誰か居たか?」
「ミヤハル様は?」
「そうか!姉上も女であったな!!そして無駄に長生きだ!デートプランを考える手助けには最適ではないか!!少し姉上の処に行ってくる。後は頼んだぞオウマ!」
ミヤハルに対して大変失礼なことを言っている自覚は魔王には無い。
エントビースドが聞いていたら表情筋を動かさずに死んだ目で魔王を半殺しにしていただろう。
他の者なら死ぬ方が良いと思うくらいに痛めつけているであろう。
半殺しですませてやるくらいにはエントビースドは弟を可愛いと思っている。
ただ番であるミヤハルが特別大切過ぎるだけである。
そしてそれは魔王も同じ。
リコリスがかかわると魔王は人が変わる。
言うが早いか魔王は【ゲート】でミヤハルの元へ向かってしまった。
「残った仕事…宰相に頼むとしましょーか……」
その後、会議の場で魔王の手元には【魔国王都ウォーカー】があることに2度見しながらも、ソレに突っ込める強者は存在しなかったらしい。
魔王のソロプレイがあります。
「魔王様は格好良くてパーフェクトなのよ!」と思われている方は読まないことを推奨します。
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魔王がリコリスを連れて来たその日。
ついに自分への恋心を自覚したリコリスが、自分の事を好きだと言い、唇を重ねて、魔王の気分は最高上昇していた。
ようやく手に入れた。
10年間待ち続けたものがようやく自分の腕の中に飛び込んできたのだ。
気分も上がろうモノだろう。
だが自分は10年間見守っていたが、リコリスにとってはまだ出会って3ヵ月だ。
しかも睡眠欲だけを欲していたリコリスにとって他の欲が芽生えたのもこの3ヵ月でだ。
まだ保育園児でも情緒がもっと発達している。
リコリスは18歳だが中身は幼子と言っても過言ではない。
見た目の美しさに皆忘れているが。
知識の高さからも情緒が幼い事を感づかせない原因かもしれない。
だから魔王が心通じ合ったことで急ぎ過ぎた。
遂に堪えられなくなったと言うか…。
リコリスもその気はあった事は雰囲気で感づいていた。
寝着で緊張の面持ちでベッドで正座をしているリコリスのその可愛さと言ったら!
メイド達によって寝化粧も施されていた。
あぁ何と可愛らしく初々しい!
魔王は自覚が無かった。
自分の色気がどれだけ凄まじいのかを。
しっとりとした黒髪。
蕩けた蜂蜜のような蕩けた目も。
欲情を伴った表情も。
リコリスには刺激が強すぎた。
まさか睦言を囁いてだけで。
キスすら出来ずにリコリスが気を失ってしまうとは思わなかったのだ。
この日魔王は千数百年ぶりに自らで処理することとなった。
:::
「何か元気ないじゃん陛下~?」
オウマが執務室でゲンドウポーズを取っている魔王に尋ねる。
「据え膳を喰らえない場合はどうすれば良いのだろうな?」
「据え膳?あぁ王妃さんの事?」
「あんなに可愛いのに、手を出そうとすると意識を失われる!我の方は準備が万全だと言うのに!自らの手で慰めるなど千何百年ぶりだと思っている!!」
【防音】の魔法がかけられてて良かった。
オウマは心からそう思った。
この発言を流石に”魔王様親衛隊”には聞かせられない。
男女問わず魔王のファンは多いのだ。
臣下にだって沢山いる。
この発言を聞いて寝込むものが増えれば、王宮の仕事は回らなくなるだろう。
(と言うか自分で処理していたのね…)
流石に可哀想になる。
同衾している少女にキスもままならないとか、何処の十代だ?
意識を失っている愛する少女からそっ、と離れトイレで致す。
何とも情けない限りである。
だがオウマから見たらそれも仕方がない。
どう見てもリコリスは恋愛なれしていない。
それがこの”歩く猥褻物”の色気など間近で喰らって意識をショートさせるのは仕方ないだろう。
魔王には哀れだがこの件に関してはオウマはリコリスの味方だった。
過去に何回も試合を挑んで睡眠時間を削っていたのが申し訳ないのだ。
(まぁ適当に助力してあげましょーか…)
これが”パンダでギュッ、事件”の事の顛末である。
勿論この後、誰の入れ知恵か分かった魔王によってオウマは【極寒】の呪いをかけられる事となる。
:::
「今日はえらく元気なのね陛下?」
相変わらずゲンドウポーズなのだがオーラがピンク色である。
何より今朝起きた時からオウマの身の【極寒】の呪いが解けていた。
ご機嫌な事は間違いないのだろう。
「リコリスから王都でデートをしたいと言われた……」
いや、照れるな。
いくら美形でも男が頬を染めてるのを見て喜ぶ趣味はオウマには無かった。
「まずはドレスを送るべきか?いや花束か?夜は夜景が美しいレストランでディナーを予約しなければな!!」
とても嬉しそうだが思考が完全十代だ。
「あ~王妃さんはそう言うデート好きじゃないと思うんだけど?」
「何故お前がリコリスの事が分かる!?」
「いや、怒りなさんなって。王妃さんの情緒は完全子供のそれでしょーが。そんな高級ディナーなんて喜ばないと思うぞ。ソレより王妃さんの好きな物リサーチして楽しませてやりなさいな~」
「リコリスの好きな物…甘いものか?いや、それは我の作った物が1番だと言っているし……」
「最近王妃さん図書室通っているらしーよ」
「そう言えばリコリスは本が好きだったな。王立図書館にでも寄るか!」
「いや、王立図書館で読める本はここと変わらないでしょ!もっと何が好きかしっかり調べなさいな~。後、出来るだけ子供が喜ぶようなところ連れてってあげんさい?楽しい幼少期送ってないんだから」
「我は思っていたよりリコリスの事を知らなかったのだな…」
ピンクのオーラが暗くなる。
(面倒臭い……)
「王妃さんと気が合う人に相談すれば良いでしょ~。身近にいるでしょ、子供みたいな面白い事が好きな方が」
「……誰か居たか?」
「ミヤハル様は?」
「そうか!姉上も女であったな!!そして無駄に長生きだ!デートプランを考える手助けには最適ではないか!!少し姉上の処に行ってくる。後は頼んだぞオウマ!」
ミヤハルに対して大変失礼なことを言っている自覚は魔王には無い。
エントビースドが聞いていたら表情筋を動かさずに死んだ目で魔王を半殺しにしていただろう。
他の者なら死ぬ方が良いと思うくらいに痛めつけているであろう。
半殺しですませてやるくらいにはエントビースドは弟を可愛いと思っている。
ただ番であるミヤハルが特別大切過ぎるだけである。
そしてそれは魔王も同じ。
リコリスがかかわると魔王は人が変わる。
言うが早いか魔王は【ゲート】でミヤハルの元へ向かってしまった。
「残った仕事…宰相に頼むとしましょーか……」
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